53131A(2)(2/18)
◆ レシプロカル方式に関してである。レシプロカル方式は測定周波数の周期を測って逆数を取る。1Hzを測定する場合、周波数測定モードだと一定時間ゲートを開けて入力信号すなわち1Hzのパルスが何個入ってくるかを数える。なので10秒ゲートとしても10カウントにしかならない。
◆ レシプロカル方式では入力パルスの中にカウンタの基準発振器のパルスが何個入るかを数える。基準発振器が10MHzだとすれば1Hzのパルスの中には10000000個の基準発振器パルスが入ってくるので短時間で精度良く測定する事が出来る。この場合は測定周波数の周期を測っている事になるので、内部で1/xして周波数表示としている。
◆ 1Hzを測る場合に基準発振器が1MHzであれば1ppmまで、10MHzであれば0.1ppmまで測定出来る。つまり基準発振器の周波数を上げれば上げるほど測定精度が上がる事になる。
53131Aは500ps分解能があるので基準発振器の周波数は200MHzという事になる。基準発振器そのものは10MHzなので内部で周波数を上げている訳だ。
◆ 回路図を見てみると位相検波器とVCOの入ったデバイス(74HCT7046)がある。VCOの出力をそのまま位相検波器に入れるモードではVCO出力が10MHzとなり、VCO出力を1/2にするモードでは2倍、同じく1/10にするモードでは10倍の周波数になる。
基準発振器が10MHzだとすれば、設定出来るのは10MHz,20MHz,100MHzの3種類だ。
◆ だが、位相比較器への入力信号は外部基準クロック入力端子から接続されている。と言う事は、このVCOはレシプロカルカウントのためではなく外部基準クロックの周波数変換用なのか。
そう思って仕様を見直してみると外部からの基準クロック入力は10MHzの他に1MHzと5MHzも可能となっている。
通常のVCOにしては発振周波数範囲が広いなぁと思ったのだが、なるほど。
◆ 53131Aの1台目は外部クロックを入れると基準クロック出力にジッタがあった事は以前に書いた。
もしかするとこのVCO回りに異常があったのかも知れない。VCOのループフィルタ回りには定数変更の形跡が回路図に記されているので、調整された可能性がある。
◆ ではどこで基準クロック周波数を上げているのだろうか。基準発振器の出力はLGC CELL ARRAYに入っている。このLSIの中のVCOを使っているのか。クロックコントロール用のVCOはデバイスに内蔵されるのが普通で、CPUなどでも同様だ。
ちなみに53131Aに使われているCPUはMC68331である。
◆ と言う訳で基準クロック逓倍の仕組みは分からなかった。53131Aは汎用デバイスも多く使われているが主要部分はセルベースと思われるLSIになっている。
回路図があるのでディスクリート部分の故障ならばチェックは出来るが、LSI系の不良だとどうにもならない。
◆ 以前に電源不良の個体があった。ファンが回っていなかったので過熱で壊れたのかも知れない。電源ユニットは既製品のようで回路図が見つからなかった。症状としては+5V系の電圧が落ちていて、それは調整の範囲を超えていた。別の電源を接続すると動作したので故障部位は電源だけだと思う。
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