J436エンジンをバラす(4)
前回の記事の続きである。
ジェネレータカバーは最後になった。
ガスケットの手配が遅れたためだ。
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古いガスケットを剥がすが、これが固着している。
スクレーパではぎ取った後、オイルストンで表面を綺麗にした。
カバー側も同様。
このカバーはオイル焼けもなく綺麗なものである。
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ジェネレータカバー側は液体ガスケットを塗った紙のガスケットを使う方法にした。
中古スカイウエーブを買ったバイク屋でもこの方法を採っていた。
どうもスカイウエイブはここが弱いらしく、数年もするとオイルがにじむらしい。
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ここの蓋を閉めてエンジンとしては完成だ。
カムカバーはゴムのガスケットを新品に換えたが、カムの穴を掘った所の切り欠き部分にのみ液体ガスケットを塗った。
ここは密着トルクが不足するのでオイルが漏れやすい。
ウォータポンプはどのガスケットも新品にしたが、いずれにしても漏れてから直しても済む所ではある。
まガスケットやOリングなど安いものだから換えた方が良いには違いないけれど。
ここに3台のエンジンがあるわけだが、それぞれの状態を再確認してみる。
【エンジン1】
中古スカイウエイブのエンジン
エンジン番号はもっとも古い。
走行距離はメータ読みで1.6万キロなのだが、ドライブベルトは摩耗限度以下にまで減っていた。
クラッチの減り具合と合わせてみると走行距離は3万キロを超えていると思う。
クラッチは残りがまだあった。
ウエイトローラは摩耗していた。
ドライブプーリなどには泥のようになったグリスが見られた。
ドライブプーリの摩耗が少し見られた。
走行距離が過大でグリスが固まったと言う事は考えにくく、メンテ無しのまま数万キロしか乗られなかったと見るべきだろう。
ミッションオイルの汚れは常識的だった。
エンジン内部は開けていないので不明。
【エンジン2】
走行距離不明の中古エンジン
エンジンナンバーは中古スカイウエイブのエンジンより少し新しい。
抱きつきなどがあるので状態は良くないのだが、クラッチなどの減り具合からすると6万キロくらいは走っているかも。
クラッチの残りはあまりなく、交換時期になっている。
ドライブベルトはメンテされたのか、摩耗限度までまだ少し余裕があった。
ウエイトローラに摩耗はなかった。
ドライブプーリには摩耗が見られた。
ミッションオイルは抜かれていたので不明。
ピストンにカジリがあった。
カムにキズがあった。
ロッカーアームに摩耗が見られた。
このエンジンのドライブベルトやウエイトローラはスカイウエイブにそのまま移植してしばらく使った。
【エンジン3】
走行2万km前後と言われた中古エンジン
エンジンナンバーはかなり新しい。
2万キロ前後の走行距離に偽りはないだろう。
クラッチは摩耗していてハウジングが変色していた。
半クラッチで低速走行ばかりしていたとか、使用方法に問題があったと言える。
ドライブベルトはまだまだ使用出来る状態だった。
ウエイトローラの摩耗は見られなかった。
ドライブプーリの摩耗は見られなかった。
ミッションオイルの汚れは常識的だった。
シリンダにはホーニング痕が残っていた。
ピストンにはカジリもなく、スカートにキズもなく状態は良かった。
エンジン2のヘッドをエンジン1に移植しようと考えていたのだが、積車状態でいじくり回す自信がなかったのでエンジン3を手に入れた。
このエンジンが状態が良かったので、このエンジンをベースに仕立てる事にした。
ヘッドはエンジン2のものをオーバホーズ済みだったのだが、カムなどの当たりなども考えてエンジン3ベースで行く事にした。
エンジン2で練習したのでヘッドオーバホールもスムーズに行った。
他にも予め整備しておいた部品などもエンジン2のものを使用した。
細かなネジ類などもエンジン2から頂戴したものもある。
そして何より役立ったのは初エンジンバラしに際しての勉強用素材としてだ。
またエンジン2とエンジン3を比較する事によって、例えばミッションのバックラッシュが正常範囲なのかどうかの確認も出来た。
エンジン2に手を入れた部分は、
※ピストンカーボン落とし
※ピストンリング交換
※ヘッドカーボン落とし
※バルブすりあわせ
※エンジン内部洗浄(オイルが汚かったので)
※マグネトカバーガスケット交換
と、半日で終了する程度のメニューとなった。
ドライブ系は、
※ドライブプーリ、ウエイトローラなどの清掃と組み直し
※トルクカムとドリブンプーリの分解清掃とグリスアップ
※ドライブベルト交換
※ドライブプーリ側のエアフィルタ交換
※ユニットカバーガスケット交換
清掃部位は結構多くて、特に二次エア系の汚さは激しかったがここは排気が逆流してくるので仕方ないか。
ドライブ系はエンジン3のドライブプーリ、エンジン3のドリブンプーリ、エンジン1のクラッチ、エンジン2のクラッチハウジングを組み合わせた。
ドライブベルトはエンジン3のものが再使用可能、エンジン2のものももう少しは使えるがここは新品に換えた。
リアブレーキディスクはエンジン3のものをそのまま使用した。
写真左が中古スカイウエイブにくっついていたもの。
右はエンジン3のものを整備したもの。
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本来はシールも変えなければいけないのだが、それは次の機会にしよう。
中古スカイウエイブに付いていた方はグリスが劣化している。
使い続けているとトルクカムのピンの当たった部分にスジが付くが、それは見られない。
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シールも劣化はしていると思うが使えないわけでもない。
エンジン部と違って外すのは楽なものなのでいつでも整備が出来るのと、今回はクラッチも中古をそのまま使うのでやがて又整備の時期が来る。
クラッチを止めている対角41mmのナットは専用のレンチを買って外した。
ドリブンプーリ一式を押さえつけ、専用レンチをプラスチックハンマーで叩いたら外れた。
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ドリブンプレートはエンジン3のものが減りが少なかったのでこれを使用した。
エンジン1のものとエンジン2のものの摩耗具合は同程度だった。
クラッチはエンジン1のものがシューの残りが多いのでこれを使う。
ドライブプーリもエンジン3のものを使う。
これはエンジン2のものも状態は同程度だったが、エンジン3のものの方が少しだけフェースの摩耗が少なかった。
ウエイトローラにはグリスを塗れと整備書には書かれているが、塗らない人も多い。
グリスが熱で柔らかくなり遠心力で周囲に吹っ飛んでしまうので意味がないというわけだ。
またグリスで滑る事によってウエイトローラが回転せずに偏摩耗につながる説もある。
私は塗ると言うほどは塗っていないが、クリームを手に塗る程度の感じで付けている。
こちらも本来であればシールを交換する所なのだが、今回は再使用する。
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準備が出来た所でバラしを開始する。
エンジン換装の予定だったのでエアクリーナ等々は全く掃除もしていない。
バラシはフラットで少し広いアスファルト上で行った。
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後ろ半分をばらせばいいかなと思ったのだが、オルタネータの配線を外すためには前部も開けないとダメだった。
シートを外すのは初めてなのだが、何とも汚い。
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どんどん外す。
エアクリーナケースも外す。
エンジン上部には泥が積もっている。
この泥のおかげでアルミが意外に腐食されていない。
泥コートか。
エンジンの見た目的には一番綺麗かも。
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エンジンはボルト2本を外すと抜ける。
ガレージジャッキ1台でエンジンを押さえ、後輪側を助手に押さえて貰いながら外した。
後はそのまま後ろに引っ張り出せばいい。
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スロットルボディは交換予定だが、今はまだ外していない。
組み上げたエンジンはまず旧スロットルボディでかけてみる。
不具合があった場合に何が原因か解らなくなる事を避けるためだ。
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サビっぽい所にサビチェンジャを塗ったら紫になった。
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ガレージジャッキにエンジンを乗せて後ろから突っ込みボルト止め。
ドライブベルトも新品、エアクリーナも新品。
クラッチは中古、ドライブプーリなども中古である。
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プラグを外して少しクランキングしてオイルを回す。
その後プラグを付けてセルを回すと一発で始動した。
良かった〜
そのまましばらくアイドリングさせて各部のチェック、その後スロットルボディとインジェクタやマニホールドを交換した。
こちらも一発始動で問題なし。
少し暖機した所で冷却水のエア抜きバルブを緩めてエアを抜く。
エア抜きバルブを使わないとなかなかエアが抜けないのでこの作業は必須だ。
その後30分ほどアイドリングで回し、再度各部のチェックをするが異常なし。
大丈夫かなという感じで外装取り付けにかかった。
エンジン換装以外にも細かな作業、シートダンパ交換やウインカのLED化なども行い丸一日の作業となった。
マフラーもノーマルに戻した。
やはり静かなのが良い。
重量はステンレス製の3倍くらいはありそうな感じだが、重さが気になる乗り物でもないだろう。
エンジンを降ろすのは外装を外すのに面倒さはあるのだが、それ以外は特に難しい所はない。
むしろ積載状態で腰上を外す方が大変かなと思う。
それこそエンジン下ろしが大変なモデルならば別だろうが、スクータは意外に簡単なんだなと思った。
外したエンジンは外観は綺麗だった。
内部は見ていないのだが手でクランクを回してみると圧縮上死点でも余り重くならなかった。
おそらくはバルブの密着が悪くなっているのだろう。
シグナス同様ホーンも渦巻き型にした。
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写真では見にくいが、銀色のメッキのものがそれだ。
例によって600円である。
シグナスと違ってスペースはいくらでもあるので取り付け場所は選ばない。
リアホイールを外したのでブレーキパッドもチェックした。
交換するつもりでデイトナのパッドを用意していたのだが、今付いているものがたっぷり残っていたのでそのまま組み付けた。
スカイウエイブのメータ読み走行距離は1.65万キロだ。
ドライブ系の次回メンテはオドメータが4万キロを指した頃だろうか。
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