トランジスタ(5/16)
◆ 日本初のトランジスタラジオは昭和30年代に現SONYから発売された。当時の社名は東京通信工業である。
◆ 当時のトランジスタは周波数特性などの点で真空管に及ばなかった。低い電圧で動作し低消費電力ではあるが遅いデバイスだったのだ。
◆ これはC-MOSデバイスも同じ事だった。低消費電力ではあったが数MHzでしか動作しなかった。当時はバイポーラトランジスタで組むロジックICが数十MHzで動作していた。
◆ 今や全盛となったCMOS撮像素子にしても出始めは酷いものだった。
そのCMOSも今やGHz帯で動作する。現在生産されているロジックデバイスの殆どがCMOS構造なのだ。
◆ トランジスタにしても同じで、まさに日進月歩で特性を向上させた。
デバイスの価格が下がり高速動作が可能になった。
トランジスタは"石"と呼ばれ、それは真空管の球に対する事だったのかも知れないし固体という意味やゲルマニウム鉱石に由来したのかも知れない。
◆ 昭和30年代に発売されたSONYのトランジスタラジオは5石、つまり5個のトランジスタが使われた。
回路構成は高一中二(死語)つまり高周波増幅が1段と中間周波増幅2段だったかな。これで3つのトランジスタを使ったあとにダイオードで検波し、2段の低周波増幅回路を歴てスピーカをドライブしている。周波数構成は不明なのだがIF周波数は455KHzよりも低かったかも知れない。
◆ スーパヘテロダイン構成を採るのは選択度の問題がある。周波数が低いほどLC共振回路の帯域幅を狭くしやすい為だ。高い周波数(といってもAMラジオのバンドだが)のまま増幅するよりも、中間周波数に落とした方が増幅も楽だ。
◆ 当時は局発の安定性などを上げるのに苦労したような話がある。たかだか1MHzの発振回路にも苦労するような特性のトランジスタだったのだ。増幅回路は段数を増やせば(ノイズは増えるが)ゲインは稼げる。しかし発振回路は段数云々の話ではない。
◆ その後トランジスタ数を増やして感度を上げたり低周波出力を大きくしたりする方向に設計が進む事になる。5石ラジオよりも8石ラジオの方が高級なのだ的な広告もあながち間違いではない。
◆ 日本初のトランジスタラジオTR55は100円の電池代で100時間聞けると謳われた。ちなみに米国(TI)で作られたトランジスタラジオは22.5Vの積層電池を使いながらも1時間程度の連続動作時間でしかなく、やがて発売が中止された。
当時の価格で約$50(18,000円)だった。
◆ SONYの作ったトランジスタラジオは単三電池4本で動作した。低周波出力は10mWを確保し、価格は18,900円だった。なお当時の大卒初任給が1万円程度とされるので現在で言えば30万円以上だったのかも知れないがヒット商品となる。
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