- 2010年1月 7日 12:02
3月にSBMのPDCが停波する。
その後は1.5GHz帯をW-CDMAで使っていくとの計画だが、予定はどうなるのか。
SBMの場合は予定や展望を語っても全く意味がない。
予定とはあくまでもその時点での予定や予測であって、半年後や一年後にもその予定が生きているとは限らない。
しかしそれでは話が始まらないというか、始まらないからこそ緊急地震速報もいっこうに始まらない。
計画では昨年12月から試験運用に向けた動きを開始して、PDC停波直後にはW-CDMAによる商用サービス開始となっていた。
が、あっさりこれは遅延させられることになる。
特定地域で1.5GHz帯の予備免許申請はしていたようだが、あれはその後どうなったのかな。
まあ仕方がないだろう、何をするにもカネがかかるのだ。
PDCとW-CDMAはセル設計を変える必要があるのか否か。
これはあるとも言えるし無いとも言える。
CDMA方式の場合はセル内利用者数によって電波状況が変化し、PDCのように一定ではない。
PDCでも出来るだけローパワーで通信することがセル間干渉防止の上では重要だが、CDMAの場合はもっと重大な問題になる。
従ってセルを密に配置してセル内利用者数を増やさず、セル内利用者の移動機出力が最小で済むような基地局配置が求められるわけだ。
つまり、こうした考慮をしなければPDCのセルそのままでも何とか使えるのではないかと思うがセルエッジ付近は駄目駄目だろうな。
普通のセル設計がされているとすれば必ず隣接セルとはダブったエリアが存在するわけで、この余裕度?を使い果たせばいいという話だ。
信号処理や誤り訂正能力的にはW-CDMAの方が優れており、多値変調による要求SNRの上昇分や移動機出力/感度低下分はこれがある程度は補ってもくれるだろう。
ちなみにPDC移動機の送信出力は600mWであるのに対してW-CDMAは200mW、受信感度はPDCが0dBμ付近でW-CDMAが-100dBm前後(13dBμ)の両方で40倍もの差がある。
1.5GHz帯の市街地減衰量が3乗程度とするならば、40倍の差はセル半径を1/3に小さくしてしまう。
一方でSBMのPDC局数はおよそ1.4万、auの800MHz帯局の半分にも及ばない。
従って1.5GHz帯のみである程度のエリアを作るというのは無理な話で、実際孫さんも1.5GHz帯でエリアを広げるのではなくトラフィックの分散用に使うと明言している。
本来であれば屋内浸透性に優れる1.5GHz帯をエリア補強の有効活用と行きたいところなのだが、悲しいかなカネがない。
現状では1.5GHz帯を渡そうが、例え800MHz帯を割り当てたとしてもそれをエリア整備に使う気はないと言うことである。
トラフィックが厳しいのはSBM自身も言っているし、事業者の中で最も厳しいトラフィック制限をしていることからもそれは分かる。
この原因が中継局のばらまきにあることは何度も書いたわけで、しかしそれをフェムトセルなどに入れ替えることも出来ずに現在に至っている。
その解決策が1.5GHz帯だとすれば、マイクロセル構成を推進したくなるがカネがない。
仕方がないので既存のセル設計のまま、使えるものは何でも使い回してしまおうと考えても不思議はないし、そもそも1.5GHz帯のCDMA通信におけるセル設計が出来るのかと言われるとこれも怪しい。
救いはバンド間ハンドオーバだ。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/keitai-syuha/pdf/041125_3_s4-3-1.pdf
この、ソフトバンクの作った資料の10ページ目に、マルチバンド化はコスト上昇の大きな要因にはならないと書いてある。
auやドコモはバンド間ハンドオーバを実現しているが、もしも同様なシステムがSBMに組めると仮定すれば1.5GHz帯と2GHz帯の穴をそれぞれが埋めるように動作させることが出来る。
しかしこの辺りは多くのノウハウを要する部分でもあり、安易にやれば失敗したり通話・通信品質の劣化になる。
SBMは3.9G化は先送りにして、とりあえずはHSPA+に進むとしている。
HSPA+は最大21Mbpsを謳うが、これはHSDPAの14Mbpsに相当する(64QAMにしただけ)もので実際には非実用的だ。
すなわちセル内利用者数が1人ならば、みたいな注釈の付くものであり実際の利用状況ではそのピークレートを発揮できない。
ドコモの7.2Mbpsサービスの商用サービスにおけるピークレートが3Mbps前後であることを考えると、HSPA+で5Mbps出れば上出来だと思う。
またDC-HSPAは既存のPDCセル設計のままでは相当厳しいことになると思うが、特定エリアのみで実験的に利用するくらいは出来るかも知れない。
ただDC-HSPAは周波数利用効率が半分に落ちるので、セル内利用者がそこそこいる場合にはパフォーマンスが出なくなる。
ドコモがHSPA+に興味を示さないのはこの辺りの事情もあるだろう。
周波数利用効率を上げる以外に通信速度の実効値が上がらないことを十分に理解しているのと、マルチユーザ環境でHSPA+の多値変調がうまく動作しない事も実験済みだからだ。
ではLTEでは速度は上がるのか。
まず周波数利用効率の向上策としてMIMOがあり、OFDMAを使うことによるメリットも出てくる。
W-CDMAでもMIMOは使えるのだが、一次変調と二次変調の所をよく考えてみると非効率であることが分かるはずだ。
MIMOを使っても実際の運用環境で無限に速度が上げられるなどと言うことはなくて、HSPAと同じ5MHz帯域で見た場合の最大通信速度は37.5Mbps(2×2MIMO時)となる。
LTEの場合はMIMO必須なので、もしもMIMOが無かったらという仮定は仮定にもならないのだが、でもMIMOが無ければその半分の約19Mbpsである。
これはHSPA+の21Mbpsと似たような数字であり、つまり周波数の利用効率向上策がなければ何をやってもそう速度は変わらないと言うことだ。
ちなみにLTEでは8×8MIMOまでは規格化されているので5MHz幅で150Mbps、将来的な電波法改正をにらんだ20MHz幅ではその4倍の600Mbpsという計算値になる。
もちろんこれも理論最大値であるので、実効値がその1/4とすると20MHz幅で8×8MIMOを使ったとしても150Mbpsが良いところなのだろう。
※8×8MIMO実現のためのものすごい演算量は想像を絶する。
ただCDMAに比較すると(たぶん)OFDMAの方がセル設計は楽だと思う。
セル内利用者によるエリアの変化が起きにくいことや各位同期との通信を管理しやすいからで、その点では速度を出しやすい環境が出来るかも知れない。
ちなみに1.5GHz帯のセル流用という点ではCDMAよりもOFDMAの方が相応しいと言えそうだ。
これはトラフィックによるセル状態の変化などが少ないためだ。
なので当初予定よりも遅れてスタートするSBMがなぜLTE(その頃ドコモはLTE商用サービスを開始している)に行かないのか。
確かに一時的にカネはかかると思うが、HSPA+による二重投資よりはマシなはず。
それともLTEは完全に捨ててHSPA+だけで行こうとしているのか。
確かにLTEというかMIMOなどを含めたシステムにはカネがかかる。
ドコモはFOMAで送信ダイバシティを使っているので2MIMO送受信は可能ではあるが、可能であることと商用サービスに耐えることは又違う。
そう考えると、ドコモなり欧米事業者が4Gに移行する頃にSBMが3.9Gを目指すのが低リスクと言えば確かにそうだ。
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