PHSのシステムはどうなってるんだ?
PHSの規格の概要
使用周波数は、1895.15MHzから1918.25MHzだ。
これは、ディジタル携帯の1.5GHzを超えて2GHzに近いもの。
ちなみに電子レンジは2.4GHzだ。
チャネルセパレーションは300KHz,ただしインタリーブでないと使えない。
インタリーブとは、隣り合ったチャネルを使わない仕組み。
何故って?混信するからサ。
でも、相手が離れていて電界が弱ければ使える。
チャネルの有効利用ってヤツだね。
周波数範囲をチャネルセパレーションで割ると77,これが使えるチャネルの全てだ。
この77チャネル全てが通話に使えるわけではない。
(来年には帯域が広がるよ..チャネルが足りなくなってきたから)制御チャネルと言う、発呼/着呼や位置登録のための情報を流しているチャネルがあるからだ。
このチャネルは、事業者毎に決められた周波数を1波〜2波使用することになっている。
また、公衆基地局以外に家庭用CSの為の(2つの)チャネルも用意されている。
この制御チャネルでは、複数のCSが同じ周波数を使用して情報を送信している。
だから、混信することもあるのだ。
DDI基地局で「電波は来ているのに使えない」と言うトラブルもこれが原因。
サービスエリアの広いDDIは、この対策に苦しんだ。
各基地局(CS)が制御チャネルを使う頻度は1.2秒間に625μSだ。
たまにしか電波は出ていない。
(家庭用はインターバルが短い)一度圏外になると、少しの間回復しないのはこのためだ。
逆に、基地局が送信するインターバルに合わせて間欠受信するからこそ数百時間の待ち受けが可能になるのだ。
よって、圏外にいるときは電池消耗が激しくなる。
基地局を見つけるためには、最低1.2秒間は受信機の電源を入れなくてはならないからだ。
一つの物理チャネル(例えば、チャネル1=1895.15MHz)は、8つのスロットで構成されている。
(これをTDMAと言う)送信スロット4つと受信スロット4つ。
そう、送受信を同じ周波数で行うわけだ。
(これをTDDと言う)送受信が4スロット有ると言うことは、3人が同じ物理チャネルで通話できることを意味する。
なぜ4スロットで3人か??(4スロットで4人の基地局もあるが)これは、1C3Tと呼ばれる方式が多いためだ。
(1C=1つの制御チャネル用スロット+3T=3つの通話用スロット)
この図で分かっていただけるだろうか?
説明が長くなってしまったが、次は送信出力について。
PHSの送信出力は、PDC(ディジタル携帯電話)と表示方法が違う。
PDCは、スロットの(ちなみにPDCは3スロット構成)ピークパワーを表示している。
だから、ハーフレート(6スロット構成)にしても0.8Wのまま変わらない。
一方のPHSは、時間平均送信出力で表す。
10mWと言われているPHSも、スロット内平均では80mWも出ているのだ。
変調方式はQPSK(4値位相変調)だから、リニアアンプでないと歪んでしまう。
2GHz帯でリニアアンプだゼ、電源利用効率は20%以下だ。
つまり、高々80mWを出力するために400mWも消費するのだ!!
伝送速度は、384Kbpsだ。
速いだろう。
弱小プロバイダの専用線より速いぞ。
ただし、1スロット当たりで使える速度は32Kbpsだ。
将来的には、2スロット連続で64Kbpsの伝送が出来るようになる(ISDNの1Bに合わせる)が1年以上先になる見通しだ。
ここで、32Kの8倍が384Kにならないことに気が付いたかい?残りの128Kはどこに行ったかって?それは..その1:スロット間にはガードタイムが必要。
ガードタイムがないとスロット通しがぶつかっ てしまう。
その2:制御情報伝送のための時間が必要。
リンク保持やCRCチェックビット、同期ビット ユニークワード(フレーム同期信号)などが入っているのだ。
って訳で、32Kbpsなのだ。
PIAFSで使えるのは、もう少し少ないよ。
PIAFS用の制御ビットがいるからね。
ちなみに、PIAFSの1フレームは640ビット構成だ。
PHSのTCH(情報伝送部)が160ビットだから4倍。
将来は4スロット使用の128Kbps伝送が有るかも知れない。
音声符号化方式はADPCMだ。
通常(音声伝送)のPCMが8ビット×8KHzサンプリングの64Kbpsだから、圧縮率は1/2。
音がよい理由はこれだ。
8ビットPCMをADPCMトランスコーダで、4ビット×8KHzサンプリングにする。
仕様にはハーフレートやそれ以下のものも書いて有るが、どうなるかな?モデムを使用したデータ通信を行う場合、ADPCM符号化が行われると位相情報は欠如する。
人間の耳は位相情報に敏感ではないから音声通話用には無害なのだ。
従って、位相情報に敏感なモデムは使用できない。
強電界では9.6Kbpsが通りらしいが、決して安定はしないだろう。
盗聴しにくい2重のスクランブル。
音声は、16ビットのM系列でスクランブルされた後、さらにIDスクランブルがかけられる。
頭の悪いヤツには盗聴できない仕組みだ。
スクランブルコードを見つけるには、信号を受信してアレが一致するようにIDスクランブルを解く。
次に、ソレがコレになるように簡易秘話を解けばいい。
これが通話中のチャネル傍受で解く方法。
もっと簡単なのは、接続開始から解く方法。
接続中に秘話コードの交換シーケンスがあるからだ。
ま、やって見れば分かるけど他にもっと難解なコードを解かなくてはいけないけどね。
変調方式のQPSKだが、2ビット同時伝送だから無線区間は192Kbpsだ。
α=0.5のルートナイキストフィルタを通過するから、変調帯域は240KHz程度となる。
最初に書いた、チャネルセパレーション300KHzで、隣のチャネルが使用できないのはこのためだ。
規格では、変調帯域288KHz以下と規定されている。
パソコンでPHSを受信できるか?必要なハードウエアは、PHS帯が受信できる無線機。
受信帯域幅は200KHz以上必要だ。
直交復調器が有ればベストだが、(これを内蔵した受信機は)日本には存在しないだろう。
仕方ないからFM受信機を使う。
QPSKをFM受信すると、4値のレベルとなる。
それをA/Dコンバータで取り込んで、PCでサンプリングするのだがサンプリング周波数は1MHzは必要だな。
サンプリングしたデータを1ビット遅延検波しよう。
出てきた情報から同期クロックを再生して、サンプリング周波数にPLLをかける。
ココまで出来れば70%は完成だ。
検波されてNRZになったデータからユニークワードを見つける。
通話チャネルでは16ビット長だから、1ビットずつシフトしながらパターンマッチングを取る。
シフトスピードは384KHzだ。
これをモデム動作の1MHzサンプリングと同時に処理しなくてはいけない。
ユニークワードが見つかったら、その後20ビットを捨ててから160ビットを取り込もう。
ココでIDスクランブルを解くのだ。
10ビットのP/Nコードだから、豊富なメモリを利用してテーブル方式で行けば処理は軽くなる。
CRC計算もあるが、無視して良いだろう。
次に16ビットの簡易秘話を解く。
そのデータをADPCM復号すれば、ハイ出来上がり。
PentiumクラスをシングルタスクOSで動かせば、出来ないことはないと思うのだが..誰かやったら報告してチョ!