携帯電話は分解してはいけません
F&F読者の方から不要になった携帯電話とPHSを頂いた。
私としてもはじめてバラす機種なので興味津々と言った感じ。
オマケに第一世代の端末だから、現行の小型化モデルより中を見て楽しいこと請け合いだ。
写真左端がDoCoMoのP205,最新機種ではないが現在の標準的大きさといえるだろう。
最も右側はDDI系用のPHS端末,この頃は小型化云々よりスペック適合が第一で設計されていた。
これがPHS端末の中身だ。
今では考えられないほど部品点数が多い。
右側が無線部で、部品は基板の両面に実装されている。
1st LocalのVCOがシールドケースに収められているのは、当時のVCO性能が悪く送信電波の回り込みでC/Nが悪化したからだ。
この辺りで設計者は随分苦労したに違いない。
部品の殆どはKyoceraのカスタム品番になっていて、当時はDDI系に参加する契約を結ぶとチップセットが支給される仕組みだったと聞く。
メーカの独自設計を許さない、DDIシバリ全盛の時期である。
したがってこの時代の端末はどれを開けても似たような構成になっていた。
記憶が曖昧だが、この時期の端末のIF周波数がVHF-TVの12チャネルの周波数に近くて問題になった事がある。
IFに干渉するためだが、そのためいくつか有ったIF周波数がだんだんと統一されていった経緯がある。
いずれにしてもPHSのIF周波数は229.35MHzとか240.05MHzとかその辺りになっているはずだ。
これはPHS用の電池の中身だ。
リチウムバッテリを使用するための(たぶん)充電回路が基板に実装されている。
変わってこちらはツーカーセルラー向けの京セラ端末だ。
基板は二枚構成になっていて、パネル基板には若干のロジック部品とキーパッドが乗っている。
無線部の部品が多いのもこの世代の特徴で、その部品自体の大きさも今とは比べものにならないほど大きい。
コストダウンと小型化のためには無線部の簡略化を行う必要があったのだが、部品自体に小型化を求める以外にその方法がなかった。
それでも当時としては画期的小ささだったわけだが..
これがリチウム電池の充電回路だ。
小型基板の両面にICやらディスクリート部品が乗っている。
当時は性能的にPDCに使いにくいリチウムだったが、営業的にはリチウム搭載を謳わなくては売れない時代にさしかかっていた。
この電池,3.6Vで1.5Ahもの容量があるが、送信スロットで急激に電流消費量が増えるPDCに於いては電池の内部抵抗を減らす為に高容量タイプを使わざるをえない事情があった。
なお、この端末にはDC-DCコンバータは実装されていない。
こちらはKENWOODのTDP向け端末だ。
左側がロジック部で基板の反対側はLCDとキーパッドになっている。
右の二枚が無線部基板の両面で、DC-DCコンバータと見られる部品群(オレンジ色のタンタルコンデンサ)が見える。
京セラ端末に比較するとVCO(ムラタ製)のサイズもPA(三菱製)のサイズも大きい。
DC-DCコンバータ搭載と引き替えに電池容量は850mAhと小さくなっている。
内蔵アンテナに関してだが、KENWOODが誘電体を使ったものを使用しているのに対して京セラは基板にコイル状のパターンを書いただけである。
逆に外部アンテナはKENWOODがヘリカルタイプの固定式なのに対して、京セラがホイップアンテナを使うなど違いが見られる。
内部構造や使っている部品から推測して京セラ端末よりKENWOOD端末の方が数割はコストがかかっているはずである。
TCXOに関してもKENWOODはケース入りの出来合いの部品を,京セラは単体の水晶振動子と基板上に作った回路で実現している違いがある。
IFのSAWフィルタはどちらもムラタ製,携帯電話売り切りが始まった当時、部品需要でムラタは潤っただろう。
ちなみに両社ともシールドケースには金属蒸着のプラスチックを使っていた。