インバータ蛍光灯に改造する
電球型蛍光灯が流行っている。
白熱電球と口金が同じで、そのまま取り替えるタイプの蛍光灯である。
低消費電力と長寿命が売りだが、果たしてエネルギ節約効果とコストが見合うのか疑問である。
この蛍光灯もいずれは寿命が来るわけで、交換時には蛍光管のみではなくインバータ回路も捨ててしまうと言う無駄がある。
電力消費量節約が家庭レベルで行えるのは良いとして、内部回路の製造エネルギやゴミ処理コストを考えると省エネルギーなのかどうか、ますます分からなくなってくる。
そこでインバータ回路を取り出して、普通のグロースタータタイプの蛍光灯器具に移植することを考えた。
インバータ点灯方式は50KHz〜100KHzの高周波で点灯するためチラつきが少なく、蛍光管の寿命も長い。
インバータ回路は自励式と他励式があり、調光などを行えるのは主に後者である。
回路的にはスイッチング電源とほぼ同じで、AC100Vを直接整流し、平滑後MOS-FETでスイッチングする。
MOS-FETはトーテムポールになっていて、出力はチョークコイルに接続される。
チョークコイルからは蛍光管に接続されるが、コイルのインダクタンスと蛍光管の特性、それに共振コンデンサで効率が決まるようである。
従って、電球型蛍光灯の回路がそのまま使用できるのか否か良くわからないのだが、とにかく実験してみることにした。
バラしたのは丸いボール型のものとカバーの付いていないもの。
どちらも23W型である。
これを取り付けるのは熱帯魚水槽用の照明器具だ。
これには20W型(18W)の蛍光管2本が付いている。
熱帯魚用照明器具はきわめて安っぽい作りで、電線を押さえるのにセロテープが使ってある辺りは泣けてくる。
セロテープなどの湿気に弱いものを水槽用照明器具に使うのだから..この蛍光器具をノーマルで点灯させるとこんな感じである。
手前がPG3と呼ばれるもの、奥側がPG2と呼ばれる、魚が美しく見える照明だ。
インバータ基板は丸形とそうでないもので違いがある。
どちらも23Wなのだが、チョークコイルの容量や共振コンデンサの容量、ACを整流し平滑するためのケミコンの容量まで違う。
ちなみにボール型の方が平滑容量が大きい。
この基板を外して蛍光灯器具に移植する。
ノーマルはこんなにスッキリしている..ここにインバータ回路を乗せるが、結線を間違うと片側しか点灯しない(笑)
インバータ方式の場合、無負荷(つまり蛍光管を外した状態)で電源を加えると非常に高い電圧が発生する。
通常のインバータ電気スタンドなのでは保護回路が付いているが、電球型蛍光灯には無用の長物だろう。
だとすると無負荷で電圧を加えると壊れるのだろうか?まさか放電して燃えたりしないのだろうか?さっそくこれを実験してみると、パチッと大きな音がしてMOS-FETが割れた。
写真では見にくいが、2つのMOS-FETが割れている。
やはり無負荷運転には耐えなかったようである。
正しく接続して電源を入れると、インバータらしくパッと点灯する。
電球型蛍光灯は輝度が上がるまでに数分を要するが、コイツは一瞬で点灯して気持ちがいい。
インバータ方式にすると同じ輝度なら2割の電力節約、同じ電力ならより明るく点灯するそうである。
ちなみに定格容量より大きな蛍光管を点灯させることもできるが、励振電圧などの関係で20W用のインバータ回路を30Wの蛍光管で使用しても明るさは20W程度らしい。
改造を行うのは勝手だが、高電圧が加わった回路なので機器への組み込みや発熱(電球型蛍光灯はかなりの高温になるので、この点は余り心配はいらないと思うが)には十分注意していただきたい。
万が一にも火災など起こしても誰も責任をとってくれない。
私は熱帯魚の水槽照明用蛍光灯にこれを付けたわけで、湿気や水分など条件は厳しい。
そのためインバータ基板にはコート剤(ハヤコート:サンハヤトの商品名)を塗った。
この防水効果はCPUクロックアップ時にCPUを極限冷却した際に発生する結露水からマザーボードを守ってくれる事で証明済み。
回路図を起こしてみると以下のようになっていた。
CT1はトロイダルコアに、L2は昇圧用チョークコイルだ。
また、市販のインバータ蛍光灯(2灯用)の内部基板はこのようになっている。
回路的には上記のものとほとんど同じだと思うが、出力側の昇圧コイルがそれぞれの蛍光灯用に付けられている。
これも自励発振である。