スペアナ(5/23)
◆ 以前にRF Explorerと言う名のバンドスコープ的なものの事を書いた。スペアナと呼ぶには余りにアレなシロモノなのだが。これの用途の一つとしてラジコンなどの混信状況の検討があるのだとか。今や多くのラジコンがISM帯域を使っていると思われるのでスマートフォンのWi-Fi Analyzerなどで見る事も出来るとは思うのだが、それ以外の周波数帯やWi-Fi非準拠の電波形式の場合は見る事が出来ない。
◆ そこで簡易的バンドスコープを用意して帯域の空き具合を確認し、自分の使うチャネルを設定するというわけだ。ただRF Explorerは内部スプリアスがあるようで、慣れるまではそれが外来電波なのか内部スプリアスなのかが分からないのだとか。
ダイレクトコンバージョン受信機なら内部スプリアスは出にくいのだが、ロジック部のクロックやその高調波が見えてしまうのかも。
◆ この簡易型バンドスコープにしても、以前に書いたNEC製の簡易スペアナ的ものにしてもIIP3のレベルなどは記載されていない。なので強信号を入力した時に内部スプリアスがどの位出てくるのかも分からない。
◆ IIP3とは3次の入力換算インターセプトポイントである。A,B2つの信号を非線形回路に入れるとA+(|A-B|)とB-(|A-B|)の信号が出てくる。入力を増やすとA,B信号はその増やした分だけ増えるわけだが3次歪みの方は増やした3倍の増え方をする。なので、やがて3次歪みがA,B信号を追い越してしまう。その追い越そうとして同レベルになったポイントがIP3だ。
◆ 実際には追い越すと言う事はあり得なくて、それは非線形回路が飽和するためにA,B信号自体が大きくなれなくなるからだ。A,B信号が大きくならないので3次歪みも大きくならない。つまりIP3はあくまでも仮想の点であって、A,B信号も3次歪み信号もその点に到達する事はない。
◆ 既知の信号を観測するネットワークアナライザなどと違って未知の信号を観測するスペアナでは、どの程度の信号入力時にどの位のダイナミックレンジが取れるのかは非常に重要だ。
例えばオシロスコープで波形を見たら歪んでいたとする。通常オシロでは管面に表示される範囲でオシロ自体が歪みを発生する事はないが、もしもオシロ自体が歪んでいたとしたら困る。
観測波形は正弦波なのにこのオシロで見ると矩形波なんだよね、みたいな。
◆ 昔のスペアナはRFゲイン(ATT)とIFゲインを別々に設定したのでエンジニアは常にスペアナのダイナミックレンジを意識する必要があった。しかし現在のスペアナはレベルを設定すると最大のダイナミックレンジが得られるように内部のゲイン構成を決めてくれるので使う側は余り頭を使わなくて良くなった。
◆ スペアナは観測している周波数だけではなく、測定可能な全周波数帯を受信している。100MHz周辺を観測しているのだけれど、実は300MHzにとても大きな信号があったとすればその信号によって内部のミキサは飽和しているかも知れない。通常の選択型受信機の場合は高周波増幅段にもフィルタや同調回路が入っているが、スペアナには何も付いていない。なので非観測周波数がスペアナの最大入力レベルをオーバしていないかにも気をつける必要がある。
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