HID遅延点灯回路
中国製HIDなどの配光テストその他を色々行ったが、その後ハロゲンバルブに戻していた。
上下スイング式などならグレアがそう多いわけでもなく、そのまま使っても良いかなとは思っていた。
当時実験した時にレイブリック製は借り物だったのだが、その後自由にいじくり回して良いものを入手したので再度実験を行った。
レイブリック製には板金ものの格好悪い遮光板が付いている。
写真は以前の実験時の使い回しだが、以下のようなものだ。
遮光板の右側の壁を見て分かるように、斜め後方に光が行かないように遮光板が一段高くなっている。
ほぼ真横から見ると発光部の下半分が隠れる感じだ。
この遮光板はトップカバーのないもので、それが純正装着されているヘッドライト用のものだ。
このサイド部分を徐々に短くしていき、ノーマルから約7mmカットしたものと並べてみた。
トップカバーはステンレス板で延長している。
遮光板を削ったところにサビチェンジャーを塗っておいたら熱で焦げて黒くなってしまった。
遮光板は1mmの鉄板で無駄に分厚い。
切るのも狭く(遮光板は非分解式でトップのキャップすら外す事が出来ない)、仕方がないのでワイヤカッタで切ってしまった。
シグナスXに装着して実験すると、遮光板を切る以前とそう大きく変わらない事が分かった。
ギリギリまで反射鏡を使おうとするならば、後方よりもむしろ発光点あたりの遮光板を低くすべきだ。
しかしそこはヤスリでゴリゴリやるしかなく面倒だ。
ならばと言う事で、後方の遮光板の高い部分を更に3mmほど切ってみたのが下の写真だ。
ノーマルより7mmもこの高い部分が無くなった事になる。
するとグレアが出た。
反射鏡のどこに当たっているのか良く分からないのだが、うっすら上方に光が漏れている。
と言う事で、3mmカットの状態で使う事にした。
遮光板は左右で2個、さらにトップのキャップのないものが2個付属しているので切ってしまっても残りはある。
遮光をすればするほどグレアが少なくなるのは当たり前で、極端な話バルブを全て遮光板で囲ってしまえば光が出ないのだからグレアも出ない。
こうした、いわば安全サイドの設計がレイブリックが暗いと言われる所以である。
トップのキャップはこの板金ものにスポット溶接されている。
中国製でもネジ止めなどなのに、そして取り外し可能にしておけば2種類の遮光板を用意する必要もないのに。
以前の写真を再掲載するが、サイドの壁の高さの違いがお解り頂けるだろう。
中国製が発光部が見えているのに対して、レイブリック製は半分も見えていない。
写真左から2番目の遮光板はレイブリックのものに付ける事が出来る。
ネジ位置が多少違うので遮光板の中央にバルブが来なくなってしまうが、流用は可能だ。
逆に中国製でもレイブリック並みの遮光板を付ければグレアは出なくなる筈だ。
というか、一番左のものはそこそこ配光特性が良い。
トップシェードを大きくしてハイビーム用のスリットを少し狭くすればレイブリック並みになる。
上下スイング式→前後スライド+上下動→レイブリック→H4ハロゲンを比較してみよう。
ハロゲンと上下スイングは手前が明るい。
上下スイングに関しては手前の明るい部分が壁に反射して周りが明るくなっている感がある。
(中央部手前が、見て解るくらい明るい)
ハロゲンに比較してレイブリックやスライド+上下で手前が暗くなっている。
これはトップシェードを大きくしているからだ。
トップシェードがリフレクタに陰を作ってしまい、手前を照らす光が遮られている。
しかしシェードを短くすると発光点が見えてしまうので眩しい。
単に筒ではなく、リフレクタ形状に合わせた加工をすれば良いとは思う。
ただ、それを以てしてもハロゲンランプの配光特性を超える事は出来ない事になる。
もう一つこのバーナを付けるのに問題なのは後ろに長い事だ。
バーナはスライド+上下動するのだが、発光点の位置はハロゲンランプに合っていない。
確かにガタは少ないが中国製はちゃんと発光点の位置を合わせた上で7mmスライドなのに。
この後ろに長いのはスライド+上下をカムで行っているためだろう。
長すぎるのと重いことで、シグナスに装着するとバーナの位置が動いてしまって調子が悪い。
何せ重いものだからヘッドライトバルブのクリップだけでは固定が甘いのだ。
なので汎用ステーを使って押さえを作った。
なんか手間がかかるなぁ。
付属品というかバラストなども数が多い。
バラストというか定電流型DC-DCコンバータ、イグナイタ、コントロールユニットと呼ばれるハイビームとロービームを切り替えるユニット、それらの配線の束などがある。
シグナスの場合はステップ下にスペースがあるので、それらはそこに突っ込んだ。
配線はバッテリから引くようになっているが、それ用のリレーはメットインスペースを外したあたりに取りつけた。
この部分もサイドカウルとの間にスペースがあるので色々入れられる。
ノーマルのヘッドライトコネクタからコントロールユニットまでの配線途中にヒューズやダイオードを入れる。
入れると言っても両側がギボシやコネクタなので迷うことはない。
なぜこんなに面倒なことになっているかと言えば、プラス側をスイッチするタイプとマイナス側をスイッチするタイムの双方に対応させるためだ。
なお中国製では自動判定切替なんてのもある。
シグナスの場合はプラス側をスイッチする方式なので、それに合わせて配線を組む。
パーツが多いので面倒なのは事実だが、難しいとか間違えやすいことはなくくみ上げることが出来た。
あとはビーム位置を調整するが、レベライザもないし左コーナでは必ず対向車を照らしてしまうのでライトを左向き寄りにすると共にビームを下げる。
前回までは実験という感じで一時的なHID装着だったが、今回は取り付けて予定では1週間以上の実走行テストもするので小細工を考える。
具体的にはヘッドライトの遅延点灯だ。
HIDは始動時電流が大きく、レイブリックのこれも7Aほどの電流が流れる。
照度が増すに従って徐々に電流は減ってくるが、単車の場合はヘッドライトを点灯させたままセルを回すことになるのでバッテリが可哀想だ。
台湾シグナスなのでヘッドライトスイッチは付いてはいるが、いちいち操作するのも面倒である。
そこで遅延点灯回路を考える。
簡単にはディレーリレーを使う手もあるし、トランジスタとコンデンサでも良い。
スマートにやるならタイマICを使う事も出来る。
が、単なるタイマでは面白くないのでエンジンがかかってからライトが点くように考えてみる。
最初に考えたのがこれだ。
インジェクタの信号でFETをスイッチするだけの回路だ。
リレーそのものをFETに置き換えることももちろん可能だし、その方がスマートではある。
しかしレイブリック製以外のHIDのリレーハーネスなどへの接続も簡単なように、リレーを制御するスタイルとした。
リレーを使わずにFETで電源そのものをスイッチさせる場合はFETを明確にON-OFFする必要があり、ゲートに時定数回路を入れるような方法だと比較的高いON抵抗状態を経ることになるので良くない。
インジェクタはアイドリング時に約70mSごとに動作しているので、時定数がそれ以上であれば消灯しない。
点灯までの時間はCとR2で決まり、消灯までの時間はCとR1で決まる。
インジェクタ回路なのでインピーダンスは低いが、余り重い負荷を付けるのは気持ちが良くないのでR2はKΩオーダで。
もう一つはPNPトランジスタと組み合わせてローサイドをスイッチする方法だ。
トランジスタをバッファとして使うのでインジェクタ信号とFETをアイソレート出来る。
が、待てよ、セルが回っている時もインジェクタは動くわけでセルが回りながらライトが点くじゃないか。
使用したFETはVGSが4V程度でONになるタイプで、OFFになりにくいように時定数を稼ぐには良いが、逆にON迄の時間を稼ぐにはコンデンサ容量を増やさなければならない。
で、VGSを上げると共にスイッチを急峻にするためにツェナーを入れた。
PNPトランジスタの所にツェナーを入れて、ここでON時定数を決めてFET側の時定数はOFF側を決める方がスマートではある。
が、ここでトランジスタはあくまでバッファという位置づけにする。
それは、トランジスタのコレクタ側のパルスを積分してインジェクタの開弁率でも見ようかなと思ったからだ。
回路はHID用リレー周りも一緒に書いた。
R1とR2でON/OFFの時定数を決めるが、分圧する事になってしまうので抵抗値の決定には注意を要する。
ON側とOFF側別々に時定数を設定出来るようにしようかと思ったが、回路を増やして凝るほどの話ではない。
OFF側はインジェクションパルス幅より大きければいいわけで、ライトを消す時にはそもそもH4ソケットからの電圧が絶たれるので時定数には無関係だ。
じゃあ抵抗が不要かというとそうでもなくて、コンデンサをディスチャージしてやらないと次回始動時の遅延時間が狂ってしまう。
R2を100kΩとするならばR1は22kΩとか、その程度の比率が良い。
ツェナーを入れたのでFETがONになるにはコンデンサの電圧が8V程度まで上がっていて、つまり抵抗で分圧された電圧が8V以上なければならないことになる。
私はローパワーというかツェナー電流があまり流れない領域でもツェナー電圧が確保出来るタイプを使ったが、そうでないとツェナー電流が不足してツェナー電圧が得られないかも知れない。
R2=100kΩでCの電圧が10Vだったとしても、ツェナー電流は60μAでしかないのだ。
ならば(温度特性が2mV/℃あるが)シリコンダイオードの複数本直列でも良い。
5本直列にすると3.5V程度の電圧は稼げる。
時間を延ばしたければC1を100μFでも470μFでもお好きに。
抵抗をあまり高くするとリークなどの問題もあるのでそこそこに。
(コンデンサの電荷を全部キレイに抜きたい方はコンデンサとパラに高抵抗を入れると良い)
たいした基板ではないが、防水コートなどをスプレーしておけば安心だ。
私は小さなプラスチックケースに入れている。
インジェクタの動作時間でC1をチャージするので、アイドリングで放っておくと点灯までに時間がかかる。
走行するなど、回転数と負荷が上がると素早く点灯する。
抵抗もチップを半田面に実装しようかと思ったが、調整することも考えて足つき部品にした。
回路図には書いていないがノイズ防止用のコンデンサやパスコン、ツェナーなどは半田面にチップを実装している。
ケミコンは105℃品が100μFのものしか手持ちがなかったので100μFにした。
OFF側の時定数がかなり長くなったので、エンジンをかけずにライトを点けることもちょっとした操作で可能だ。
ライトを点けた状態でエンジンを停止し、すぐにキーをON位置に持っていけばいい。
コンデンサの電荷が抜けていない間に操作すればライトは点灯しっぱなしになる。
ただし、コンデンサの電荷が抜けるとやがて消灯する。
もしも自己保持としたいのならばR4をトランジスタのエミッタに接続せずに、FETのソースにつなげばいい。
こうすると、いったんFETがONになるとインジェクタの動作にかかわらずFETはONになりっぱなしになる。
いや、考えてみると自己保持は必須か。
長い下り坂など、燃料カットを使った走行を想定するとインジェクションパルスは当然出ないことになりやがてライトが消える。
よって一度点灯したらキーをOFFにしない限り(ライトスイッチをOFFでも)リセットされないようにした方が良いだろう。
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