安定化電源(4)(12/22)
◆ トラッキング電源がある。これはマルチ電圧電源のその電圧設定がツマミ一つで連動して可変出来るような仕組みを持ったものだ。現在では多電源を使う機器自体が少なくなってはいるが、オペアンプの±15Vとアナログ系の12V,ロジックの5Vなどを全体的に5%電圧を下げるとか、そんな感じの使い方だ。単純なものだと+側と-側を同時に調整するもので、±12Vにしたり±13Vにしたりが一つのツマミ操作で出来る。
◆ 数チャネル以上のマルチ出力電源は多くの場合は製造や検査ライン向けみたいな位置づけだ。実験用としては2出力とか3出力電源がある。
マルチ出力電源でもそれぞれの出力電圧と電流が表示されるものは良いのだが、表示が切り替え式になっているものは使い勝手が良くない。
◆ 例えば5V系の電源に関してのテストをしているのに、電流計表示が15V系のものになっていたとする。これに気づかずに回路をいじる→おかしいな、電流が流れないな→更に電流を増やす方向にいじる→電流計の指示はいっこうに増えない→やがてエポキシの焼けるような臭いが…→あっ!電流計のボタンが15V の所になっている!みたいな。
そんな馬鹿が居るのか?注意力散漫なだけだろうと言われるかも知れないが、私がそのバカなのだ。
◆ 電源の話などを書いていると(他の機器などの話の時も同じなのだが)どんな電源を選べばいいのかと聞かれる事がある。最高電圧は15V以上が良くて電流は2Aもあれば足りるんですけど、と言う感じで。予算が許すならば好きなものを買えばいいわけだが3千円前後で手に入れたいとすると微妙になる。
◆ 実験用電源としては中華製の新品かKENWOOD,キクスイや高砂の中古か、性能は中華実験用電源以下になるがアルインコの無線機用電源かだ。実験などに使うのであれば0Vから可変出来るものが望ましいのでアルインコは除外しておこう。性能的にも実験用途に耐えうるものでは無い。KENWOODは新品時価格が安いのでリーズナブルな価格で中古が見つかるが、仕様は同じでも実測値はキクスイの方が上だ。そのキクスイはKENWOODよりも高いのだがこれも中古が多い。高砂は少し電流容量の大きなものだとか電圧が高いものに強い。
メトロニクスの古いものはバッテリを充電していて安定化電源の電源スイッチを切ると、バッテリ側から電流が流れ込んで壊れてしまうものもある。
◆ アジレントも電源は作っているが60W級でも以外と大きいので邪魔な感じがする。ウチにあるのはE3615Aなのだがキクスイの同容量の電源の2倍は体積がある。これは低雑音電源の位置づけだが実測値は国産電源の方が良好だ。もしかしたら電解コンデンサが傷んでいるのかも。
また国産電源は右のターミナルがプラスなのに対してアジレントの電源は左がプラスなので間違いやすい。
アジレントの得意なのは生産ラインなどで使うプログラマブルのモジュール電源で、これはスイッチング方式である。
◆ アナログ系をいじる方だと±出力が欲しいかも知れないのでそんなモデルを選んでおくと良い。
私が自分で使っている場面ではマルチ出力電源の出番は滅多にない。複数電圧を複数電源で供給することはあるのだが、最近の機器の多くは単電源動作する事もあって複数電圧や高電圧が必要になる場面が少ないのだ。
◆ と言うことでKENWOODかキクスイの18V/2Aタイプを選べば「最高電圧は15V以上が良くて電流は2Aもあれば足りるんです」を満たす。キクスイのPMCはサフィックスにAが付かないタイプはディジタル表示が電圧か電流の切り替えなので使いにくい。これは現行モデルだが中古価格もこなれている。
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