水平対向6気筒エンジン(9/12)
◆ 水平対向6気筒エンジンはポルシェや過去にはスバルも作っていた。これってどうやって組み立てるのだろうと不思議に思っていた。水平対向以外のエンジンの場合は、シリンダブロックの上から、ピストンとコンロッドを予め組んだものを入れ、コンロッドの大端部をクランクシャフトに組み付ける。
◆ 水平対向エンジンの場合はクランクシャフトが左右のシリンダブロックの中間にあるので、そもそもコンロッド大端部のボルトを締めることが出来ない。水平対向ではないが日産の可変圧縮比エンジンだったかなぁ、コンロッドの横に圧縮比可変用のシャフトがあるので大端部が水平に割れているのではなく、傾いて割れていたような気がする。
◆ これと同じようにというかもっと極端に、コンロッドに止めるためのボルトを普通のエンジンとは90度違った向きにすれば、クランクケースのオイルパン側から締められるかな?変な方向に大端部を割るとバランス的にダメかな。
◆ ポルシェの空冷エンジンはシリンダブロックが個別にあるので、ピストンを組んでからシリンダブロックをかぶせることが出来そうだ。しかし水冷エンジンではそうは行かない。で、エンジンを組むときには最初にクランクシャフトにコンロッドを組み付けておいて、あとからピストンを入れる。
◆ 片側の3気筒分は普通のエンジンを組むときと同じ手法で大端部、コンロッドキャップのネジを締められるのだが、残りの3気筒はそうは行かない。そこで最初にクランクシャフトを組み付けた状態で左右のシリンダを結合し、あとからピストンを入れて組み立てるしか出来ない。
◆ ピストンを後から入れるわけだが、この状態ではピストンとコンロッドの小端部を結合させることが出来ない。つまりピストンピンが入れられないので、シリンダブロックにサービスホールが開けられている。その穴からピストンピンを入れるのだが、これが結構大変だ。
◆ 最初にサービスホールから一番遠いシリンダのピストンピンを組むのだが、棒の先にピストンピンをくっつけて、それをそっと押し込んでいってピストンとコンロッドを結合させる。ピストンとコンロッドの位置は予め合わせ、コンロッドが傾かないように、そっとピストンピンを入れる。そしてそのあとでピストンピンが抜けないように、又々長い棒の先にサークリップを付けてピストンにパチッとはめる。
◆ 工場での生産工程では自動機が使われるだろうから、ものすごく難しい話ではないのかも知れない。しかしオーバホールして手で組むとなったら結構大変な作業だ。これを3個のピストン全てで行うのだから、組み立て性が良いとか悪いなんて話ではない感じがする。
◆ ピストンピンが落ちてしまう事は(寸法的に)ないと思うが、サークリップが上手く入らずに落としてしまったら、それを拾うのは大変そうだ。コンロッドが傾いたら一度ピストンを抜いてやり直さなければいけないが、ピストンを下から押す事が出来ない訳だから、デントリペアの道具みたいなものでホットボンドでくっつけて引っ張るとか、吸盤で引っ張るとかしなければいけない。
◆ ポルシェのエンジンは油圧低下(オイルがシリンダブロック内部で漏れる)やシリンダの傷の発生などがあって、オーバホールが必要な場合がある。しかしこのコストが凄く高いのは、部品代もあるが工数がかかることにもある。