47km/lを達成した軽自動車は凄いのか?(4/1)
◆ ダイハツは2気筒エンジンを軽自動車用に開発しているが、振動などの対策が上手く進まず、製品化出来ていない。2気筒エンジンはフィアットが市販車で採用しているが、日本車で現時点での採用例はなかった。
◆ 新型アルトは2気筒エンジンを搭載し、クランク同軸のモータと位置可変式バランスシャフトによって振動のコントロールに成功した。モータのトルクをダイナミックに変化させることでトルク変動を吸収し、2本のバランスシャフトはシャフト内部に入れられている液体の量を調整することで、幅広い回転域で振動吸収性能を上げる。
◆ エンジン自体は2バルブOHV直噴エンジンで、2気筒化による気筒容量の適正化によって十分なトルクを確保出来る。モータの出力が合成出来るので、NAのエンジンでも64馬力に達してしまうこと、2気筒化とOHV化によって従来の4バルブDOHCエンジンの半分のコストで製造が可能になった事がメリットだ。カムシャフトは1/2速回転のバランスシャフトを兼用し、OHV構造になっている。
◆ 一次バランス相殺用バランスシャフトはその位置が微妙で設計を難しいが、バランスシャフトを2本にすることで低振動化を進めた。カムシャフト兼用バランスシャフトは上下に10mm移動させることが出来、負荷状況に応じてバルブリフトと作用角が変わるシステムになっている。負荷変動によるエンジンバランスの変化も、これで同時に吸収できる。これに筒内直噴を組み合わせる事で、レギュラーガソリン仕様ながら14.7:1の圧縮比を実現した。
◆ エンジンコストが半分になったその残り半分で、モータやモータの駆動システムを作り上げている。バッテリーは約1kWh分を搭載しているので、ハイブリッド軽自動車としては大容量となる。WTLC燃費計測時にバッテリー容量が1kW以下だと燃費データが悪化するそうで、そのギリギリの容量に設定した。こうしたシステムによって47km/lのカタログ燃費が達成されると、2気筒故の爆発間隔の広さから来る独特の排気音すら好意的に受け取られる。
◆ そしてこのアルトが99万円というのだから、価格インパクトも凄い。99万円でもエアコンは付いているし、Bluetoothによるスマートフォン連携システムで専用アプリとリンクさせれば、オートエアコン機能もラジオ(ラジコ使用)もオーディオも完璧、車室内には同軸2Wayの4つのスピーカと25W×4のディジタルアンプが奢られる。
◆ スマートフォンをダッシュボードの専用ポケットに入れると、レンズとミラーで15インチ相当に見えるという、大昔のテレビの前に付けるフレネルレンズを連想させるような、何だかよく分からない仕掛けも付いている。これは故鈴木修会長が、青春の思い出を形にしたとか何とか。スズキは安い車だからといって安っぽい車ではないと胸を張る。
◆ 基本モデルを1つにする事によるコストダウンと、ディーラオプションの拡充による自由度の高さも特徴的だ。標準のシートは合皮なのだが、シートを一部分解して取り付けなければいけないオプションのシートカバーは、まさにシートと一体化する逸品なのである。コノリーレザーやロロ・ピアーナの素材を使ったそれらは、インパネやドアトリムなどへの適用も可能など、スズキでは「好きなだけ高級に出来ます」と謳う。