マーケットの大きさ
◆ 中国製品の開発速度や価格はマーケットの大きさから来るものだ。かつて日本の高度成長時代にも同様の事が起きて、ものが売れるからどんどん作る、要らなくなったものはどんどん捨てる、更にはそれを海外で売るという事が起きていた。
◆ 中国の場合は自国内での需要が極めて大きいので、輸出に頼らなくても十分な数量を売りさばくことが出来る。これによって量産効果が出るので国際競争力も増す。こうして中国の経済は急激に大きくなったわけだ。ただし何事もそうだが、一定の方向に拡大し続けることはない。
◆ 信頼性や安全性という面で中国は少し遅れている、と言うよりもそんなことにはかまわず作って売る方が良いと言う、これも日本の高度経済成長期同様だ。煤煙を出そうがヘドロを蓄積させようが、どんどん量産してどんどん売っていく方向に突き進んでいた。
◆ 家電製品や自動車にしても高信頼性で安価な商品という事で世界で使われるようになった。世界に先駆けて様々な製品を開発するのは今の中国同様だったわけだが、日本の国内景気も悪くはなかったので開発に弾みがつく。オーディオ製品だとかビデオデッキだとか、その後のポータブルオーディオプレーヤやハンディビデオ全盛期が日本の家電製品の全盛期だったのかも知れない。
◆ 橋本氏がバブルを壊すと日本は二度と浮き上がれなくなってしまう。多少景気が上向き始めるとそれを壊していくのが日本政府であったわけで、世界に取り残され始めるのだった。ライバルがいない状態で日本が足踏みしているのならまだしも、中国の急成長によって日本の製造業は押しつぶされ始める。
◆ 私の印象に残っているのは液晶パネルの話で、カラー液晶に使用する高精細フィルタは日本でなければ製造出来ないと各社は言っていた。しかしこれは韓国にさっさと真似をされ、中国にも作られ始めると、シャープの立場はなくなってしまった。
◆ 自動車にしても同じような事は言われていて、トヨタの生産技術は簡単には真似はできないと。確かに生産技術だとか購買のコントロールはトヨタの右に出るものはいなかったのかも知れない。しかし極限まで追求された生産技術や購買のコントロールを使わなくても、日本車より安価な車が作れてしまったところにEVの恐ろしさというか強さがあった。
◆ 高度な技術や高精度な加工、ものすごい数の部品数とそれらの管理やコスト低減などで日本の自動車メーカは高品質と低価格を維持してきた。しかしEVだと部品点数自体が少ないので、日本的な生産管理が役に立たなくなってくる。このあたりは中華メーカだけではなくテスラだって同じ事で、テスラ同様の車をトヨタが作って、テスラの価格が出せるかと言ったら難しいだろう。
◆ 自動車の生産管理だけではなくホームオートメーションの世界でも、日本は大きく後れを取っている。日本の場合はPC普及率も低いので電子化というか自動化というか、そういうもの自体が売れる環境ではない。日本のメーカは共通規格が嫌いなので独自の製品を作り、それらは統合が出来ないので使いにくくなる。
◆ IoTでも中華機器無しには成立しない所になっていて、勿論日本の家電メーカ製のものもあるにはあるが、グローバル仕様とは異なる部分が多いので使いにくい。しかし独自仕様を捨ててしまうと中華機器に負けるという、いや、既に負けているんじゃないのかな。