車の安全性について考える
はじめに
なんで、高速道路を法定速度以上でブッ飛ばしているヤツが安全なんて言葉を口にするのか?とおっしゃる輩もおられるだろう。
ごもっともです。
これに関して言い訳は致しません。
海外からも批判されたカンガルーバー
星空で前車を照らす補助ランプ
横転事故が絶えないワンボックスカー
先進国で一番汚いディーゼルエンジン
エアバッグは万能ではない
恐怖のブレーキペダル
ドアロックは安全か
海外からも批判されたカンガルーバー
カンガルーバーとかグリルガードと呼ばれている装備。
RVと名の付くモデルには大抵装着できるようになっている。
いや、問題が発覚する以前はメーカーでライン装着されていたモノだ。
これが何故危険か?それまでも、自動車雑誌等で問題視されていたが大事になったのは海外での事故だった。
日本国内仕様同様、海外輸出仕様にもカンガルーバーを装着したまま発売したのだ。
それを買った人が人身事故を起こした。
事故調査の結果、カンガルーバーがなければ重大な事故に至らなかった可能性が指摘された。
それが新聞等で報道されて問題が表面化したわけだ。
(日本では町中にカンガルーが居るのかと皮肉を言われた)
そもそもカンガルーバーとは広大な草原(日本では考えられないくらい広大な)などを走行していて、動物などをハネた場合に車が走行不能になると運転者の人命に関わる。
だから、そうした状況下でも自動車の損傷を最小限にするための機構なのだ。
だから、これで人をハネると被害者は重大な損傷を受ける。
通常の車は事故の際なるべくボンネット上にひとをハネるように設計されている。
ボンネットは柔らかく作り(日本車はそうでもない),はねた人がボンネットに衝突しても、なるべく衝撃を吸収しようとする。
コンシールドワイパーなど、非作動時に外側から見えないタイプのワイパーも実は安全装備だったわけだ。
(サンケイ新聞より)
もっとも、問題が表面化してからメーカはライン装着からディーラオプションに切り替えて罪を逃れようとした。
(未だにやってるのは三菱自動車くらいか)メーカ曰く「ユーザが勝手に装着したディーラオプション品にメーカは関知しない」らしい。
ちゃんと装着できるように設計されているのに..最近は安全そうなグリルガードになってきたのだが..ねえ?
私は、カンガルーバー絶対反対ではない。
日光の山奥に行けば鹿に出会うこともあるし、ホンモノのオフローダにとっては必要なものかも知れない。
それを必要としている人は、それの安全性と危険性を十分承知しているのだと思う。
何も知らずに、カッコ良い(今やカッコ悪い部類みたいだが)からとオプション装着して重大な事故の加害者になる人たちこそメーカの罠にはまった悲劇と言えないだろうか?おまけ
安全性では定評のあるメルセデスのゲレンデバーゲン(ジープタイプの車)のヤナセ仕様にはグリルガードが装着されている。
不思議に思った私は、某雑誌社を経由して問い合わせて貰った。
答えは「日本では、グリルガード装着車がよく売れるから」だった..ベンツのエンジニアが聞いたら泣くゼ..きっと。
星空で前車を照らす補助ランプ
何でも点いているモノは使おうと言う人たちが、情けないことに我が国には多い。
霧でもないのにフォグを点ける,ヘッドライトを消して補助灯だけで走る(これは法律に違反)確かに自分は明るくて走りやすいのかも知れないが、前を走る車や対向車は眩しくて迷惑なばかりか、眩しさのために他の物体が見えなく危険である。
補助灯は、ハイビームと同じくらいに考えていただきたいモノだ。
もっとひどいのは、リアフォグを点けて走るヤツだ。
外車に標準装着されることの多いリアフォグ、こんな車の後ろに付いたらたまらない。
リアフォグを点けて走るトンチンカンなドライバーはジジイに多い..と、思う。
横転事故が絶えないワンボックスカー
大型RVに代わって、ワンボックスカーが人気だがコイツが意外に横転事故を起こしやすい。
原因は3つ、狭い車幅に高い車高/柔らかいサスペンション/太いタイヤだ。
狭い車幅は日本の道路/駐車場事情を考えればやむを得ないだろう。
サスペンションとタイヤのセッティングは、メーカによると「ユーザの希望」だそうだ。
確かに固いサスペンションは「乗り心地が悪い」と評され、細いタイヤは安っぽく見えるのかも知れない。
横転事故は、交差点の右左折などでコーナリング中に追突された場合や横から衝突された場合に起きる。
スズキジムニーの横転事故がUSで問題になったことが有るが、まさにそう言うことだ。
横転事故は、横転することによって当該車両が反対車線に飛び出して二次災害を引き起こしたり、歩道を直撃するなどの危険性をはらんでいる。
また、当該車両自体も側面ガラスはほとんどフッ飛ぶから、ガラスによる人体の損傷も多く見られる。
実は鹿児島に行った道中でも、ワンボックスカーの横転事故を目撃した。
高速道路上の下りコーナでの単独事故であったが、ガラスは全て壊れ屋根はつぶれ悲惨な状態だった。
最近の車全般に言えることだが、アクセルを踏みつけてさえいればスムーズに速度は上昇する。
法定速度を超えたところで、ドラマチックな事は何も起こらない。
しかし、コーナを曲がったり止まったりする事は速度の上昇と共に難しくなる。
特に重心位置の高い車の場合は不安定になる要素が多いから、ドライビングにも慣れと技術を要する訳だ。
ワンボックスカーにハイグリップタイヤは止めた方が良いと..わたしは思う。
タイヤを替えるなら、雨天時などにグリップ性能が低下しにくいタイプにすべきだ。
通常の乗用車に比較してブレーキ性能の劣るこれらの車両は、雨の日にも出来る限り性能維持が可能なタイヤこそ安全につながるからだ。
先進国で一番汚いディーゼルエンジン
公害訴訟でもNOxの人体への影響が認知されたが、我が国のディーゼルエンジンに対する排ガス規制は非常に甘いものとなっている。
一つは「トラック業界」「運輸業界」と言う圧力団体が政治家に働きかけて、排ガス規制に反対しているからである。
しかし公害裁判で有罪となる可能性が高くなってきた頃、ディーゼル排ガス規制も幾分強化された。
(骨抜きという意見が多いが)ディーゼルエンジンから排出されるのは、NOxとPM(黒鉛状の物質)が大半を占める。
NOxは発ガン性や光化学スモッグの原因とされ、PMは喘息や花粉症に与える影響が多いと言われている。
ディーゼルエンジンは、燃料供給量を増やすとパワーが上がる。
その為、バスやトラックなどは燃料噴射量を規定値より濃く設定する場合が多い。
なぜなら、パワーが上がってドライバーに喜ばれるからだ。
燃料を濃くするとPMが非常に多くなる。
アイドリング中にも煙を吐いているような車両はまず正常ではない。
ドイツ本国では2年は保つと言われるエアコンのフィルタが、ここ横浜を走っていると半年で真っ黒に汚れる。
エアコンのフィルタがなかったら..PMは人間の肺を汚すことになるはずだ。
ある石油元売り系のパンフレットに「走行中は内気循環にしましょう,ディーゼル排気は人体に有害です。
弊社では、有害物質発生の少ない軽油を開発中です..」と書いて有った。
内気循環のまま走行すると、車室内の炭酸ガス濃度が上昇し眠気や判断力低下の原因と言われているが、それ以上に危険と言うことか??USなどでは、上記の事があり内気循環に切り替えても一定時間後には外気導入モードに切り替わる機構が必須の場合がある。
ディーゼル排気が、現在のガソリン車の排気ガスレベルにまで浄化される頃自家用車は電気自動車の時代を迎えているかも知れない。
一方で、クリーンなディーゼル車が多い(規制が厳しい)ヨーロッパでは、ディーゼルエンジンの熱効率の高さ(燃費の良さ)が炭酸ガス排出量を減らすとして、人気が高い。
NOxやPMも緑の多い地方では、自然分解が行われると言う。
我が国のディーゼルも、少ない緑でも自然分解されるくらいクリーンになってもらいたいものだ。
アメリカのLEV(Low Emission Vehicle)構想に合わせる形で、ホンダのLEVシビックや三菱GDiエンジンが開発されている。
しかし、10台の車を普通のエンジンからGDiに変えたとしても、有害排ガスレベルの高い我が国のディーゼル車を1台減したほうが余程環境には優しいはずだ。
エアバッグは万能ではない
国産車にも続々採用されるエアバッグ、実はエアバッグの発案者が日本人だったって事はどうでも良いのだが、ホンダ製乗用車(対米輸出車)に装備されたエアバッグはアメリカで問題になったことがある。
「エアバッグ装備を宣伝文句にしているが、ホンダのエアバッグは安全に貢献しない」と言うのがその内容だ。
もちろん、現在は改良が重ねられ安全に貢献するエアバッグになっているとは思うが。
では、安全なエアバッグとはどういうものか?衝突が始まってから作動する安全装備の動作状態を考えてみよう。
1.衝突による衝撃関知
エアバッグを開かせる制御は衝突関知がトリガーになる。
ただし、軽度な衝撃で開いてはいけない。
何故なら多重衝突の可能性もあり、最初の衝撃より強い衝撃に見舞われるかも知れないからだ。
従って、この時点でエアバッグは開かないのがマル
2.シートベルトテンショナー
衝撃を関知すると、シートベルトを巻き上げて人間の体が前方へ移動するのを防止する。
火薬を使用するのが一般的だ。
3.シートベルトリリース
人間の体が耐えうる最大Gまで達すると、シートベルトをわずかにリリースする。
締め付けておくと鎖骨骨折などが起きるためだ。
この機構は、1996年に日産が「我が国初の装備」と宣伝していた。
ちなみに、欧米車では10年前から常識。
4.エアバッグ点火
シートベルトをリリースすると、人間の体は前方に移動する。
これを初めてエアバッグで受け止めるわけだ。
しかし、チャイルドシートを反対向き(幼児を後ろ向きに座らせる)に設置するとエアバッグに押されたチャイルドシートが幼児の体や首を押しつぶすケースがある。
もう一つは、一台の乗用車に多数設置されたエアバッグが同時に開くことによる車室内の急激な気圧変化の問題がある。
そこで、欧州車を中心にシート荷重を測定し大人が座っていない座席に関連するエアバッグの動作を停止する装置の設置が進んでいる。
すでにメルセデスは助手席側シートに荷重センサを取り付け、ある程度以下の体重の乗員であると判断した場合は、エアバッグの膨らむ速度を低下させる機構が備わっている。
この様に、エアバッグとは付いていればよいだけの装備ではない。
エアバッグがあるからとシートベルトを締めない人も見受けるが、この場合は逆効果。
エアバッグに押されて車外に放り出されるケースもあるのだ。
恐怖のブレーキペダル
前方からの衝突で、意外に危険なのがブレーキペダルだ。
FR車はまだしも、FF車はミッションごとエンジンが車室方向にスライドしブレーキ関連装置を圧迫する。
そのため、ブレーキペダルが跳ね上がってしまうのだ。
衝突時は無意識のうちにブレーキペダルを踏みつけている場合がほとんどだろう。
従って、衝突の瞬間跳ね上がるブレーキペダルは足首や膝の骨折を招く。
ブレーキペダルとステアリングホイールに挟まれた足が圧迫されるなんて、考えただけで痛いぞ!衝突安全対策に熱心なボルボなどはどうなっているのか?一定以上の衝撃に対して、ブレーキペダルが脱落するように設計されている。
ドアロックは安全か?
教習所でも習ったと思うが、車に乗ったらシートベルトとドアロック。
コレが基本だ。
しかし、ヨーロッパでは走行中はドアロックしないのが普通だ。
何故なら事故を起こした際、ドアロックによって乗員救出が妨げられるからなのだ。
安全を重視する設計がなされた車では、事故の衝撃によってドアが開いてしまうことは皆無と言える。
むしろ、ボディーの変形によってドアが開かなくなるケースが多いのだ。
メルセデスのドアハンドルが美的センスを持たない形状なのは、事故の際にロープを結びつけて引っ張ることが出来るように..らしい。
我が国の車は、ボディーが変形してドアが開いてしまうおそれがあった。
そこで、ドアロックがいくらかでも有効ではないかという事で、教習所でもドアロックを教えているのだと思う。
しかし、いくら何でも今時の車がそれほど危険だろうか?そんな車を作ったら、安全基準の高い欧米への輸出なんて出来ないと思うのだ。
しかし!メーカもドアロックを勧める。
いくらユーザがドアロックしたくなくても、走り出したとたんバシッと自動的に閉じこめられてしまう機構が備わっている。
−−欧米車の車両工具と一緒にハンマーとカッタが一体化したような?モノが付属している場合がある。
ハンマーはイザという時(水没など)にガラスを割るために使用する。
カッターは、シートベルトが外れなくなった場合にそれを切断するためのモノだ。
事故の程度によっては、車が炎上したり二次災害を引き起こす場合もある。
従って、少しでも早く車両から搭乗者を車外に出すことが生存率を上げる上で有効だというのがヨーロッパ一般の考え方なのだ。
VC