扇風機(8/1)
◆ 節電と言う事で扇風機市場が賑わう。一時期ほどではないにしても売れ行きは悪くないそうで、高価格帯扇風機市場ではダイソンが3割ものシェアを持っているそうだ。ダイソンのエアマルチプライアは底部に設置された送風機からエアを吹き出す仕組みだ。ダイソンによればDCモータとなっているが、ブラシレス同期モータか何かではないだろうか。
DCモータ採用のメリットは回転数制御の容易さと、低回転時の消費電力の少なさにあるという。通常の誘導電動機では回転数制御というかトルク制御が粗くなりやすいのだが、DCモータであれば制御は自由だ。もっとも誘導電動機にしたって制御回路さえちゃんと作れば回転数制御は出来る。
◆ 風量と消費電力から見る効率はDCモータ採用扇風機が有利だ。同一風量で消費電力には2倍近い差があるという実験データもある。特に低風量の場合の差が大きく、誘導電動機の扇風機では風量に関わらず消費電力はさほど変わらない。しかしDCブラシレスモータ採用のものは風量と消費電力が比例する。ただし力率は悪いものが多いと言う事で電流自体はそこそこ流れる。このあたりもスイッチング電源同様に今後改善されるのだろう。
消費電力的にはお得なのだがイニシャルコストは高い。国内メーカ品でもDCモータ採用モデルは数万円以上の価格になる。どちらがお得なのかは使用時間によるとも思うのだが、季節商品ながら代替サイクルの長い商品だけにDCモータモデルでも元が取れる可能性はある。使い方は使う人次第なのだが価格面だけで見れば10年使えばお得になると試算されているデータがあった。
◆ 高価格商品故の高機能も付加価値とされる。低風量時の制御が細かくできる事を利用したお休みモードとか、温度や湿度を監視するとか、バッテリ内蔵でコードレス運転も可能にしたモデルもある。バッテリに関しては寿命と重さの問題があるので万人が必要としているかどうかは分からないが、暑い時に扇風機の側に行くのではなく扇風機を自由に持ってきて涼むという使い方は便利に出来るだろう。
DCモータ採用扇風機の多くは送風ファン用のモータと首振り用のモータを別に持っている。ファンを低速回転させるにあたって、首振り用と共用する事は発生トルクや首振り速度の問題などがあるからだ。
◆ 扇風機にもよるとは思うのだがファン用のモータは多極のブラシレスで、首振り用は固定速度のいわゆるPC用のファンと同じようなものが多い。単にDC電圧を加えれば回転するタイプで、発生トルクはDC電圧で変化させる事が出来る。
ファン用のモータは印可電圧は一定で、磁極制御のパルス幅で回転数を変化させる。理屈からすると低回転でもトルクは落ちない。このあたりが回転数の細かな制御を可能としている訳だ。
じゃあ誘導電動機を位相制御したらどうなるのだろうかと思ったりする。ノイズの面で嫌われ者のサイリスタだが、回転数可変型の電動ドリルなどには使われていたはず。今はもう少し?高級な制御になっているのかも知れなくて、それこそ回転数とトルクを別制御出来るような感じで。
◆ 誘導電動機は構造が簡単で寿命が長い事から換気扇などにも使われている。モータで壊れる部分と言えば軸受け位なもので、巻き線や回転子その他の寿命は長い。レンジフードの送風機なども設計寿命で10年程度が保証されている事から、実際の使用では更に長寿命となるのだろう。稼働時間の長い風呂やトイレの誘導電動機も同期DCモータにすれば効率が改善される余地はある。レンジフード送風機にも強弱切り替えの付いているものがあるが、扇風機の例で見る限り弱にしても風量が落ちる割に消費電力は下がらない。
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