消費電力が同じで明るいと言うが..
最近のヘッドライトや補助灯は、コストダウンのためか樹脂製の反射鏡やレンズを使用している場合が多い。
この樹脂製ヘッドライトユニットにハイワッテージバルブを入れて使用すると、樹脂反射鏡に表面蒸着してある反射層が曇ったり、あばた状に剥離したりする場合がある。
そこで最近の流行?は、ノーマルと変わらぬ消費電力と発熱でありながらハイワッテージバルブ並の明るさ(光出力)を持ったバルブだ。
消費電力を変えずに光出力を上げるには、フィラメント温度を高くして赤外領域のパワーを可視領域に持っていけば良いはずだ。
元々ハロゲンランプというのは、普通のタングステン白熱電球よりはるかに高いフィラメント温度で動作している。
にもかかわらず長い寿命を誇るのは、蒸発したフィラメントの金属をハロゲンサイクルによって還元する構造になっているからだ。
さて、このノーマルの消費電力で明るいランプは本当に明るいのか?実験してみた。
どちらもH1タイプのバルブだ。
右は85W相当,左は何と!100W相当と書いてある。
但し小さな字で「当社比」と書いてあるところがミソ,例え100W級の明るさが出なくて文句を言っても「当社の100W電球は、55W並の明るさです」とか言われておしまいだ。
では、早速明るさ比較から見ていただこう。
どの写真も、左側にはノーマルの55Wバルブを使っている。
一番左の写真が左右ともノーマル,中央が向かって右だけ85W相当品,右の写真は向かって右だけ100W相当品だが、ゴールドバルブという黄色い光になるものだ。
(100W相当品は貰い物なので..)こうしてみても差がないが、肉眼で見ても差は分からない。
ちなみに、ホンモノの100Wを入れると肉眼でもハッキリ違いが分かる。
実は明るさ測定にカメラの露出計を使おうと思ったのだが、カメラの1絞りは光量で2倍に相当するから、たぶん違いは出ないと思う。
これがそれぞれのバルブの全体像だ。
左がノーマル,中央が85W相当,右が100W相当品だ。
ガラス部分の長さが違う以外、大きな違いな見あたらない。
フィラメント部分の拡大がこの写真だ。
(全く同じ解像度でスキャンしている,変な色が付いているのはスキャナの光源のため)
ノーマル
85W相当品
100W相当品(ガラスに色が付いている)85W相当品は10時間程度使っているが、フィラメントがすでに変色している。
全体像の写真でも分かるが、金属部分にも変色が見られるし蒸発したフィラメントの成分がガラスに蒸着して、ガラス自体が曇ってきている。
この手のバルブの寿命だが、私の使用状態から時間を算出すると100時間程度ではないかと思われる。
放熱の悪いランプボディーに付けて使用すると、数時間から数十時間で切れてしまう場合もあるから、ヘッドライト用途として使う場合には予備を持っていた方が良い。
最近は、こんな広告も載っている。
色温度が高いことを強調しているが、実は今回実験した85W相当品も「太陽光に近い青白い光」が宣伝文句だ。
100W相当品の方は「キセノンガス配合」だと書いてある。
上記広告によると、一般の白熱電球の色温度が2600K,ハロゲンランプが3200K,キセノンランプが4300Kだそうだ。
このランプは3800Kで太陽光(5250K)に近いと書いてあるが、正確には「従来のハロゲンランプよりは、わずかに太陽光に近い」訳で、購入者を惑わす表現だ。
色温度関係に関しては、写真に興味のある方の方が詳しいかも知れない(色補正の関係で)同じく上記広告の右側の方に、ノーマルバルブとの対比写真が載っている。
若干明るさも違うように見えるが、配光特性も変わっている。
フィラメント長が長くなると、光源が点として見られなくなり配光設計が狂ってしまう。
このH4バルブは、消費電力が60W/55W(ハイビーム/ロービーム)で、110W/100W相当,同じく80W/80Wで135W/115W相当の二種類がある。
80Wタイプで、ロービーム側が115W相当にしかならないのは「耐久性向上」の為らしい。
ハイビームに比較して長時間使用するロービームは、耐久性を上げるために明るさを控えているのだろう。
(それでも100時間程度だと思う)
この手のバルブを使用するときは、切れる前に交換する注意が必要だ。
高速道路など走行中に電球が切れてしまったら非常に危険だ。
もっともこれらの電球は公道で使用することは禁止されているらしい。
おそらくPL法対策で書かれていると思われるが、一般量販店で販売されている以上これらの表示は無効だ。
競技用部品と書いてあっても、一般量販店の店頭に並んでいる以上暗黙的に公道での使用が前提となっている..と判断されると言う。
いずれにしても、今回の実験で明らかになったことは「ノーマル消費電力で明るい」として売られているバルブはさほど明るくない
と言う事実だ。
ただし、寿命だけはしっかり短くなってくれる。