ステアリングギアレシオの問題ではない(11/20)
◆ 何度か触れているが日本車とドイツ車ではステアリングフィールが違う。日本車はステアリングのラフな操作でも車がそれに応じてフラフラする事はない。より大きくステアリングを操作すると、まるでロールが先かのような動きでアウト側が沈み、そしてノーズが向きを変える。
◆ サスペンションが柔らかめというとアメ車とかフランス車がある。その車の生まれた背景というか文化というか地域性というか路面状態というか、そうした中で色々な味付けの車が出来てきたわけだ。
◆ そういう意味では日本で乗るなら日本車がもっとも相応しいわけだ。アメ車を日本で乗るには日本の道は狭すぎるし、駐車場も狭すぎる。最小回転半径の話は何度か書いているが、テスラのモデル3が6m弱だったかな。全長4.7mの車にしては小回りが利かないが、米国で乗るなら全く問題はない。
◆ 道路事情だって海外と日本では異なっているわけで、欧州や米国では都市間移動となれば100kmも200kmも連続してしかもそこそこの速度で走る事になる。勿論都市部では渋滞もあるが、渋滞遭遇率としては日本は特殊であると言われる。なので日本の渋滞や高温多湿の夏を車両の試験目的に使うメーカもある。一時期気温の高いエリアのテストは中東あたりが選ばれていたのだが、日本の渋滞の方が更に過酷なようだ。
◆ 米国は中緯度地域に人が沢山住んでいるのだが、ドイツなどはそもそも国自体が高緯度にあるので寒いし、イタリアはその逆だ。日本は南北に長いのと明確な四季があるので車にとっては過酷だと言える。そんな中で生まれてきた日本車の信頼性が高いのは、そうでないと日本で満足に使えないから、かも。
◆ そうした環境の中で生まれ育った日本車と、例えばアメ車や欧州車とでは操縦性が違う。日本車では余りクイックなステアリングギアレシオは採用されないが、ミニはロックtoロックが2回転程度だし、テスラのバイワイヤステアリングは1回転くらいしか動かない。
◆ ただしステアリングギアレシオが速いとクイックかと言えばそうでもなくて、パワーステアリングのトルクセンサのねじれ分や、ステアリングギアの遊びの部分によってハンドリングは変わってくる。
◆ パワーステアリングに於いて操舵力を検知するにはトルクセンシングが必要だ。電流を測るのに抵抗が必要(電圧降下から電流を計算する方式の場合)なのと同じで、トルクセンシングには多少のねじれロスがある。トルクセンシングの方法としては色々あるのだが、単純に言えばステアリングシャフトのねじれを検出するみたいなものだ。
◆ 欧州車は日本車に比較してねじれ角の凄く小さいところをセンシングする(センサ感度を高くする必要があるので誤動作や故障確率が多い)なんて言われる。日本車の場合はねじれの大きいところを使うので信頼性を上げやすいそうだが、そもそもねじれたり戻ったりするのだからラバーフィールになる。これはまあ構造上仕方がない事かも。
◆ ステアリングレスポンスのみではなくキックバックに関しても、日本車は路面の状態を伝えにくいセッティングだと言われる。これはステアリングだけの問題ではなく、サスペンションジオメトリも関係する。車体は小さくてもおおらかな(アメ車的な)操舵感が求められるからだそうだ。