C.D.I.って何だ?
点火系統の強化にCDIを使うとどのくらいの効果があるのか?最近の車では、ダイレクトイグニッションでCDIが使えない(使おうとするとCDIが複数個必要になる)場合も有るだろう。
そもそも、一般のエンジンに点火する場合に必要な熱量は20mJから30mJと言われている。
レーシングエンジンなどでも80mJ有れば火がつくだろう。
だから、現在のフツーの車にはあまり必要ないわけだ。
むしろ、30mJ程度で火が付くエンジンにすべきだとも考えられる。
所が、チューニングカーの場合で高加給/高回転でパワーを稼ごうとすると通常の点火システムでは能力不足になる場合がある。
なぜなら、ノーマルでの設計性能を大幅に上回るパワーを得ようとするからだ。
明らかに点火能力の不足する車(ホンダ車は弱いと言われているが)にCDIを付けると、体感できるくらいに変化するはずだ。
高圧縮/高回転型のNAチューンならなおさらだ。
圧縮比に比例して、点火しにくくなることはご存じだと思う。
レーシングプラグにナローギャップが多いのもその為。
点火装置の能力が高ければワイドギャップの方が火が付きやすいが、高回転ではドエル時間が不足してしまうのだ。
そこでCDIの登場となるわけだが、CDIと言えども万能ではない。
CDIは、その名が示すとおりキャパシタ(コンデンサ)に蓄えた数百ボルトの電圧をイグニッションコイルの1次側に接続する物だ。
通常は12Vを加えて、その逆起電力で高圧を発生するシステムにダイレクトに高圧をかけてしまうのだから、2次電圧の立ち上がりは急峻になり2次電圧そのものもノーマルとは比較にならないほどアップする。
欠点は、放電時間が短いことだ。
たぶんノーマルの1/2から1/10程度になるだろう。
高回転時では長い放電時間は不要だから別段問題にはならないのだが、アイドル時等では逆に火が付きにくいことになる。
顕著に現れるのはロータリエンジンだ。
燃焼室が時間(回転)と共に移動するロータリでは、長時間放電させることが必要なのだ。
10年以上前から、既存のイグニッション方式にCDIでの放電を加えるように動作させるアイディアがある。
回路的にはいろいろアイディアが有るのだが、どれも理論通りには動作していないようだ。
私が実験したのは、ウルトラのもの。
理屈はそれほど大げさではない。
つまり理論通りに動作させようとして苦労するよりも、単純な方式でそこそこの能力を発揮するように作った物..と言うところか。
すなわち、最初にCDIによる放電が起きる。
これは、CDIの方が立ち上がり特性が良いために先に高圧を発生するのだ。
CDIの放電時間は短いから、一瞬の後放電は停止する。
その後逆起電力による放電が開始されるわけだが、CDIの放電によってイオン化されたプラグギャップには火が飛びやすいわけだ。
机上で実験してみると、その点火能力の違いはすごいものだ。
写真右はイグニッションコイル、左側はトランジスタモジュール。
大気圧中で20mm程のエアギャップに火を飛ばしてみると、放電時の明るさもさることながら放電時の「音」が全然違う。
プラグの消耗は激しくなるだろうが、点火性能が向上することは明らかだ。
実車においては、500SLに装着してみた。
B8は、片バンクずつ4気筒が2個と同じなのでCDIは2個必要になる。
このSLは時として混合気が濃くなりすぎ、ボボッとご機嫌斜めになる症状が有ったのだが、CDI装着で見事に解決した。
現在のSL600には装着していない。
こいつはダイレクトイグニッションだから、装着しようと思うとCDIが12個!必要になる。
最近の6気筒(4気筒もそろそろ)では、殆どがダイレクトイグニッションだからCDIを簡単に装着することは出来ないが、Q車ファンは覚えておいて損はないと思う。
これがノーマルに近い状態。
トランジスタユニットのみで点火している。
大気中の放電だからギャップは広めにしているが、これでも狭いくらい。
ギャップが広くないとCDIがトリガしないのだが、広すぎるとノーマル状態では放電しなくなってしまう。
こちらがCDIによる放電。
ノーマル状態との差がお分かり頂けるだろうか?実際に目で見るとかなり違うのだが..もっと高回転に相当する放電をさせると、違いは大きくなる。
この写真は、4気筒5000回転に相当するもの。
ま、実用的回転数と言うことでこの写真にした。