- 2012年4月 3日 13:05
CDIの話の前に、通常の誘導放電型イグニションシステムの復習をしてみよう。
誘導放電型はコイルに溜めたエネルギを使う。
コイルにどのくらいのエネルギが貯まるかは、コイルのインダクタンスと流す電流によって決まる。
そしてその限界値はコイルの磁気飽和が支配する。
コイルに貯まるエネルギ(ジュール)=イグニションコイルのインダクタンス×(コイルの飽和電流)2÷2
コイルのインダクタンスを増やすと蓄えられるエネルギが増える。
しかしそうするとチャージに時間がかかるし、コイル抵抗が増えるので電流が減少する。
インダクタンスを減らすとこの逆になるが、電流は2乗で効くので有効だ。
昔のポイント式点火装置だとドエル角が自由に設定出来なかったため、高回転時にも十分な電流を流そうとインダクタンスを設定すると低回転時にはコイルが飽和してしまって発熱や焼損の原因となった。
そこでコイルに直列に抵抗を入れて疑似定電流ドライブを行うなどの工夫もあった。
現在では使うコイルに合わせてドエル時間を設定しており、エンジン回転数によらず一定時間を確保している。
ポイント式の場合は流せる電流の問題もあったし、逆起電力許容度の問題もあった。
逆起電力の制限はコンデンサによって行われていたが、この容量を増やして逆起電力を吸収しようとすると二次電圧が低下する。
余談になるがR32/33GTRの頃のダイレクトイグニションでは、コイルのインダクタンスに対して高回転時のドエル角が少し不足していた。
これをECUの書き換えで増やす工夫がされたのだが、単に増やしただけではコイルが焼損するというトラブルにつながった。
コイルが飽和すると大電流が流れるので急激に発熱量が増える。
イグニションコイルを交換しての点火能力強化の試みがあるが、インダクタンスの大きなコイルにすると高回転時にドエル時間が不足する。
インダクタンスの小さなコイルにするとドエル時間過大でコイルの発熱につながる。
なおコイルのインダクタンスと直流抵抗は直接的には比例しない。
巻き線数が多くてインダクタンスが大きくても、太い線を巻けば直流抵抗は余り増大しない。
ドエル時間が適切かどうかは一次電流をオシロで観測する以外にない。
閉磁路にすると同じ巻き数でもインダクタンスが稼げる。
しかしそのままでは飽和磁束密度が小さい。
開磁路にすると飽和しにくくなるがインダクタンスが稼げず、インダクタンスを増やすには巻き数を増やす事になるので線抵抗が増える。
結局、インダクタンスを増やしながら低抵抗のコイルで電流を流すためには物理的に大きなコイルが必要となる。
シグナス用にしてもスカイウエイブ用にしても自動車用よりも放電時間が短い。
おそらくはインダクタンスを小さめにして必要なドエル時間の短縮を図っているのだろう。
ドエル時間を観測すると両者共にほぼ1mSだった。
単気筒エンジンだがクランク360度ごとに火が飛んでいる(本来は720度毎で良い)ので1万回転時には1回転が約6mSになる。
その半分をドエル時間に使えるとして、もう少しインダクタンスが多くても良いような気がする。
1KHz時に於ける開放状態でのインダクタンスはシグナス用が約2.2mHでスカイウエイブ用が約4.1mHだった。
シグナス用はブラケットで磁路を作るとインダクタンスは増大すると思われる。
イグニション系にはノイズ防止の抵抗が入っているが、スカイウエイブもシグナスもプラグキャップに抵抗が入っている。
スカイウエイブ用の抵抗値は約10kΩだ。
実測によるコイルの二次側抵抗値はシグナス用が10.7kΩ、スカイウエイブ用が13.3kΩだった。
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