CA(6/9)
◆ 昨日の話の続きである。バンド内全てを受信する、そのバンドが不連続の場合でもつじつまが合うようにするのがCAだ。まあ簡単に書いてしまうと簡単なのだが、実際には伝搬特性の異なる周波数域で安定的な通信を維持するためには色々な制御が必要になる。これは制御の問題であり、MIMOのような演算や推定の問題ではない。なので仕組み的にはCAの方が簡単で、なので周波数利用効率が上がるわけではない。
◆ 周波数帯域を広く取って伝送速度を上げるのは、それだけ広い周波数帯をいっぺんに受信出来る無線機があるという事で、これは消費電力を増大させる。CAも同じようなもので、複数無線機によって離れた周波数帯をいっぺんに受信する事になるので消費電力は増大する。伝搬特性の異なるバンドを同時に使うと言う事は、エリアの穴を無くする効果もある。マクロセルの中にマイクロセルを置くようなものだが、それぞれが異なる周波数帯なので混信や干渉の点で少し有利になる。少しというのは、それぞれのバンド内での混信や干渉は起きるものだからだが、その混信や干渉が同時に起きる可能性の低いところがメリットになる。
◆ R12では移動機側での干渉除去が仕様化される。これまでも基地局側では干渉除去が行われていて、それは(基地局は)干渉元も干渉先も全て管理が出来ているから可能になったのだ。
干渉があれば干渉している局の制御を変えさせる事も出来たし、干渉元の信号のレプリカを作って位相を180度変えて合成してキャンセルする事も出来る。しかし移動機側は他局の状態が分からないので干渉除去が難しかった。しかしマイクロセル化なども含めて干渉だらけになった今、移動機側にも干渉除去の仕組みが求められるようになった。
◆ 考え方としてMIMOが出来るのだから干渉除去も出来る話でもある。元々MIMOは同一周波数で異なる信号を送るものであり、MIMO自体が混信源みたいなものなのだ。たとえが適切かどうかは分からないが二人並んだAさんとBさんの話す事を、右耳と左耳で聞いて双方の言う事を理解するようなもの。オーディオで言うと右スピーカの音が左耳に入らないように、というか左耳に入った右スピーカの音の干渉除去を行うサラウンドのようなものだと言えばいいだろうか。
◆ MIMOでも双方の信号に違いがあるから分離が出来るのであって、なので双方の信号をそれぞれ受信するためにアンテナが2組必要(2×2MIMO)だ。CAとなるとこれがまた2組要るので大変だし、MIMO演算だってバンドごとに行わなければならないのでその分の消費電力も必要になる。
そのうち2バンドではなく3バンドとかそれ以上のCAが行われるのかも知れない。FDD/TDD間のCAも規格化されるので、例えばauにしてみれば850MHz,1.5GHz,2.1GHzのFDDと2.5GHz帯のTDDもまとめてCAで○○○Mbpsとかも、理屈の上では可能になる。
◆ SBMも1.5GHz帯を割り当てられているのだがiPhoneが対応していない事もあってLTE化は行われていない。なのでEMの1.7GHz帯を使っているわけだ。Androidスマートフォンが売れれば1.5GHz帯も有効活用出来ると思うのだが、残念ながらiPhoneしか売れていないしAndroidのラインナップも貧弱なものでしかない。
このように割り当てられてはいるがあまり使われていないバンドが各社にはある。ドコモにしても1.5GHz帯や1.7GHz帯は整備途上(免許の関係もあり)であり、さらなるマイクロセル化などが必要なバンドだ。ドコモは800MHz帯も都市部ではあまり使われておらず、それを整備すればLTEエリアの穴もかなり塞げるはずだ。近年エリア設計やエリア調査が増えているのはドコモやKDDIがLTEエリアの整備に力を入れ始めた事にもよる。
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