- 2012年4月19日 12:03
プリウスは定速走行が苦手なのかという議論があるので考えてみる。
そもそもフツーの車でもエアコン負荷などによっては車軸への伝達トルクが変動して、場合によっては車速が変動する。
補器類の負荷のみではなく外的要因でも速度は変わる。
高速道路の坂道で渋滞が発生するのは、その場所で速度の低下が起きやすいからだ。
もちろん速度に気をつけていれば低下は防げる訳で、エアコンが入ったとしてもその分だけアクセルを踏み増せば駆動トルクは確保出来る。
だから「俺の車は坂道でも一定速で走れる」も正解だし「人間が気づかないくらいの坂道でも車速は落ちる」も正解だ。
運転に慣れた人はそうしたフィードバックが自然に出来るようになっている。
フツーの車はアクセルペダルを踏むとスロットルが開いて吸入空気量を増やす。
アクセルペダルはトルクを決めるものでも速度を決めるものでも回転数を決めるものではなく、スロットルバルブを開けるだけだ。
プリウスではどうかというと、アクセルペダルによってモータかエンジンか或いはその双方の出力を上げようとするはずだ。
まずはモータを回すがバッテリ容量に限りがあるのでエンジンを回して発電し、その電力を使ってモータを回す。
勿論エンジン自体も駆動軸にトルクを与える。
しかし発電機の仕事はモータを回すだけではなく、バッテリも充電しなければならない。
するとバッテリの残量によって充電量が変化するので(エンジン出力が同じだとしても)軸出力が変わる。
バッテリからの電力が使えれば99馬力よりも軸出力が上がり、バッテリをチャージ中の場合は軸出力が下がる。
この変動が上手く補償されれば駆動軸出力は一定化出来る。
しかし実際はそうでもないようなので、軸出力補償制御がなされていないか或いは制御が雑だと思う。
制御を行うためには発生トルクと使用トルクを算出する必要がある。
発生トルクは燃料噴射量(プリウスではマニホールド圧力から推定)とエンジン回転数からおおよその値は予想出来る。
内部での使用トルクは発電機の出力を見れば解る。
ちなみにドライバビリティを良化しようとすると燃費は悪化する。
ハンドリングやドライバビリティはそこそこで、燃費特化モデルだとすれば出力コントロールは人間の仕事だ。
以前の記事へのコメントで出力変動を具体的に感じた事は無いとも(お乗りの方が)書かれているので、そう目立った変動は無さそうだ。
エスティマハイブリッドでは定速走行出来るほどの空いた道を走れなかったのだが、通常走行時におかしな挙動を感じた事はない。
(勝手にエンジン回転数が上がる事はあった)
ただ同コメントで「但し60キロくらいでアップダウンが多いと反応が一瞬おくれたり加速がオーバーシュートしたりしますが、これはクルコンの問題でしょう。」とも書かれている。
実は同じような事を別の車で経験した事があり、その時の事を私は
『でも、オートドライブはひどかった。
オートドライブで走行中、長い上り坂にさしかかる。
当然車速は低下するから、オートドライブのアクチュエータはアクセルワイアを引っ張ってスロットルを開ける。
所が、ターボ化で圧縮率が下がり低速トルクの貧弱な12Aはスロットルを開けようとも加速しない。
オートドライブは、これでもか!って程スロットルを開ける。
負荷の高まったエンジンは、ターボチャージャに十分な排気ガスを供給し、一気にターボゾーンへ突入!!当然、のけぞるほどの加速を見せてオートドライブの設定速度をはるかにオーバする。
オートドライブは、「いけねっ」とスロットルを戻すからこのハンチングを繰り返すわけである。』
と書いた。
アクセルに対する反応の遅れがあるとオートドライブはハンチングするのだ。
これはネガティブフィードバックなのだから当たり前で、位相余裕度が少なくなれば発振する。
おそらく開発者はPID制御っぽい事を行うなどはしていると思うのだが、路面状況(=走行抵抗)の未来が予測出来ないのだから仕方がない。
レスポンスの悪いエンジンはオートドライブと相性が悪いのである。
ではオートドライブではなく人間が乗ったらどうかというと、人間は道路状況を機械よりも予測出来るので適宜右足をコントロールし、一定速を保ちやすい。
ただし上に書いたロータリーターボ車の場合はターボが効くか効かないかあたりのコントロール性は極めて悪かった。
ようするに、少し負荷がかかるとターボが効いてオーバスピードになり、アクセルを離すとターボが効かなくなって速度が落ちるのだ。
そしてそこにタイムラグがある。
これは初期の頃のセドリックターボも同様で、ギアを落とすとターボが効いてすぐに回転が上がる。
だからと言ってシフトアップすると過給域を外れるのでアクセルを踏もうが何をしようが回転数は低下し、結局は又シフトダウンするハメになる。
これの繰り返しなので山道などは非常に運転しにくかった。
こうしたリニアな領域から外れていたり、位相遅れが大きい場合は一定速を保つのが難しくなる。
そしてそれは車に慣れていない人ほど制御が難しいが、逆にそんな事を気にしなければ速度変動は車の勝手にさせるとなるだろう。
乗り慣れた人ならば無意識のうちに右足で速度を制御する。
車のみならずいかなるモノも完璧ではない。
「ロールスロイスは故障しない」伝説にしても、そう言う事なのだ。
だから技術は進歩する。
プリウスもやがてはコントローラブルな車になるかも知れないし、回生ブレーキ制御はかなり良くなって来たと思う。
それでも不自然さはぬぐえないのだが、まあコスト問題もある。
製造現場や設計を経験した事のある方ならばお解りの通り、エンジニアの思い通りにはなかなか行かない。
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