乾電池式携帯電話充電器を比較する


乾電池式の携帯電話充電器、最近のものはどれもスイッチング電源方式の昇圧レギュレータ式になっている。
その昔?の、電池式充電器出始めの頃は単三電池を3本直列にしただけ(公称4.5V)とか、9Vの電池をシリーズレギュレータで5Vに落としたものなどが多かった。
単三電池3本のものはギリギリ充電できると思うのだが、電池電圧が下がってくると当然ながら充電できなくなる。
9V電池を使ったものはその電池電圧が5.5V程度に落ちるまでは充電機能が維持されるが、そもそも9V電池自体の容量が小さいので満充電とは行かない。
何年か前に買った単三電池2本仕様の充電器は幾つかのデバイスでスイッチング電源が組まれており、比較的大きなコイルと数個のFETやダイオードなどで構成されている。
メーカ名は不明ながらヨドバシで800円前後ではなかったかと思う。
最近購入したというか、この実験のために買ったのがアリスティ(製造元は多摩電子工業)とTopLandのものである。
公称容量は以下のようになっている。
公称容量
ノーブランド 表示無し
アリスティ 780mAh
トップランド 800mAh
公称容量は電池が同じならば充電器の効率というか設計で決まり、設計が同じならば電池容量で決まる。
アリスティとトップランド製はどちらもEVOLTA電池を使っていて少しでも容量が稼げるようになっている。
携帯電話の内蔵電池は公称3.6V前後だが、充電終止電圧は4V程度になる。
また充電制御回路は携帯電話側に内蔵されており、そこでの電圧ロスも含めると5V以上の電圧が必要になる。
ここで表示されている容量は終止電圧を4Vとした場合のものであり、携帯電話によっては4Vでは既に充電が進まない場合も多いので基準が少々怪しい。
ちなみにN-01Aで実験してみると、充電端子電圧が5.0
より上であれば約400mAの充電電流が流れた。
電圧を下げてくると4.2V程度で電流がゼロになり、4.0
以下になると充電表示が消えた。
つまり定格充電電流を流したければ充電器の出力は5V以上必要と言うことになる。
ちなみにこの実験時にN-01Aのバッテリはエンプティではなかったので、残量によって多少変わってくる可能性はある。
実際乾電池式充電器の取説というかボール紙の裏にも、完全放電した携帯電話の電池は充電できない旨が書かれている。
おそらく残量が少ない状態だと充電電流が多く流れようとする→出力電圧が下がってしまう→充分な充電電流を流せない→高負荷のまま電池が減っていく…という事になり、充電器としての機能を発揮できないのかも知れない。
ちなみにドコモ純正AC充電器の出力電圧は5.4V/700mAだ。
乾電池式充電器の回路はおそらくどれも似たようなものだと思われるが、こちらのページが参考になるだろう。
乾電池式充電器は容量表示及び連続通話時間表示になっている。
これは特定の条件下で測定したもので、必ずしもこの通りになるわけではない。
だが以下の測定値を見ていただくと解るように、電池電圧の変動に対する出力電圧の変化や、出力電流による出力電圧の変化などがそれぞれであり、なかなか比較することが難しいと思う。
例えば充電器の出力電圧がわずかに違えば充電容量は大きく異なると思うし、携帯電話側の入力電圧範囲が狭いか広いかによっても充電容量は大きく異なる。
電池式充電器は電池がパワーの源であり、EVOLTA電池などの高容量タイプが使われている。
EVOLTA単三電池の公称最低容量は1.9Ahであり通常のアルカリ電池より大容量だ。
電池に関してはこちらが非常に詳しいのでご覧頂きたい。
私は更に容量が多くしかも軽いリチウム単三一次電池を使っている。
従来は富士フイルムが販売していたのだが、一旦値下げされた後発売中止、現在はシック エナジャイザーとして売られている。
公称容量は不明なのだが特性的には満足できると思う。
1Aの放電容量を見ると3Ah程度はありそうだ。
EVOLTAが約2Ahで10年保証、Liが3Ahで15年で質量も軽いが価格は高い。



今回テストしたのは3種類、TOPLAND製とアリスティは横型だが電池の格納向きが違う。
ノーブランドは縦型の、ごく一般的なものだ。
TOPLANDとアリスティは非分解構造で電池部分のみ蓋を開けることが出来るが、ノーブランド品は小ネジを外せば分解が可能だった。

まず最初に負荷電流対消費電流を測定した。

アリスティのものが若干効率が良いがさほど大きく違うものでもない。
大電流時に効率が悪化するのは各部のロスやコイルの飽和が原因だと思われる。
しかし400mA負荷時に電池電流が1Aを超えるのだから高負荷である。
出力が400mA×約5Vで約2W、入力が3V×1Aで3Wとすれば効率は6割しかない事になり高効率とは言いがたいことが解る。
次に負荷に対する電圧変動を調べた。

負荷に対する出力電圧変動はTopLand製が最も少なく、ノーブランド品が最も大きかった。
この辺りは使用されているデバイス依存で特性が決まるのかも知れない。
電池の消耗による入力電圧の変動に対する特性も測ってみた。

負荷抵抗は28Ωの一定としたが、入力電圧が下がると出力電圧も下がるために負荷は軽くなる(電流は減る)方向になる。
実際の携帯電話接続時でも同様の特性になることから低電流負荷を用いる必要はないかなと思った次第だ。
ノーブランド品は入力電圧に対する出力電圧安定度が低いが、他の2つは似たような感じである。

VC