放熱(7/7)
◆ この時期WiFi利用でも過熱制御の入ってしまうN-07Dなのだが、何故こんな設計になってしまったのか。
NECによれば薄型モデルの場合は電池下に基板を伸ばす事が(厚み的に)出来ないのでバッテリを放熱器として使う事が難しいのだそうだ。それでもN-07Dは基板の両面にグラファイト放熱シートを挟んでいるという。
グラファイトシートは箔の厚み方向で見ると金属と同等かそれ以上の熱抵抗の低さを示すものの、薄いものなので厚み以外の方向に対する熱抵抗は大きい。
勿論金属にしても、箔でどの程度の熱抵抗になるのかは分からないのだが、N-07Dは当初の想定質量値よりも製品の質量が軽くなっている。
◆ 金属を使った放熱設計からグラファイトにしたとか、何らかの変更があったのだろう。金属板の場合は場所にもよるがアンテナとの結合問題も出てくる。スマートフォン内にはいくつものアンテナが実装されているので、金属部品を嫌がる場合もある。
現行モデルではヒートパイプを使った放熱を行っているそうだが、そのヒートパイプもかなり無理矢理的な形状なので熱抵抗が増えているのではないだろうか。
◆ CPUの高速化などは発熱を増大させ、従来型ケータイの時にも「このままのペースで処理能力を上げて行くと、やがてはクーリングファンが必要になる」とまで言われた。従来型ケータイに比較すると表面積を稼ぎやすいスマートフォンではあるが、熱設計がうまく出来ないとN-07Dのようなシロモノが出来てしまう。
それでも冬場は余り不満無く使えていたので、気温の影響は大きいなと思う。
◆ 放熱と言えばPC用のCPUにも巨大なヒートシンクが付けられている。こちらもヒートパイプを複数本使ったタイプなどで熱抵抗の低さを売り物にする。CPU用のみではなくグラフィックカードだって温まる。微細配線化で小さくなったLSIはその密度から、小さな面積でものすごく多くの熱を発生する。放熱させずに使っていればやがて動作しなくなり、下手をすれば永久破壊につながる。
◆ CPU内部にはおそらく温度検知とそれに対する保護動作を行う回路が入っているとは思うのだが、それが無い時代のCPUは熱で壊れる事があった。CMOSデバイスは温度を下げて電圧を上げれば高速動作が可能になる。逆に言うと温度が上がると遅延が増大して高速動作出来なくなると言う事だ。なので冷却が必要になるのだがパッシブ冷却器では室温以下に温度を下げる事が出来ない。一時期メーカ製でも水冷パソコンなどがあったが、それは冷却器熱容量の増大や静音化に貢献はしても絶対温度が下がってくれる訳ではない。
◆ ノートPCなどでも膝の上に乗せて使うのが躊躇われるほどの温度になるものもある。そしてそれが電池で動いているのだから電池の方だって温まったりする。それでも各パーツの低消費電力化でバッテリ持続時間が長くなったが、携帯電話系などに比較すると低消費電力設計の細かさがかなり違う。スマートフォンではまだまだやりようがあると思うのだが、従来型ケータイでは待ち受け時間のカタログ値競争?の為にあらゆる事を行っていた。電源をスイッチするための半導体のリーク電流すらも気にするのはその為で、待ち受け時間はマイクロアンペアの積み重ねなのだ。だから不在着信LEDなど付けたくないわけで、これの消費電流だって決して馬鹿には出来ないのである。
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