- 2009年5月 1日 11:03
ソフトバンクの場合は決算発表会と言うより孫さんの演説会的なイメージが強く、その見方は一般企業のそれとは異なる。
従来にも書いたが孫さんが強調する部分に聞き入る必要はなく、孫さんがサラッと通り過ぎた部分を検証してみるべきなのだ。
例えば孫さんは「4期連続での最高益の更新」だとした。
これだけ聞くと決算内容は良かったと思うだろうが、実際には減収減益である。
FCFを売りにしているのも同じで、FCFが伸びているその背景には投資額の減少がある。
2008年度は当初予定していた投資額である2,765億円に達することなく、その分をFCFに回した格好だ。
2009年度はこれより更に低い投資額を予定しているから、そこから更にマイナスとなると1千億円台になる可能性もある。
これに対して孫さんのいつもの口癖の「3年分前倒しした」「エリア整備は終わった」「高額なのは鉄塔で中味は安い」が出た。
3年分前倒しはあくまでもSBM基準であり、何がどう前倒しされたのか説明されたことはない。
投資額を見ても、いつの時点の3年分であるのかは誰にも説明できないだろう。
仮に3年分の前倒しが行われたとしても、その3年分とは2008年度までではないのか。
つまり、その3年分の前倒しが終了した今年度には再び設備投資額が上昇するはずだが減少はしても増加の兆しは全くない。
この設備投資に関しては会場から質問も飛んだ。
総務省も旧vodafoneの老朽化した設備の信頼性には疑問を抱いている。
一つの理由はvodafoneの償却の終わりそうな設備の償却年数を変更して、価値なき物に価格を付けてしまったという会計上のテクニックがある。
孫さんとしては価値を持っているものがある以上、それを入れ替えようとは考えないはずだ。
しかし会計上の価値があるからと言って実使用上の価値があるわけではない。
例えば償却年数が(仮に)7年だからと言って、7年前のPCがベストパフォーマンスかと言えばそうではない。
7年前のPCにいくらメモリを増設しようとしても増設スロットの数やメモリ空間の問題でリミットが来る。
旧態化した設備がHSDPAに対応できず、ドコモの3年遅れのエリア展開にしかなっていないのはこのためだ。
通信の世界は未だ進歩をやめていない。
年々新しい技術が登場し、新しいデバイスが登場しており、それはPCやPC用CPUの進化よりも遥かに強烈なのである。
加入者が増加している以上設備増強は必須だ。
繁華街や駅のそば、住宅街でもつながらないことが増えてきている現状、無線帯域確保のために音声圧縮レートを上げざるを得ず低下した通話品質等々を改善するのが事業者の役目なのだ。
これを捨て、高トラフィック部分はEMに借りるという状態では先がない。
エリア整備に関しても、投資の話の部分では「エリア整備は終わった。カバー率も上がったのでエリアに問題はない」というものの一方では「800MHz帯がないから地方エリアが整備できずに地方での純増数が上がらない」と矛盾することを言っている。
この泣き言は接続料問題の時にもくり返されたが、もはや説明はしどろもどろで話を逸らすのが精一杯だった。
ARPUは底を打ったのか。
孫さんは底を打ったとしたが、これも独自の言葉の解釈によるものだろう。
実は私も2008年の2Q決算を見るに当たってはそろそろ底かなと思う面もあった。
それは音声ARPUの低下率が減少してきたからで、4Qで低下率がゼロになるか或いは増加に転じれば底を打ったと解釈できる。
しかし音声ARPUは低下率を加速させてしまったのだ。
vodafone買収以来のARPU降下率は4半期ごとに6%〜11%であった。
これが2008年前期に入って2%台にまで減少したのだ。
しかし4Qでは再12%台と、過去最高の減少率になってしまった。
これは底を打ったとは言わず、底を抜けた状態になる。
グラフはこれを表したもので、グラフの数値が高いほど(上に行くほど)ARPU降下率が上がっていることを示す。
これを見る限り決して底を打っていないどころかその反対なのに、これを底打ちというのだから悪質である。
では何故ここに来て音声ARPUが急降下をはじめたのか。
一つは光系への押し込みがあるだろう。
光系の倉庫で眠る数十万台とも言われる端末は基本料金分しか払われていない。
もうひとつはiPhoneだ。
孫さんはiPhone購入者のほとんどは他社ユーザだと言った。
これまでの例からも孫さんの言葉をそのまま信じるわけにはいかないが、もしも本当だと仮定すると8割か9割のiPhone購入者は他社ユーザと言うことになり、2台目需要であると想像すれば音声通話は対SBM意外には行わないだろう。
ADSLの時にも毎度毎度「V字回復」を、半ば呪文のように唱えていた。
しかし悲しいかな回復の兆しが見えたのは加入者増加率の減少によって設備投資額などが減ってきたという、まさに斜陽の時期だったのだ。
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