水草と肥料
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肥料の必要性
水草育成のためには肥料が必要である。
とは言っても、特別な追肥無しでも魚の排泄物や餌がバクテリアによって分解されて窒素分は豊富に存在する。
これに追加するのはリンやカリや微量元素と呼ばれる成分である。
逆に窒素分過多にしてしまうとコケの発生を促すことになって宜しくない。
肥料には底砂に埋める形で使うものと、水に混ぜる液肥がある。
底床肥料はコケの発生につながりにくいので、その使い方にさほど注意はいらない。
しかし液肥は使い方を誤ると翌日にはコケの大発生と言うこともある。
肥料が少ないと水草の新芽が縮れたようになったり、葉や茎が薄くなったり、或いは白化が起きたりする。
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肥料の特性
肥料は窒素/リン酸/カリウムが主成分である。
水草育成用はこれに加えて微量元素と呼ばれる成分を付加してある。
水草は3成分の最も少ない成分に合わせて養分吸収を行う(らしい) 窒素100:リン酸70:カリウム50の水中比だと、窒素もリン酸も50しか吸収されないと言う事だ。
水槽水内には魚や餌から排出される窒素とリン酸が豊富だと言われる。
しかし頻繁な換水を行っている場合には窒素もリン酸も濃度が低い可能性がある。
肥料の成分バランスが崩れると残った成分がコケの発生を促す場合が多い。
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微量元素の必要性
微量元素と言っても主に鉄分を示す場合が多い。
鉄分が不足すると白化などが起こる。
逆に鉄分過多になると余った鉄分が植物に吸収されずに濾過材や給排水パイプに「錆び」として付着する。
微量元素の素としてはADAのStep1〜3が有名だが、三大栄養素が不足している状態で微量元素のみを供給しても水草の生長は良くならない。
(コケも発生しないが..)適度な飼育密度(窒素とリンが豊富になる)とカリウム補給があれば、後は足りない微量元素のみを補給するという使い方もあるが、換水が頻繁(週1回全水量の1/2とか)な場合には窒素やリン酸も補給した方がよい。
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肥料の種類
液体肥料はADAやジャレコから発売されている。
私はジャレコのフロラシオン・プロを使っているが、これは窒素も含んだ水草生長促進剤(成分表示をしていないので「肥料」とは表示できない)である。
窒素を含まないものとしては「ハイポネックス開花用」があるが、肥料というのは窒素分無しではなかなか思うような特性にチューニング出来ないそうである。
したがって「開花用」は特殊な肥料に分類されるだろう。
これに鉄分である「メネデール」を加えれば窒素ゼロ+二価鉄の肥料になると言うわけだ。
ちなみに「ハイポネックス野菜用」や同「ラン用」などは窒素分も含まれている。
これらの添加基準は水槽の状態によって異なるが、ハイポネックスは10倍希釈液を60cm水槽で2〜3cc/日程度ではないだろうか。
ちなみに園芸用肥料を使えば水草育成材剤の1/10のコストが実現できる。
なお水草育成剤と違って園芸用肥料は成分表示があるので、これを見て選択することが出来る。
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肥料添加と分量
「添加しすぎるくらいなら添加しない方が良い」とはよく言われることである。
私の場合、フロラシオン・プロを使う時には規定量の1/3程度を添加し、翌日までに緑のコケがガラス面に発生していなければ引き続き同量を添加する。
2〜3日これを続けてもコケが発生しなければ、規定量の1/2程度に増量する。
うっすらコケが発生してきたら(出来るならば)1/3程度の換水を行い、規定量の1/3程度の添加に戻す。
「開花用」の場合は、これと木酢液を1:1で混ぜたものを5倍程度に希釈し1cc/日程度からはじめる。
(60cm水槽の場合) 添加する時期だが、朝晩2回に分けて一日分を添加した方がコケの発生が少ないようだ。
植物は夜育つとも言われるが、この点に関しては定かではない。
が、夜間にも栄養分を吸収してくれるのなら、照明がない(コケが発生しにくい)夜間に添加するのが良いような気がする。
なお生長の早い水草だと、肥料添加の効果は1〜2日で現れ始める。
だからといって結果を急いではいけない。
適正添加量を見極めるには1週間程度の期間が必要だ。
肥料をコケが出る寸前まで増やしても水草の生長が思わしくない場合は、炭酸ガス添加量や光量をチェックしてみよう。
真っ暗な中で肥料を存分に与えたとしても水草は育たないのだから。
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肥料の成分
ハイポネックス開花用(開花促進液)は窒素/リン酸/カリウムが0,6,4で含まれている。
同様に「ラン用」は6,6,6だ。
窒素分は魚から放出されるので水槽内には豊富と言われているが、魚の飼育密度や水草の生長具合では不足することもある。
水草水槽の液肥に窒素は不要と考えるのは正しくない。
換水後や水槽の状態に応じて考えるべきである。
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底床肥料
これも園芸用があるが、ものによっては石灰分が含まれている場合もあるので注意する。
水草用としてはジャレコのフロラスティックやADAのマルチボトム,テトラのイニシャルスティックやクリプトがある。
ジャレコのものは溶けにくく遅効性で数ヶ月間は効力を発揮する。
イニシャルスティックは溶けやすい代わりにある程度の即効性が期待できるが、粒がそろっていないので使いにくい。
クリプトは高価ではあるが即効性があるので、弱った水草を助けるときなどには重宝する。
いずれの肥料も過添加でコケが発生することは少なく、底床内に留まる特性である。
しかし底面吹き上げや底面フィルタ,ラインヒータなどを使っている場合には水中に肥料分が舞い上がるかも知れない。
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底床肥料の効き目
底床肥料は底砂内のバクテリアに分解されて、はじめて植物の根から吸収される。
従って立ち上げ初期の底床では肥料の効果が薄い。
また殆どの水草は底床肥料だけでは生長できない。
根からの養分吸収が盛んだと言われるグロッソスティグマも底床肥料だけでは十分に育たない。
ここでも液体肥料と底床肥料のバランスが大切になるわけだ。
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肥料正帰還の法則(?)
肥料を与えると水草の生長が良くなる。
水草の生長が良くなれば、より多くの肥料を添加する必要性が生じる。
光量・炭酸ガス・肥料・そして濾過がバランス良く行われていれば、水草はどんどん生長する。
なお濾過能力が低い場合には濾過槽に蓄積された水草の根や枯れ葉が腐敗して窒素過多になる場合があるので注意する。
一度バランスが崩れると、その原因がどこにあるのかを探らなくてはいけない。
水草が生長しない−>肥料が吸収されない−>水槽水が富栄養化する−>コケが増える−>肥料を減らす−>水草が生長しない。
の悪循環を繰り返すことになる。
もしも炭酸ガスや照明光量や濾過に問題がないのであれば、8割方の水を換えてから窒素含有液体肥料を規定量の1/3程度添加して、1週間ほど様子を見ることをお勧めする。
この間にも緑のコケが増えるようであれば、その時点で1/2の換水を行い液肥の分量を規定量の1/4程度に調整して添加を続けては如何だろうか?「液肥をどの位添加すると緑のコケが発生するか」で、水草の状態を判断することが出来る。
従って状態が安定していない過渡期の水槽では、常に一定量の液肥添加というわけにはいかない。
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肥料と水槽の実際
60cm水槽には少量の水草が植えてありEHEIMの2222一台で濾過を行っている。
この水槽にフロラシオン・プロを毎日2cc添加し続けると数日でガラス面にうっすら緑のコケが出てくる。
90cm水槽には多めの水草があり、EHEIMの2228二台で濾過を行うと共に2426にはピートを入れて硬度低下とpH降下を行っている。
こちらにはフロラシオン・プロを10ccとハイポネックス「ラン用」10ccを添加しても緑のコケは生えない。
このように水槽/水草/濾過/生体の量に応じた液肥添加が必要であり、一概に「一日何cc」とは決められないわけだ。
VC