WAXを考える


ここしばらくはスーパーイオンコートばかりを使っていた。
12ヶ月耐久を誇るイオンコートは、少なくとも屋根付き駐車場で使っている分には能書きに近い耐久性を発揮する。
汚れの付着その他を考えれば半年ごとに塗り直すのが良いと思うが、それでも年に2回の作業なので楽なものだ。
反面艶に関しては褒められたものではなく、濃色車にはお勧めしにくい。
艶など余り関係ないという方にならばいいのだが、濃色車たるものいつのピカピカでなければと言う人はフッ素系のコート剤は選ばない方が良いだろう。
ちなみにイオンコートのシリーズにもカルナバ蝋などを配合して艶を重視したイオンコートタイプGツヤ(7ヶ月耐久)や撥水性を重視したイオンコートタイプR防水(9ヶ月耐久)もある。
艶と耐久性の両立を考えるとポリマーやガラス系のコート剤が良いと思う。
F&Fでも実験している太陽ポリマーなどは塗布も簡単で艶も良い。
ガラス系コート剤もいくつかあるのだが、私は個人的に撥水系が好きなのでグラスガードを使った。
一般的にガラス系のコート剤は親水性を謳うものが多いのだが、グラスガードはフッ素系の樹脂が入っているのか撥水性がある。
撥水性のあるワックスの場合は水が玉になってレンズになり太陽光によって塗装が焼ける場合がある。
このため親水性の方がボディーには優しいと言われているのも事実だ。
艶的には太陽ポリマーやザイモールが良いと思う。
耐久性はやはりイオンコートだろうか。
塗布も拭き取りも簡単で単価も安いという面でもこれに勝るものはそう多くない。


ワックスを掛けるときの下地作りの重要性は何度も書いている。
下地が出来ていない状態でポリマーを塗ったって耐久性は得られないだろうし、ザイモールを塗っても艶は完璧にはならない。
下地作りは古いワックス分や汚れなどをコンパウンドで削り去るところから始まる。
ワックス被膜はどんなに厚くても1μm程度なので、その程度削ればいいことになる。
これらに関しては下地作り1,2及びグラスガードのページでも書いている。
表面の汚れを削らず落とす方法としてはアルカリ洗剤が効くと思う。
エンジンルームなどを洗うのにもマジックリンが良いように、だ。
ただしこれらを使った後は良く水洗いしないと金属や塗装にダメージが残る。
リンレイの水垢スポットクリーナーなどはこのタイプで水あか落としなどに威力を発揮してくれる。
ケミカルであればコンパウンドで擦るわけではないので塗面に対するダメージも少ないと思う。
しかしケミカルで汚れを落としても、最終的に塗面の平坦性を出すには削り取ることも必要だ。
洗車傷や磨きキズなども出来るだけ除去したい。
私はウイルソンの鏡面コンパウンド(1μm)を使っているが、同じウイルソンでも8種類のコンパウンドが発売されているので好きなものを使えば良い。
ここで重要なのは粒状径で、それがコンパウンドの特性を左右する。
他に添加物(アルカリ洗剤や界面活性剤など)が入っているものもあるが、削りと脱脂を別と考えればコンパウンド径だけで選べばいいと思う。
手磨きの場合は粒状径1μm程度、ポリッシャが使えるのならばより細かい目のコンパウンドの方が美しく仕上がる。
濃色車などでは手磨きでも1μm以下で仕上げた方が良いかもしれない。
洗車が終わって乾いたボディーをコンパウンドで磨いて拭きあげるのに1〜1.5時間程度かかるだろうか。
添加物の入っていない水溶性コンパウンドを使うと多少ボディーが濡れていても気にする必要がないので有り難い。
この後で鉄粉が付着しているようなら粘土で鉄粉除去を行う。
最初に鉄粉除去から行っても良いのだが、濃色車の場合は最初に大きなゴミ類を取り去っておかないと粘土をかけたキズが目立つ事になる。
鉄粉の付着具合を確かめるにはセロファン(タバコやチョコレートなどの周りに付いている透明なビニール)を使うと分かりやすい。
セロファンがない場合は固めのビニール袋、コンビニの薄手のものでは検出感度が低下する。
こうしてセロファンを指に被せてボディーを撫でると恐ろしいほどザラザラツブツブが付着しているのが分かると思う。
粘土でこれらを除去するのだが、これが意外に取れてくれない。
鉄粉溶かし剤などを塗りながら粘土で擦り、セロファンでチェックしての繰り返しはそこそこ疲れる。
粘土は表面が汚れてきたらそれを内側に練り込んで、常に新しい面を使わないとボディーに傷が付いてしまう。
一旦コンパウンドで汚れを取った後に粘土をかけても少なからず傷が付くので、気になる向きはより細かなコンパウンドで再度仕上げる。
例えば最初の磨きが3μm級のコンパウンド、次に粘土を使い、最終的には0.5μm以下のコンパウンドで仕上げるという感じだ。
ここで電動ポリッシャが使えると作業が早く美しく行える。
1μm以下のコンパウンドではほとんど塗面は削れないので電動ポリッシャで仕上げるのが良いと思う。
キズの具合を見るには作業は薄暗い場所で、ライトを当てながら行うのが良いだろう。
日中の明るい光の中だと気づかない細かなキズが、人工照明の下では分かりやすいからだ。
最後にアルコールを吹きかけて拭き取っていけば脱脂も完了で塗面はほぼハダカの状態になる。
多機能を謳うコンパウンドだと油分などが残る可能性もあるので脱脂は一応行った方がいいかもしれない。
ブリスなどのコート剤によっては脱脂を推奨しているのものある。
磨き屋さんなどではこんな感じで、塗面の荒れ方によってはもっと工程が増えるそうだ。
プロは電動ポリッシャを使うが、磨きには意外に時間をかける。
1μm以下のコンパウンドの場合、ポリッシャを動かす速度は毎秒1cm程度、かなりゆっくりに見える。
そしてそれを数回くり返して仕上げていくので、同じ事を手でやろうとしたら大変である。
簡単には電動ドリルにバフをくっつけるのが良いが、ポリッシャもリョービあたりのものだと売価1万円程度なので一台あると便利だ。
2万円出すと回転数フィードバック付きのもの、5万円出せば磨きキズが出来にくいように単純な回転のみではない動きをするものが手に入る。
初心者?用には価格の安いリョービのRSE−1250あたりが良いと思う。
下地作りは大変ではあるのだが、年に一度の作業だと諦めて頑張りたい。


固形ワックスなどを塗ってみると分かるが、下地が出来ていると付着力が高まるためか拭き取りが大変である。
最近のワックスやコート剤はそれでも拭き取りが簡単なように出来てはいるが、下地が出来た状態と古いワックスなどが残っている状態では拭き取り性に大きな差がある。
拭き取りが簡単という点ではポリマーやガラス系コート剤がお勧めだ。
この手の水分や或いは紫外線硬化型のコート剤の場合は他のワックスの上塗りなども出来る。
ただし最初に塗ったコート剤にとって2度目に塗ったワックスは汚れに等しい異物なので定着するかどうかは不明だ。
同種のワックスなどでもこれは同じ事が言えるが、硬化型のコート剤の場合は上塗りしてもしたに塗ったものが溶けるわけではないので被膜は厚くできる。
2液性のコート剤の中でグラスコートは塗布も拭き取りもかなり簡単な部類だと思う。
ただ世の中にはそう思われない方も多いようで、「素人には無理」と言い切る方も。
問題は拭き取りのタイミング等なのだが、私が感じる上では他の2液性のコート剤より簡単だと思う。
ただし拭き取りに失敗したときのリカバリはかなり難しく、固まってしまった後はコンパウンドで削り取る以外に除去の方法がない。
この点他の硬化型コート剤は固まる速度が遅いのか?被膜が弱いのか分からないが、気づいてからでも修正できるものが多いのも事実である。


質問などを頂く事が多いのが重ね塗りに関してだ。
上でも少し触れたが硬化型コート剤の場合は基本的には重ね塗りが出来る。
重ね塗りをすれば被膜は厚くなりキズなどが目立たなくなる効果はあると思う。
非常に透明性の高い被膜であれば重ね塗りして艶が悪くなることはないと思うし、細かなキズなどが埋まるとすれば艶が良くなるかも知れない。
非硬化型の普通のワックスなどは重ね塗りするとその溶剤で下に塗ったワックスが剥がれると思う。
アルカリ洗剤やアルコールでワックスが落ちるのと同じだ。
イオンコートなどはどうなのかよく解らないが、フッ素系はそもそも表面がツルツルなので他の物質が付着しにくいかも知れない。
強靱なコート剤の上に普通のワックスなり何なりを塗って、メンテナンスを容易にする(ボディーを守るためにコート剤を塗り、コート剤を守るためにワックスを塗る)考え方もあるのだがどうなのだろうか。
結局塗り直し時には下地を出すところから始まるわけだし、度々メンテすることが好きならば最初からザイモールあたりを塗ればいいし、手間をかけたくないのなら重ね塗りしてそれのメンテなんかもしたくないだろうからイオンコートでも塗っておけばいい、なんて私は考えてしまう。


せっかく下地作りまで行ったのだからと言うことで、では何がお勧めかと言われると、これも困ってしまう。
お勧めがないから色々テストしているわけで、作業性や好みもあるだろうしコストパフォーマンスもある。
親水性が良いというのなら太陽ポリマーやブリス、ポリラックあたりはどうだろうか。
これもかなり艶が出る部類であり、持続性という点では太陽ポリマーが優れている。
撥水性重視だとグラスコートやザイモールなどが良いだろうか。
耐久性重視で艶は二の次ならイオンコートがお勧めだ。
他にF&Fでテストしたワックスも色々あるのだが、現在は存在しないものも多い。
逆に未だに売られているのもはそこそこ人気があることを示していると思われる。
なお現時点で(2009年4月)売られているもので、過去にテストしたことがあるのは以下の通りである。
クリスタックスコート  不明
激ツヤクリアー 発売中止
激防水 発売中
チタン防水 発売中止
シュアラスター 発売中
フッ素99 モデルチェンジ
イオンコート モデルチェンジ
イオンコートバリア 発売中止
ポリラック モデルチェンジ
ザイモール 発売中
スーパーイオンコート1 モデルチェンジ
防汚ポリマー 発売中止
太陽ポリマー 発売中
モデルチェンジは微妙なところがあり、売れた商品の名前を残した的な思いがしないでもない。
その中でイオンコートに関しては継続的に使ってきたのでモデルチェンジをくり返して拭き取り性が良くなり、耐久性が良くなってきたことは実感できた。
なお最近ではツヤを高めるための工夫をしたものなどもラインナップに加えられている。
フッ素99はフッ素コートと名を変えているがフッ素系コート剤の元祖だと思う。
イオンコートは発売開始当時はフッ素系ではなく、明らかに現在のそれとは違ったシロモノだった。
SOFT99はフッ素系コート剤や拭くだけでフッ素コートが可能という幾つかの製品を発売している。
撥水性とツヤという点では同社の艶王マニキュアコートが気になる存在ではある。
同社が最高級だというオーセンティックは紹介ビデオが面白い。
(拭くピカのCMもアレなんだけど) エアロを付けたワンボックス専用か?みたいな、一歩間違うとチバラギ仕様だなと思うような車が登場する事で、このワックスが実は安っぽいのだよと思わせているような感じだ。
確かに、紹介ビデオにフェラーリを出したところでワンボックスオーナは買ってくれないだろう。
というかワンボックスならツヤより耐久性でしょと言いたいのだが、まあ面白かったので紹介しておく。
太陽ポリマーは、同社のページに行ってみると随分品種が増えている。
有名?なパワーGFやピンクダイアモンドも同社の扱いなのか。
他に洗車用品やポリッシャまで扱いがある。
ピンクダイアモンドはシラン系のガラスコート剤で加水硬化型に分類される。
特筆すべきは膜厚で、太陽ポリマーが300nm〜500nm厚であるのに対して2μmという圧倒的厚さでコーティングできるという。
(※あくまでも計算値だとのこと)膜厚計があれば測ってみたいところだ。
300nmは安価な膜厚計では測れないが2μmあれば必ず測れる。


硬化型のコート剤、それは紫外線硬化型であったり加水硬化型であったりするのだが、これは一般的には丈夫な被膜が作れる。
逆に丈夫な被膜故に落とすのが大変だという話もあり、被膜自体が劣化した時にそれを簡単に落とせることも性能のウチだとする論があるのも事実だ。
溶剤型のワックスなどは溶剤を使えば簡単に落とせる。
通常の固形ワックスなどがそれで、アルカリ洗剤やアルコールを使うと意外に簡単に除去できる。
2液硬化型のコート剤は使い切りが基本なので余らせるのはもったいない。
逆に1液型であればある程度の保存には耐えてくれる。
それ以外の溶剤タイプであれば溶剤が蒸発してしまわない限りずっと使えるので経済的だ。
例えばイオンコートなど、年に2〜3回しか使わないのでいつ買ったか忘れるほど長持ちする。