スカイウエイブCJ43A ブレーキオーバホール
エンジンも整備して載せ替えたし、フロント周りもオーバホールしたし、あとはブレーキくらいだなと思っていた。
そのブレーキ関係はブレーキフルードの交換は行った。
メンテされていなかったようで茶褐色なブレーキオイルは透明なものに入れ替えられた。
だが、そこで問題が…
リアブレーキが引きずるのである。
常時ではないのだが、引きずり状態になるとなかなか回復しない。
キャリパーのエア抜き用のバルブを緩めると引きずりが解消されるので、たぶんマスタシリンダ側のトラブルではないかと思う。
ブレーキフルード交換時にフルストロークさせたものだから、マスタシリンダの普段は使われていない部分までストロークして何かが起きたかも。
でもまあ良い機会なのでブレーキをオーバホールする事にした。
ブレーキ液が薄い褐色になる程度までメンテしていなかったキャリパーの様子はどうかな?とか。
そこでまずはオーバホールキットを発注する。
シール類のみの交換とピストンまで含めた交換のキットがあるが、たいした価格差ではないのでピストンも交換する事にした。
スカイウエイブの場合はリアキャリパを外すためにはタイヤを外せとなっている。
タイヤを外すにはマフラーも外さなければならない。
結構面倒なのだ。
が、実はそんな事をしなくてもホイールナット3本を外してタイヤ位置を少し移動すればキャリパは外せる。
フロント側はネジ2本で止まっているだけなので簡単に外せる。
まずはフロント側を割ってみる。
キャリパは3本のキャップボルトで留められているが、結構固い。
ネジの頭は錆びていたので、このネジも換えた方が良かったかも。
割ってみるとパッドのカスなどがたっぷり付いている。
余りに汚いので掃除をするが、コンパウンドで磨いてピカピカにしたわけではない。
ピストンを抜くにはどうしようか。
整備書にはエアを吹き込んで抜けと書かれている。
マスタシリンダと接続されている状態で、ブレーキ油圧で抜く方法もある。
実は私はキャリパーのピストン抜きも持っているのだが、それ無しで抜けないかやってみた。
まずはコンビブレーキ用の小さい方のピストン、これにはM10のロングナットがぴったり合う。
これを押し込んでからロングナットごと回して抜けば簡単だ。
ピストンの表に出ている部分は汚れているが、シリンダ内に入っている方は綺麗なものである。
サビも全くみられない。
これならピストンは交換しなくても良かった。
シリンダ内には茶褐色のブレーキ液がたまっていた。
ブレーキフルード交換時にも、液の動かないシリンダ内には古いブレーキ液が残るわけだ。
続いて右レバー側で動く大きい方のピストンを抜く。
これには対辺22mmのソケットレンチの外形に近いので、紙を挟んでぎゅっと押し込んだ。
あとはそのままソケットを引っ張ればいい。
こちらもピストンは綺麗なものだ。
リア側もバラす。
こちらのピストンはサイドブレーキ側なのだが、綺麗なものである。
綺麗でないのはキャリパのスライドピンだ。
リアブレーキはフローティングキャリパなので、このピンでキャリパ固定金具とつながっている。
グリスが効いていれば錆びないはずのものだと思うのだが、しかし錆びている。
ピンとゴムブーツは取り替えた方が良さそうだ。
ちなみにこの部分は独立して交換可能な部位なので、ここをいじってもブレーキオイルが減ったりする事はない。
スライドピンの片方は根本が6角ネジになっていて、もう片側はピンの内部に6角レンチが入る構造だ。
6角ネジの方は外せたのだが5mmの6角レンチを突っ込んで回す方が外れない。
インパクトでもやってみたがダメ、6角レンチをメガネで延長しても6角レンチの剛性が足りなくてしなってしまう。
バーナで加熱しても外れないし、無理してガイドピンが折れたら厄介だなと思う。
私は何も気にしないで買った6角レンチセットを使っているが、HRC60以上の高剛性レンチがあったら良かったかも。
硬度と共に重要なのは精度で、100円ショップのものなどは硬度こそHRC50程度はあるが精度が悪いのでガタがある。
と言っても手元に高剛性のヘクスビットソケットはないので、ブラケットをマシンバイスで押さえてL型6角レンチを蹴ってゆるめた。
もしピンが折れたらブラケットごと買い直すつもりで蹴飛ばしたら外れたのだ。
写真は一番右がその外れにくいピン、その左は6角ネジのピン、左の2本が新品だ。
組み付け時にはネジロックを塗って締め付ける。
スライドピン自体にはシリコングリスを塗ってキャリパ側に入れる。
片方のピンはゴムブーツの中に突っ込まれる感じで、もう片方はキャリパのアルミとの接触である。
ゴムブーツも新品交換する。
リアキャリパのピストン抜きには丁度良いものがなかった。
仕方ないのでと言うのはおかしな言い方だが、専用工具で抜く。
写真は中途半端に先っぽをピストンに突っ込んでいるが、もっと奥まで入れるのが正しい。
ピストンの内側に傷が付くのが嫌な向きは緩衝材を入れると良い。
スリップがあってもいけないので目の細かいサンドペーパを敷くのが良いだろう。
こちらもピストンはシリンダに入っている部分は綺麗だ。
シールの傷みは目視では解りにくいが、新品と比較すると少し延びているというか膨らんでいる感じがする。
十分すぎるくらい吸湿しているのではないかと思われるブレーキフルードを使っていても、ピストンは意外に錆びないモノなのだ。
ピストンの、シリンダに入っている部分は綺麗だが出ていた所は汚いし少し錆びている。
サビはサンドペーパでこすれば落ちるがメッキも落ちるのかな。
錆と汚れが見られるところは普段はシリンダの中に入らない部分だが、組み付け時に奥まで押し込めば当然シリンダの中には入っていく。
というか全部押し込んでから油圧をかけていかないとエアが抜けきらないようにも思うのだが大丈夫なのだろうか。
全部押し込むとすると綺麗に掃除しておかないとシールを傷める。
ピストンの内側も錆びているが機能的に問題になる事はない。
スズキではブレーキホースも4〜5年で交換しろと言っているし、キャリパーのオーバホールはフロントフォークのオーバホールに比較すればずっと簡単なのでやって損はない。
ただしモノがブレーキなので作業ミス無きように。
オーバホールキット、今回はシールとピストンのセットを手配したのでそっくり交換で手間がない。
ピストンは汚れている部分の掃除と錆び落としをして再利用が可能だと思うが、たまにしか分解しない部分でもあるし新品交換の方が安心は出来る。
新しいピストンはメッキの色も少し違っているし組み付け時に心置きなく奥まで押し込める。
(錆び修正だと多少の傷が残るので)
ピストンを含めたオーバホールキットはフロント側が4,725円、リアが69100-14820(1,365円)+69100-14870(1,995円)の合計3,360円である。
リア側はパーキングブレーキ用のピストンの方が高額なのだが、それはピストン内部にパーツが入っているからである。
上の図で5番の2つがダストシールとオイルシールだ。
4番がピストンアセンブリで、これだけのパーツがピストン内に入っている。
5番より右下方に書かれているものがキャリパ内に入っているパーツとなる。
これらサイドブレーキ用パーツ類を外すのはCクリップを取ればいいらしいのだが、組み立てはSSTが必要らしい。
整備書にも詳しく書かれていないので非分解が基本なのかも。
スズキは純正部品が安くて助かる。
ヤマハだとこの2倍は覚悟しなければならないかも。
組み立てはピストンシールとダストシールを交換してピストンを入れるだけだ。
ピストンシールは断面が台形になっていて装着方向があるので注意する。
要するに外したとおりに入れろという事だ。
シールやピストンはブレーキオイルで洗浄し、ブレーキオイルを拭き取らないまま組み立てる。
リアキャリパのフローティング機構に塗るスズキ純正キャリパアクスルグリスはシリコングリスだ。
私はスズキ純正品ではないシリコングリスを使っている。
古いシールを外す時にシリンダ内面を傷つけないように注意する。
先のとがったピックなどのようなものでシールを取るのが良いのだが、竹串や爪楊枝でも何とかなる。
私は安物工具セットに付属していたピック(歯医者が歯石を取るときに使うようなもの)を使ってみた。
ダストシールの入っていた溝にはゴミも付着している。
奥側のオイルシールの溝は綺麗なのだが手前の方はそれなりに汚れている。
最初はシールを外すのに使ったピックでカリカリやり、その後歯ブラシを使って掃除した。
後はパーツクリーナで洗浄し、ウエスでシリンダ内部共に拭いた。
組み立ても特に難しい所はなく、ピストンやシールをブレーキオイルに浸したあと順番に組んでいく。
フロント側もリア側も同様で特別難しい事はない。
フロント側を組んだら割った部分を元に戻すが、その間に入れるシールを忘れないように。
組み込んでみて解ったがシールを換えるとピストンの動きがかなり軽くなる。
外したシールは少しふくらんでいる感じがした。
フロントキャリパは汚い…
パッドの端が欠けている。
リアキャリパーはさほど汚れていない。
今回は用意してあった新品パッドに交換した。
これまで使っていたパッドの厚みも十分なのだが、ついでだから。
パッドを押さえているピンも交換した。
これはまあさほど錆びているわけでもなかったのだが一応。
ピストンや他のピンなどもそうなのだがメッキが変わっているようだ。
従来品はクロメートっぽいのだが交換品は銀色なのだ。
マスタシリンダは新品を使う事にした。
中古をオーバホールすることも考えたのだが、程度が良くて左右そろったマスタシリンダが見つからなかった。
また程度の良いものは5千円以上していて、これにオーバホールキット代の2千円を加えると新品との価格差が少なくなってくる。
ならば新品の方が良いかなと思った次第だ。
ブレーキは大切だしね。
デイトナのメッキ仕様は9千円くらいで買える。
社外のタンク別体型だと左右で1万円以下なので純正品の半額以下で入手可能だ。
これまで使っていたマスタシリンダ。
曇った窓をサンドペーパとアクリル磨きで整えてはみたが…
ヒビは内部にまで入っているというか奥が深くて余り綺麗にならない。
フライスか何かで表面を削ってしまえば良いかもしれないが薄くなる。
やはり新品は綺麗だ。
これも何かの対策が施されたようで品番が変わっている。
またオイルの入る中から見た、シリンダへの入り口のパーツが変わっていた。
今まで使われていたものはゴム製のパーツが付いているのだが、新品は金属部品になっている。
戻りが悪いのではないかと疑われた左レバーのマスタシリンダをバラしてみる。
構造的にはブレーキレバーでピストンを押すのだが、そのピストンが飛び出してこないようにCクリップみたいなモノで止めてある。
Cクリップはかなり奥の方にあるので通常の工具は入らない。
オーバホールするためには先が細くて長いスナップリングプライヤが必要だ。
スナップリングプライヤの先端は1.3φ以下であれば入るのだが、アーム部分というのか先端から手前側も細くないと工具自体が入っていかない。
リアキャリパのサイドブレーキピストン側をバラすにも先が細くて長いスナップリングプライヤが必要だ。
今回は再使用しないのでCクリップの両側の丸穴に1.5mmの6角レンチをそれぞれ叩き込み、それをプライヤでつまむように縮めて外した。
シリンダ内部に傷が付く事はないがクリップが乗っている部分に傷が付く。
またこの方法でクリップを入れるのは相当難しく、専用工具が欲しくなるだろう。
ピストンはアルミか亜鉛か解らないが、いずれにしても非磁性体で出来ている。
ゴムのシールが少し傷んでいる感じで引っかかりを感じるが、サビなどで動きが阻害されているわけではない。
シリンダ側はゴムの痕が付いてはいるが大きな傷などはない。
油圧を抜くのはこのバネの力であり、バネが伸びる方向でピストンが戻されるとシリンダ内の圧力が下がろうとするのでオイルが戻る。
これが全パーツである。
右レバー側は内部が汚れている。
ただしブレーキクリーナを吹き付ければ綺麗になる。
ピストンの動きは左レバー側より良好だ。
ここまでやってホースは換えないのかよと言われそうなのだが、これはまた後で。
実はハンドルバーも換えられている為にブレーキホースの長さが余っているのだ。
ステンメッシュのテフロンホースならば好きな長さに加工出来る訳で、でも大げさだよなぁスクータにステンメッシュは。
なんて考えている状態なので今回は手を付けない。
マスタシリンダアセンブリは片側1.28万円である。
アセンブリ交換ではなくオーバホールする場合には、ピストンなどを含むシールキット(59600-03820-000)2,257円の他にブレーキオイルが入っている部分の蓋の内側のゴムと樹脂製の板も換えた方が良い。
状態は様々だろうがゴムが伸びてべろんとしているものもある。
バンジョボルトの所に入っているワッシャも交換しておきたい。
純正部品だと09191-10009(10×15×1.5)で1枚73円もする。
(純正品は銅にメッキ?)
ストレートでフツーの銅ワッシャ(10×16×1.5)を買うと1枚あたり27円なのだ。
ただしワッシャの外径が1mmだけ大きい。
ピッタリのものがないかどうか調べてみるとこちらでキジマ銅ワッシャとして売られている。
値段は10枚で367円だから純正の半額だ。
ただしこれだけを買うと送料がかかるので損になる。
ワッシャの類は何かのついでに買っておくのが良いのだが、そもそもサイズが解らないしなぁ。
オイルのドレンプラグ用などならついでの時に注文しておけるのだが、ブレーキラインなんてあまりバラさないし。
ちなみにキャリパとマスタシリンダを付け替えるとすると銅ワッシャは10枚必要になる。
キャリパオーバホールが終了したら車体に取り付けてエア抜きをする。
ホースの上下とも外してしまったので、ドレンの所にホースを付けて口で吸ってオイルを導いた。
フォークも掃除すれば良かったかなぁ。
なんかキャリパだけが綺麗になってしまった。