昆明(クンミン)に行く
■ 一日目
クンミン(昆明,コンメイ,Kunming)に行くことになった。
実は中国に行くのはこれがはじめてである。
香港に行ったときも、あれはまだイギリス領の時代だったっけ。
中国は広い。
目的地はクンミンなのだが、成田を朝発って到着するのは夕方だ。
以前は関西からの直行便があったらしいのだが、今は広州での乗り継ぎになる。
成田からANAのコードシェア便でまずは広州へ向かう。
機体は767-300なのだが、コイツは巡航速度が遅い。
機内のモニタによると750Km/hしか出ていない。
なので離陸から2時間を経過し、昼食が出される時間になっても福岡上空を飛んでいる。
高度は約1万メートル、気温は-47℃と、これもモニタに出ている。
実はこの文章は機内で書いているのだ。
ノロい飛行機があまりに暇なので。
でもまあ空いているから良いとしよう。
客室乗務員によれば定員の1/6以下しか乗っていないそうだ。
ここまで客が少ないと貸し切り状態である。
そもそもこの飛行機に乗るとき、バスで機の近くまで輸送?されたのだが、すべての客が1台のバスで運べる程度の人数でしかなかった。
いや、それにしても成田でバスに乗ったのは初めてじゃないかな。
あと3時間ほどすると広州に到着し、そこから国内線でクンミンに向かうことになる。
さて、入国書類でも書こうかな。
と、思ったら揺れはじめた。
場所は九州と中国(上海)の間あたり、東シナ海上空7,300mだ。
日本の上空を飛んでいる時より高度も速度も落ちている。
速度は650Km/hだ。
広州は沖縄よりずっと南、台湾よりも南、香港のすぐ近くにあるので、現地の気温は29℃と案内されている。
クンミンは広州より西北西に位置していて、標高が2000mほどあるそうで、気温は20℃位だそうだ。
少し眠ったりしているうちに高度が下がりはじめ、やがて着陸だ。
広州では国内線に乗り換えなのだが、乗り換え時間が1時間程度しかない。
普通なら余裕と感じる時間かも知れないが、何しろ検疫やイミグレが超混雑状態だ。
どうやら中国の人は整列という概念がないようで、一カ所の所にそれこそ扇状に人がたかっている。
我々はANAのはからいで前方に割り込んで時間を短縮して貰った。
国内線の手荷物検査もVIP用の入り口に割り込むという強引さ。
で、国内線の搭乗口についたら1時間の延発だそうだ…何か疲れてしまった。
何しろ広州の空港はやたら広い。
迷子にでもなったら大変である。
しかも暑い。
話によると数時間前に停電して冷房が止まったとか何とか。
空港にいる中国人は金持ち層だ。
クンミンまで行く場合、フツーの人は電車やバスを乗り継いで何日もかけて行くという。
国内線は小さな飛行機がほぼ満席、西へ飛んでいくので窓の外にはずっと夕日が見えている。
下界は雲の下なのだが、雲の切れ目などから見える山々の間には高速道路が建造されはじめている。
空港の近くなどでは至る所で道路工事が行われている。
まさに中国は高度成長のまっただ中なのだ。
現地時間16時20分にクンミンに到着。
ここの空港も広い滑走路が何本かある。
広州もクンミンも、町の中の空港だ。
日本だと沿岸沿いに空港を作るケースが多いが、広大な大陸の中の空港は町の上を飛びながら着陸する格好だ。
空港からホテルまでタクシーで行こうと乗り場に行くが、何しろ並ばない民族だから日本人はとてもではないがタクシーに乗れない。
我々が右のドアから乗り込もうとすると、中国人は左のドアから乗り込んで我々を押し出してしまう。
どうやらこれが普通なようだ。
仕方なく白タク?に乗る。
価格交渉は中国語の話せる方が行ってくれた。
車はアルファードか何か、そんな感じのワンボックスカーで、詳しい人によれば現地人が個人で持てる車ではないという。
おそらくは仕事で使っている会社の車を拝借して夜間にアルバイトでもしているのではないかと。
この車、静かなのは良いが剛性が不足していてドアパネルもフロアもワサワサ、ビリビリ揺れている。
道路は比較的広く信号機もあるが、信号を守るのは車だけ。
そして人は信号を無視するのが普通だ。
なので車の隙間を縫うようにして歩行者や自転車や単車が走り回っている。
単車など右側通行も左側通行も関係ない。
歩道をかまわず走るのは日本と同じだ。
良くこれで事故が起きないものだ。
台湾や韓国も相当ひどいマナーだが、中国はそれの何倍も上を行く。
19時30分頃ホテル到着。
やっと落ち着ける。
それに、ここはカードも使える。
宿泊料金は1泊700元、地元の人の半月分の給料くらいの価格なのだろうか。
部屋は広く綺麗だ。
中国ではクレジットカードが使えない場所が多い。
もっとも中国でカードなど使ったらスキミングなどが普通に行われそうで恐ろしいが。
ケータイは以前に購入したGSM機にFOMAカードを差して使う。
が、かけるときには+81からダイアルする必要がある。
ホテルではインターネットが利用可能だが、これが従量課金なのには泣ける。
高速を謳ってはいるが、POPアクセスがやたらに遅い。
ちなみに料金は30分ごとの課金で5.5元(約90円)と、あまり安くはない。
注:チェックアウト時には料金を請求されていなかった。
料金を表示しているのはつなぎっぱなし防止のため?!何しろそこそこの店で中華料理をたらふく食っても100元なのだから。
食事をした後店から出ると肌寒いほどだった。
ホテルまでの帰り道でペットボトルの清涼飲料水を買う。
コーラが3.5元、ちなみに空港では缶コーラが6元だった。
シャワーを浴びて寝る準備をしたところで日付が変わる。
TVはNHKの(たぶん)中国向け放送が映っている。
時間的な遅れがある旨が表示されているので、おそらく正規の放送だと思う。
■ 二日目
今日は一日会議だったのであまり書くことがない。
昼間のクンミンの町は意外に綺麗だ。
なぜか屋根の上には太陽熱温水器のようなものが並んでいる。
ホテルの陰になっていて太陽光など当たるのかなと思われるような屋根にも温水器が乗っている。
エネルギ問題解決のための国策なのだろうか。
ちなみに太陽熱温水器の価格は日本円で2万円程度だそうだ。
この程度の価格なら燃料費より安いのかも。
現地人によれば高地で紫外線が強いから温水器が効率よく働くと言うが、どうもこの理論には誤りがある感じがする。
雨が続いたりすると風呂に入らない人が増えると言うから、風呂は太陽熱温水器任せなのかも。
そういえば日本でも太陽熱温水器が流行った?時代があったようだ。
私が子供の頃、うちにも太陽熱温水器が屋根(風呂場という名の小屋の屋根)に乗っていたような記憶がある。
■ 三日目
今日は石林まで行ってきた。
クンミンから車で高速道路を通って1.5時間ほどかかる。
ホテルから高速道路の入り口までの市内は結構混雑している。
交差点など、直進優先などというルールはなく、交差点に先に突入した方が優先だ。
なので直進車が待たされることも多く、待っている間に歩行者が歩いてきて車が通れなくなることも。
とにかく早い者勝ち、それがルールなのだ。
石林は季節柄観光客は少ないと言うが、それでも結構な人だ。
この民族衣装は、借りることが出来て、それを着て写真を撮って貰うような感じ。
観光客の多くは中国人で、欧米人がほんの少し混ざっている感じ。
石には何か文字が書かれている。
中国っぽいといえばそうなのだが…
展望台があって、ここも人だらけ。
400年ほど前の地震で岩がだいぶ崩れたらしい。
至る所にひび割れとかがあって、地震が来たらきっとまた崩れる。
観光通路にはゴミ箱などがおいてあるが、置いてあるだけであまり意味はなしていない。
観光客は勝手気ままに吸い殻を捨て、ゴミを捨てる。
それでも綺麗に保たれているのは、ディズニーランド並みの清掃員が活躍しているからだ。
このあたりは昔(大昔)は海だったそうで、海の中にあった石が今は山の上にある感じ。
日本人と見ると物売りがうるさく近づいてくるのは、東南アジアの観光地そのものだ。
土産屋(お茶を売っている)に寄ると店員が日本語で説明をはじめる。
少数民族の衣装を身にまとっているが、写真一番右の人は日本人で、アダチさん(笑)
やたら綺麗な日本語を話す人だなぁと思ったら、自分は日本人ですと言っていた。
そこに中国人が文句を言う。
「なぜ日本語で説明するんだ!」と。
店員も困り気味だが仕方がない。
とにかく自分中心の民族だから、説明員は日本語と中国語で説明をする。
その後で博物館に寄った。
ここでも日本語で説明してくれる人がいたが、土産屋同様同行の中国人たちが文句を言い始める。
この説明員、実は博物館の場所を借りて石を加工したもの(精細な石細工)を売っている人のようだ。
彼らにしてみれば、金を持っている日本人こそ良い客な訳で、出来れば現地人は無視したかったのだろう。
そもそも展示品の説明は中国語でされているのだから、それを読めば良さそうな気がするんだけどなぁ。実際石細工などに興味を示して価格交渉したり買ったりしていたのは日本人だけだったしなぁ。だからといって中国が貧困かと言えばそうでもない。
携帯電話を持っている人は意外に多いし、町には車が溢れている。
でも馬車も走っている。
日本車を見かけることも多いが人気はドイツ車なのだそうだ。
日本で生産された日本車は良いが、現地生産の日本車、特にホンダ車は駄目なのだとか。
日本では見かけることの少なくなった新型パジェロも走っている。
さすが安全性無視の三菱、しっかりカンガルーバーが装着されている。
トヨタのSUVにもカンガルーバーは付いている車もあるが、装着率は5割程度だろうか。
ちなみに三菱車は人気急降下だそうで、会社に問題があると現地の人は言っていた。
もしかして中国でも何か問題を超したのだろうか。
それとも日本でのリコール隠しが伝わったのか。
高速道路はまだ良いとしても、まだまだ舗装面の荒れた道路の多い地方なので、剛性の無い日本車は乗り心地的に厳しいだろうな。
価格で行けば韓国車、品質で行けばドイツ車、確かに日本車は故障は少ないが中途半端な印象は否めないのだそうで、社用車としての需要はあるものの、パーソナルカーのイメージは薄いとの事だ。
もう一つはブランドイメージで、ドイツ車が以前から中国市場に浸透していたのに対し、日本車はまだ歴史が浅いのだとか。
ちなみにドイツ車で一番多いのがVWで次がアウディかな。
町中を見た感じでは。
タクシーなどは小型のシトロエンなんて言う、珍しい車も使われていた。
自転車も単車もたくさん走っている。
原付に相当するような単車に乗る人はヘルメットをかぶっていない。
ナンバーも他の自動車などとは違う、数字が書かれたプレートみたいなものが付いているにすぎないし、それすら付いていない単車も走っている。
電動自転車(アシスト自転車ではなく、電気で走っている)も多い。
話を戻そう。
博物館で恐竜の骨などを見た後、夕食となる。
今日はなにやらショーを行っている所での夕食なのだが、そこで何か強い酒(紹興酒ではないようだが)を勧められて一口飲んだら酔った。
で、食事はほとんど食べられなくなってしまった。
ショーが終わると中国人たちが舞台に上っていって写真を撮りまくる。
もちろん彼らがチップなど払うはずはない。
でも、それでは舞台を終えることが出来ないので、部屋の外に写真用?の女性が並んでいたりするが、ここにも中国人が群がる。
順番待ちなど当然しないから、この踊り子さんと一緒に写ろうと大変な騒ぎ。
で、結局関係ない人も一緒に写ってしまうわけだが、彼らはそれを気にしないようだ。
明日は帰国の日だ。
飛行機の乗り継ぎが少し悪いこともあり、ホテルを8時頃出て成田には20時過ぎに着く予定だ。
■ 四日目
帰国の日である。
町が混む前にと空港に向かう。
クンミンの空港は時間が早いためかまだ人が少ないが、空港のチェックは時間がかかるので早めに搭乗口に向かうことにする。
セキュリティチェックの所にはすでに列が出来ているが、その列を無視して割り込むのもまた中国人の習性である。
とにかく自分が良ければ他人のことは気にしない。
常の自分優先の世界なのだ。
外国人は列を作り、割り込まれても黙認し、なのでいっこうに進まない。
無事にゲートを抜けて飛行機に乗り込むが、機内でも中国人は携帯電話いじりや携帯電話での会話に余念がない。
航空機がタキシングをはじめるまで大声で会話をし、飛び立つまでメールなどをしている。
着陸と同時に携帯電話の電源を入れ、シートベルト着用のサインが消える頃には着信音が鳴っている。
ま、そんな中若い日本人ビジネスマンがPSPの電源を切れと注意されていたけど。
ちなみにこの人、着陸前にもPSPをいじっていて注意されていた。
国籍は日本人らしいが、行動は中国人になっている。
2時間ほどの飛行で広州国際空港に到着する。
現地の気温は32℃だそうだ。
空港は広くて暑くて、検疫のチェックと税関のチェックと、出国手続きにそれぞれ用紙を書かされ、セキュリティゲートでは金属製品を身につけていないにもかかわらずブザーが鳴ってボディーチェックを受けた。
この空港、移動とゲートインに1〜1.5時間は必要で、航空会社の注意書きにも「時間がかかるので遅れるな」みたいな事が書いてあった。
今回は乗り継ぎ時間があるので空港で飯を食う。
うどん(日本語で書いてあった)と称する、塩味ラーメンのつゆにうどんを入れたような食べ物が78元と、とびきり高価だったのは空港価格と言うことだろう。
何しろペットボトル入りのスプライトが15元もするのだ。
町中で買えば3.5元なのに。
免税店とか土産物屋もあるが、土産物屋に並んでいるのは石の彫刻品や翡翠など。
あとは民芸品っぽいものとか現地のジャンクフードなどだ。
日本人向けに日本語表示されている店も多く、5分で彫れると書かれたハンコ屋もあった。
見ると若いニーちゃんが彫っているようだ。
ま、漢字の世界だから年季は関係ないのかな。
このハンコ屋、日本人のおばさん連中が群がっていた。
14時50分頃に搭乗開始。
搭乗率は50%ほどで、来るときに比較すれば混んでいるが、でも後ろの方はガラガラである。
定刻15:10なのだが滑走路上でだいぶ待たされ、離陸したのは15:30過ぎだったと思う。
東行きはジェット気流に乗って速度も上がり、機内のモニタで見ると960Km/h〜1109Km/h程度、高度1.1万メートルとなっている。
広州から成田まで3.5時間の予定と言うことで、成田→広州より1時間ほど早く着く。
機内で飲み物サービスが始まる頃まで居眠りしていて、渇いた喉をトマトジュースで潤し、機内食となった。
和食は穴子ご飯…ま、こんなものかな。
コンビニの日本そばみたいな、カップに入ったそばの方がうまかったりして。
この部分は機内で書いている。
前方に座ったご老人?がアテンダントを捕まえて世間話に花を咲かせている。
ま、アテンダントのオネーさん、仕事はいえご苦労様な事です。
何せ老人の話は長いから。
日本の航空会社の教育は行き届いていると思う。
中国の国内線などひどいものだ。
通路を挟んで反対側に座っている人が通路に足を出していた。
そこに飲み物サービス用のワゴンがゴンとぶつかった。
でもアテンダントはそのまま行ってしまった。
足を出しているのが悪いのだとでも言いたかったのだろうか。
ぶつけられた人は靴下を脱いで傷の具合をチェック。
ちょっとすりむけたように見えたが、痛かったのだろうな。
おそらく日本のいや、中国以外の航空会社で同じようなことが起きたら大変な騒ぎ?になると思う。
VC