熱帯魚と水草と炭酸ガス
■ 炭酸ガス添加の必要性
水草水槽を維持していくためには炭酸ガス添加が必要である。
一部の有茎水草には炭酸ガスを添加すると生長が早くなりすぎて美しさを失うものもあるが、その他の殆どの水草は炭酸ガスが充分にないと生長しなくなる。
炭酸ガスは水草の炭酸同化作用を照明と共に促すのだ。
ではどの程度の炭酸ガス添加が必要なのだろうか?本などを見ると5mg/l〜15mg/l等と書かれている場合が多い。
炭酸ガスの必要量は水草の種類や照明の明るさなどによっても異なる。
充分な明るさのない照明で炭酸ガスばかりを添加しても光合成は起きないし、肥料分の少ない水中で炭酸ガスと照明があっても、水草は美しく育たない。
■ 溶存炭酸ガス濃度に関して
有茎類は一般的に多量の炭酸ガス添加は必要としないものが多い。
カボンバ等では炭酸ガスの過剰添加で茎の部分が長くヒョロ長い水草に変身してしまう。
逆に炭酸ガス添加が少ないと、葉の開きが小さくなって弱々しくなり、茎がちぎれてしまうこともある。
従って炭酸ガス添加量を一概に決めることは出来ないが、水槽に入れた生長の早い水草の様子を見ながら徐々に増やしていくのが良いのではないだろうか?最近流行のリシアやグロッソスティグマなどは充分な肥料と強めの光量と多めの炭酸ガスで美しく育つ。
一方で炭酸ガス添加のしすぎは魚の鼻上げを招き、ヤマトヌマエビなどの動きが鈍くなる。
ヤマトヌマエビは徐々に炭酸ガスを増やしていけば60mg/l程度の濃度まで耐えるが、急激に水質を変化させると簡単に死んでしまう。
なれた人だとエビの動きなどを見ながら炭酸ガス供給量を調整するらしい。
リシアなどをメインに育てるのであれば、最低でも20mg/l程度,光合成による酸素の気泡が見たければ40mg/l程度の添加量になるはずだ。
水槽セット初期は比較的炭酸ガス添加量が少なくても(水草の光合成が活発でないためか)足りるのだが、水草の生長が良くなってくると炭酸ガス添加量も増やす必要がある。
もちろん水草の絶対量によっても添加量は異なる。
水草が炭酸同化作用を活発に行っていれば、炭酸ガス添加量を増やしても溶存炭酸ガス濃度は余り上がらないことになる。
炭酸ガス濃度と肥料と照明には密接な関係があり、従って一概にバブルカウンタで毎秒何滴,とは決められない。
■ 溶存炭酸ガス濃度の測定
様々な濃度試験試薬が売られているが、一体どれが正確なのか良くわからない面が多い。
テトラのCO2試験試薬は水質によって誤差が出るし、KHとpHから計算で求めるのも同様である。
バブルカウンタで1秒/1泡等と表現する場合もあるが、バブルカウンタのノズルの太さなどで分量は異なるし、光合成の盛んな水槽では炭酸ガスを(水草が)どんどん消費するので多くの分量を溶かし混まないと炭酸ガス濃度は上がらない。
炭酸ガス添加になれるまでは試験試薬に頼る必要があるかとは思うが、溶存炭酸ガス濃度試薬とKH,p
による計算を併用すれば大体の所はつかめるのではないだろうか?KHからの計算式はこちらのサイトを参考に、CO2(mg/L)=KH×10(-pH)×3.72×107
となっている。
■ 炭酸ガス添加用器具
電気的に炭酸ガスを発生させる装置からスプレー式ボンベまで様々な器具があるが、私は小型(10Kg)
の炭酸ガスボンベを使用している。
これは元々はCPUの冷却用(クロックアップ用)に持っていたものだ。
CPU冷却用としては液化炭酸ガスが必要なのでサイホンタイプのボンベが必要になるが、水草水槽用としてその必要はない。
(サイホン型でも流量が少ないので大丈夫)熱帯魚店で売られている液化炭酸ガスボンベが80グラム程度の内容量で千円程度するのに対し、10K
ボンベの再充填は2〜4千円である。
ボンベにはレギュレータを取り付けて圧力を落とす。
液化炭酸ガスの圧力は40Kg/cm2(室温だと50Kg/
cm2を超える)と高いので、これを減圧するわけだ。
レギュレータは酸素(溶接)用が使え、大型のDI
店や工業用ガス屋さんで購入できる。
価格は1万円前後と熱帯魚用品よりは安い。
自動添加を行うためには照明器具と炭酸ガス供給を連動させる必要がある。
光合成の行われない非照明時に炭酸ガス添加を行うと、炭酸ガス濃度が上がりすぎてしまうからだ。
電磁バルブはCKD製が手に入れやすく、私は高耐圧(100Kg/cm2)のものを使っているが、これはCPU冷却時にボンベ直結で使ったためである。
水槽用としてはレギュレータで減圧後に使用するので、5Kg/cm2程度の耐圧で充分である。
レギュレータの出力圧力は2〜3Kg/cm2に調整するからだ。
レギュレータは圧力を調整するものであり、炭酸ガス流量を調整するのはスピードコントローラと呼ばれるものだ。
これも工業用品から選べば安くて色々な種類がある。
水槽用としては毎秒数ccの量を扱う訳なので、出来るだけ低流量のコントロールが出来るものが望ましい。
なお熱帯魚用品として売られているものはADAとジャレコのものを使ったことがあるが、低流量のコントロール性ではADAの方が具合がいい。
炭酸ガスを水槽の水に溶かし混むためには拡散器などが必要になる。
これもADAとジャレコ製があるが、ADAの方が価格も安く見栄えも良い。
(でも水が入ってくる。
気にしなければいいのだが)拡散器の他にも螺旋状に誘導して、炭酸ガスの気泡を時間を掛けて溶かし混む器具もある。
拡散器は炭酸ガスを細かな気泡にして水に溶けやすくするものだが、殆どの気泡は水面にまで到達するため、添加量の1/3程度が溶けるに過ぎないのではないかと思う。
炭酸ガスの泡がフィルタの排水パイプ付近など、水流の強い場所へ上っていけば多少は溶解度が上がる。
100%溶かし混むためには炭酸ガスミキサーなどを使用するか自作すればいい。
パワーフィルタの出口側にこれらを接続して、強い水流と長いホースの中で炭酸ガスを溶かすわけだ。
ミキサは自作もできるが、水漏れには十分な注意を払いたい。
万一水が漏れれば、サイホンの原理で水槽の水を全て失うことになる。
またアクリルパイプ(アクリルは強力に接着できるので使いやすい)は意外に高価なシロモノである。
そこで自作派は塩ビパイプなどを使用するようだ。
炭酸ガスミキサの容量が少ないと炭酸ガスが水に溶けないまま水槽に供給されることになる。
ADAのパレングラス
パワーフィルタの左側が炭酸ガスミキサで左側が炭酸ガスボンベ。
■ 電気で炭酸ガスを発生させる仕組み
これは一種の電気分解である。
非腐食性の金属(ステンレスなど)と炭素棒を電極として電気分解を行う。
ここでH2OはH2となって大気中に放出され、炭素棒のCとO2が結合して出来た気体を集める仕組みである。
従って炭素棒は徐々に溶けて無くなるはずである。