黒髭コケ(藻)の謎
1月24日に60cm水槽を立ち上げ、その後5月9日現在黒髭は確認されていない。
一方90cm水槽は4月3日に立ち上げ、4月14日には黒髭を確認している。
両水槽の違いと言えば大きさ(60cm/90
cm)、照明、底砂、液肥だ。
■ 照明は関係するのだろうか?
60cm水槽は20W×4本の構成で、水槽奥側がPG3を2本,手前からPG2+12000Kの2本である。
90cm水槽は(黒髭発生時は)奥からPG3,NA,NA,NA,NAの5灯である。
両水槽ともタイマで照明は制御しているのでこれに関する違いはない。
実験:蛍光管の種類を変える
奥からNA,PG2,NA,NA,PG2としてみた。
黒髭は発生しているが、水槽内の生物が食ってくれているため目立った増え方はしていない。
コケは450nm〜500cnm辺りの波長を好むらしい。
ちなみに水草の光合成(成長)には青と赤の光が必要で緑はさほど必要ない。
緑の光を吸収しないから水草の葉は緑に見えるのだ。
NAランプをPG2に変えたことによって見た目の照度は下がったが、光合成の気泡に余り変化はない。
黒髭が蛍光管を変えたことによって減ったのかどうかは定かではないが、他の要因と共に減少に転じたことは確かだ。
■ 底砂は関係するだろうか?
60cm水槽は焼結ガラスのような黒い砂である。
比重は重く粒は細かめで一定していない。
水草の生長は悪くはないが、砂は時間と共に締まってきている。
90cm水槽はセラミック製の非常に軽い砂である。
もちろんこちらの方が通水性は良い。
水草の生長は両社でさほどの違いは見られないが、90cm水槽の方が底砂とガラス面の間に付着する茶色のコケの発生が多い。
茶コケは亜硝酸を食って成長するらしいので、底砂中に亜硝酸が多いと言うことだろうか? 或いは色が薄い(黄土色)ので光の反射具合が違うのだろうか? ちなみに水槽水の亜硝酸濃度は完全に下がりきっている。
測定:水中の溶存酸素濃度と底砂底部の溶存酸素濃度
これは黒髭には直接関係ないことだが、一応測定してみた。
90m水中の溶存酸素濃度は約8mg/lで、これは25℃の水温における飽和量と等しい。
ちなみに測定時には照明が消灯していて、エアレーションは行われていない時間だ。
一方底砂底部から採取した水の溶存酸素濃度は5mg/lで水中より明らかに少ない。
60cm水槽の方も同じ傾向であるが、底砂底部の溶存酸素濃度は90cm水槽よりも多い。
(試薬の色変化によると5mg/lと8mg/lの中間くらい)粒が細かく比重が重く、一見通水性の悪そうな焼結黒砂だが底砂中バクテリアの活動が活発ではないのか?或いは水草の根から多くの酸素が供給されているのか? 90cm水槽のセラミック砂より溶存酸素濃度が高いのは意外な感じがする。
他の情報を総合すると、水草の良く育つ環境(底砂)では黒髭が発生しやすい傾向にあるようだが、実感としては良くわからない。
ただし現状で60cm水槽より90cm水槽の方が(底砂云々ではなく全体として)水草の生長は良い。
60cm水槽の底砂は、その後セラミック製の比較的比重の重いものに換えた。
そのまま2ヶ月が経過したが黒髭は発生しないので、ADAのStep2添加を始めた。
この時点で他の液肥は使用しておらず、底床肥料(イニシャルスティック)も多くは入れていない。
Step2の添加を開始してからおよそ1ヶ月で黒髭が発生し始めた。
ちなみに緑のコケなど黒髭以外の発生は見られていない。
■ 水質は関係するだろうか?
60cm水槽も90cm水槽も元は同じ水道水である。
60cm水槽はコントラコロラインで塩素中和して使用していたが、90cm水槽立ち上げで購入した浄水器で今は水換えを行っている。
つまり両水槽の水に大きな違いはないと言うことだ。
濾過は60cm水槽が立ち上げ当初EHEIM2222を使用しており、その後2222+2426としていた。
90c
立ち上げで2426は90cm水槽に移され、60cm水槽は2222のみで濾過を行っている。
90cm水槽の方は2426一台からスタートしたが、濾過能力不足を感じて2426+2228の構成とした。
黒髭を確認したのはこの状態である。
実験:ピートで水質を変える
水草と魚とコケ対策のために積極的に水質を変化させてみることにした。
濾過を22282台で行い、2426にはパワーハウスの濾過材(イオン交換能力があるようだ)とブラックピートを入れた、水質改善機として動作させた。
水質改善2週間目で黒髭コケの増殖は収まったように見える。
弱酸性の軟水は植物の生長を良くし、結果として水槽水が貧栄養化したとも考えられる。
なおピートの効果は1〜1.5ヶ月くらいで半減する。
■ 黒髭は伝染するだろうか?
黒髭の発生していない60cm水槽に、多量の黒髭が付いた水草を入れてみた。
しかし黒髭はエビや貝に食われて絶滅した。
黒髭の発生していない水槽に黒髭を入れても増殖しないと言うことだ。
■ 液体肥料は関係するだろうか?
黒髭発生時に添加していた液肥はADAのStep2だ。
これは微量元素を主体とした液肥で、窒素/リン/カリウムは含まれていない。
窒素/リンが増えれば緑の固いコケが発生するが、黒髭発生時にこれらは発生していなかった。
実験:黒髭のない60cm水槽にStep2を添加し続けてみる。
60cm水槽にStep2を5月9日から毎日規定量添加した。
液肥をメーカ指定量添加するというのはかなり分量的には多いはずだ。
60cm水槽は貧栄養化が進んでグロッソが白化を起こしているのだが、Step2を添加し始めて1週間が経つが黒髭は発生せず、白化も止まらない。
植物は微量元素だけを添加してもダメ、と言う見本のような実験。
その後も継続して実験の行ったが、Step2を添加し続けると黒髭が発生した。
ちなみに他の液肥は添加していないので緑のコケは発生していない。
このことから鉄やモリブデンなどの微量元素過多で黒髭が増えるような気がしてならない。
同様にADAのアイアンボトムによっても黒髭が増殖するようである。
このことから黒髭は鉄分が大好きなように感じるのだが..
液体肥料を添加しないと水草の生長や葉色が悪くなる。
黒髭の増殖も止まるが水草の成長も悪くなる。
ここでジャレコのフロラシオンプロを添加すると、2〜3日で水草の生長が目に見えて良くなった。
黒髭は増える気配を見せていない。
ただし換水はなるたけ回数を多くすること。
その上での施肥が有効だと思われる。
■ 底床肥料は関係するだろうか?
黒髭発生時に使用していた底床肥料はジャレコのフロラスティックとADAのアイアンボトムだ。
60cm水槽でもジャレコのものは使用していたのでこれに差異はない。
そこで60cm水槽にもAD
のアイアンボトムを入れてみたが黒髭は発生しなかった。
その後両水槽ともテトラのイニシャルスティックとテトラのクリプトを施肥したが、これによって黒髭が増えることはなかった。
■ 木酢液の効果は?
これはコケ退治と言うより水草に活力を与えるものと考えて良いと思う。
強酸性(pH=3)の木酢液は水槽水を酸性に傾けてもくれる。
水換え時に5cc程添加しているが、これも多少の効果があるのかも知れない。
■ 黒髭退治の極意とは何か?
コケを排除するためには水草の生長を良くすること。
これに尽きると思う。
水中の栄養分を水草が吸収してくれればコケが生える隙がない。
もちろん過度に添加する肥料は禁物だが、コケを恐れる余り水草の生長が阻害されるほど貧栄養化を進めては逆効果だ。
これまで行ってきたブラックピート投入や蛍光管変更や底床肥料の追加は、どれも水草の成長を助ける目的である。
従って市販のコケ防止剤は決して使ってはならないことがお解り頂けるだろう。
これらは例え「水草に無害」と書かれていたとしても、水草に何らかのダメージを与えることは必至である。
人畜無害な農薬や殺虫剤がないのと同じく、コケ防止薬品は水草の生長を阻害する。
そこで具体的対策だが、私は以下のことを行った。
1.蛍光管は水草の成長を助け、過度に緑のスペクトルが多くないものを選ぶ。
当初はPG3,NAランプ,NAランプ,NAランプ,NAランプを使っていたが、これをNAランプ,PG3,
NAランプ,NAランプ,PG3に変えて黒髭増殖停止を待ち、現在はNAランプ,NAランプ,12000K,
12000K,PG2の順で5本である。
しかしPG2の本数を増やした方が黒ヒゲが少なくなるよう な気がする。
2.水質を弱酸性で低硬度が保てるように調整する。
pHと硬度を下げることによって水草の成長を促し、コケに回る養分を減少させるのが狙い だ。
私はキョーリンのセラ・ブラックピートとエーハイトーフを使用している。
3.水草の成長を助け水槽内を富栄養化にしにくい底床肥料を施肥する。
液肥を控えながら有茎類の生長を阻害しないように、テトラクリプトやイニシャルステ ィックを若干多めに施肥した。
これと共に水中の養分を排出すべく、2〜5日に一回、1 /3程度の水換えを行った。
4.発生した黒髭は水草を抜いて葉をカットするか、酸性液を塗って死滅させる。
アヌビアス系のような葉の丈夫な水草には水草を水槽から出して木酢液を塗る。
水交換時 には木酢液5ccを添加した。
5.黒髭を食う生物を導入する。
イシマキ貝は速度は遅いが付きはじめの黒髭は食ってくれる 。
増えすぎたフサフサした黒髭は食ってくれないようだ。
他にヤマトヌマエビも餌が無く なると多少は食ってくれる。
サイアミーズフライングフォックスも餌が無くなると黒髭を 食うようだ。
(ただし成長すると食わなくなるらしい) イシマキ貝の効果を体験するためには90cm水槽で50〜100個は必要になるが、確実に 黒髭は減少する。
黒髭の付いた葉には人力で貝を葉の上に乗せてやる。
貝の移動速度が遅 ければ黒ヒゲを食っていると言うこと。
さっさとどこかに移動しちゃうと黒ヒゲは食って いない。
6.水草の成長を促し、コケに回る養分を水草に吸収させる。
黒髭は活性の落ちた葉に付きや すく。
生長の早い葉には付かない。
そこで成長を促すべく液肥を適量添加する。
添加しす ぎると黒髭増殖を招くので、添加後1〜2日様子を見て黒髭が増える気配であれば1/3 〜1/2の水交換を行う。
換水頻度が高いので窒素も含んだジャレコのフロラシオン・プロを使用した。
水換え頻度 が低い場合はハイポネックス開花用が良いと思う。
7.微量元素を多く含んだ肥料を使用しないこと。
家庭園芸肥料などの方が黒髭発生は少ない。
上記の黒髭対策により、4月14日に発見した黒髭は5月13日現在で減少に転じている。
そして5月20日には黒ヒゲ増殖は完全に止まり、わずかに(貝などの)食べ残しがグロッソの葉に付着している程度だが、これもよく見なければ発見できない。
その後繰り返しADAのアイアンボトムやStep2の添加で黒髭の具合を7月まで観察してきた。
そして得られた自分なりの結論が上記「7」である。
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