秩父に行く(5)

正丸峠から下りた後、本当は左折しなければならなかったのを右折してしまったのだ。
と言う事は、実は帰ってきて地図を見て解った事で、つまりこの時点でまだ知らない。

秩父湖に着かなくてもまあ良いか位の気持ちで走っていたので、何となく下仁田まで来てしまった。
もはやあたりは夕暮れに近いのだが、焦って先を急ぐでもない。
道の駅で一休み。

ネギを売っている。
一抱えくらいのネギの束が600円也。
凄く高い訳でもないがネギ的には良いお値段だ。
関東地方では下仁田ネギのような恰好のものを普通にネギという。
下仁田ネギは白い部分が太くて短いが、これも普通にネギだ。
細いネギ(小ネギ)は万能ネギなどと呼ぶ。
九州では逆に、ネギというと細いものを指す。

道の駅でナンシーおじさんに遭う。
おじさんは「これナンシーしー？」と、まるで合い言葉のように、まるで教科書通りの問いかけをしてくる。
思わずにやっとしてしまうその顔を悟られないように、「ななはんです」って言うべきかなと、ちょっと考える。

ボケなら突っ込むのが礼儀というものなのだが、それがわからない…
だって、だってですよ、おじさんは「俺もさ、シルバーウイングに乗ってるんだよ」なんて真面目な方向に振ってくるかも知れないではないか。
そんなことが頭を巡っている間に、たぶん450mSは経過してしまっている。
早く答えなければ。

で、真面目に「にひゃくごじゅっしーしー」ですと言った。
おじさんは少し期待はずれな感じの表情を見せながら、ああ、そう、と去っていった。

続く…