ソフトバンクケータイを使う
SBMのホワイトプランが発表され、月額料金の安さに契約したのが2007年の春前だったろうか。
端末価格が値上げされる前に駆け込み契約という事で705Pを購入したが、シートキーがどうしても使いにくいのとSBM加入者が少なかったためホワイトプランのメリットにもありつけないまま解約した。
解約はしたが、値上げ前に購入した705Pは購入価格以上で売却できたので良かったと言えば良かった。
その後家族定額もスタートしたため、今度はスパボ一括で2台契約した。
スパボ一括なら毎月の負担額はユニバーサルサービス料だけだし、鼠券による自己紹介で実質1台分はタダなのだからお得だ。
購入した端末は810Tで、一応GPSも付いている。
特別割引額は1,280円なのでホワイトプランに加えて月額300円分の無料通話が付いてくると思えばいい。
私が加入した当時は2ヶ月間のパケット使い放題が無料で付いてきたので早速使ってみたが速度は遅かった。
都内などでWeb閲覧をしたとき、ドコモよりかなり遅いなと思った。
そこでスピード測定サイトで測ってみると50kbps前後しか出ていないのである。
以前FOMAが低速だという話を書いたことがあるが、まさにあの時のような感じだ。
(FOMAの速度測定時はブラウザ経由で測っていたの
で余り正確ではない。
ドコモのiモードは接続オーバ
ヘッドが大きいのでその分を考慮品測定を行う必要
がある。
)FOMAはといえばHSDPAエリアも広がって、1Mbps前後の速度は出ているし調子が良ければN904iで1.7Mbp
位までアプリでの測定でいける。
SBMの場合はアプリではなくダウンロード速度で測っているのでFOMAのスピードテストより条件は良い(FOMAもダウンロード速度で測ると2Mbpsを超える)はずである。
SBMはご存じの通りレピータやホームアンテナでセル半径を広げているので致し方ないと言えばそうだし、加入者が急増しはじめた頃のドコモと同じといえば同じなのだが、あえてドコモの失敗を真似しなくても良いのにと思う。
確かにレピータやホームアンテナの多用は低コストでエリアを拡大できるのだが、それに何のデメリットもなければまさに魔法の方法だ。
孫さんは画期的な方法でコストをかけずにエリアを広げると言って見せたが、実は画期的でも何でもなくパフォーマンスを犠牲にしただけだった。
そしてこれは通話時にも現れる。
住宅街や駅前では回線混雑のためなのか接続が拒否されてしまう。
イベント会場などで接続できなくなったり「お待ち下さい」表示が出るのなら解るが、普通の住宅街や駅前でこの状態は不便だ。
2007年度はauに次ぐ純増数2位だったし、3月度には50万人を超える加入者を集めたSBMだけにネットワークの帯域不足は深刻化しているのだろう。
周波数利用効率としてはauが最も高いと思う。
セクタ制御など、だてに高額な機器は使っていないというか、そもそもM社の基地局装置が高かっただけなのだがシステム的には良くできている。
基地局もその殆どは6セクタ構成だ。
ドコモは3セクタや6セクタ局があり、加えてセクタコントロールのないマイクロセル局で構成されている。
従ってauよりは帯域あたりの収容人数は少なくなるが、それでもピーク時には3千万人を20MHz帯に突っ込んだ。
SBMは前述の通りレピータやホームアンテナの多用やセクタ制御無し局によって周波数利用効率は悪い。
たった1.5
千万人にも満たない加入者で既に帯域が不足してしまっている。
auのセクタ分割効率は70%〜80%と言われているので、6セクタだとSBM基地局の4倍くらいの収容が可能になる計算だ。
ただauの周波数利用効率が高いと言っても、cdma2000の同期方式は隣接局のその隣の局との干渉問題もあるので基地局密度を上げにくい。
オマケに800MHz帯は回折伝搬なども起きるのでセル半径の縮小には不向きなのだ。
マイクロセル局を増やした場合と、レピータやホームアンテナでエリア拡大を行う違いは下の図を見ていただきたい。
実際にはこの基地局も(ドコモやauは)セクタに分けられている。
(塗り絵が汚くて申し訳ないが、下の絵の薄紫と青の6分割の図)色分けされている、例えば緑色の所は同一基地局エリアであり緑色の中に100人がいれば、その100人が同時にその基地局にアクセスすることになる。
基地局を増やせば緑色の面積は増えないが、レピータやホームアンテナを使うとセル半径(緑色の部分の面積)が大きくなるので同時利用者数が増える。
従って通信速度は落ちてしまうというわけだ。
マイクロセル化はその対策の一つで、セル半径を小さくすることで同一基地局利用者を少なくして帯域を確保する。
セクタ分割にしてもマイクロセル化にしても、出来るだけセル半径を小さくしてその中での同時利用者数を少なくするのが目的だ。
それと全く逆がレピータやホームアンテナの多用であり、結果として周波数利用効率が極度に落ちてしまった。
フェムトセルはマイクロセルのセル半径を更に小さくしたもので半径数メートルから十数メートル程度をエリア化するための装置である。
言わば超小型低出力の基地局で、ドコモでは2007年あたりからビル内や地下街などにこれを設置している。
従来はIMCSなどの中継局が利用されていた大型ビル内や地下街もパフォーマンス確保のためにフェムトセル局に置き換わってきている。
SBMはこのフェムトセルを各家庭に配る(売る?)と発表していたが現時点で動きはなく、予定が遅れているようだ。
同社によればトラフィックの8割方は屋内で発生するので、フェムトセルによってトラフィックを逃がすのが効果的であるという。
これに対してドコモやKDDIはフェムトセルを乱立させるのはデメリットも大きいと慎重だ。
これはフェムトセルと屋外基地局の干渉が起きるためで、CDM
方式の場合は混信こそしないが実質的なS/N比(RSCP)が悪化するので電波は強いが通信品質は悪いという事態が起きる。
もう一つの問題は通話品質だろう。
ドコモは専用線(一部Bフレッツを使うが専用帯域)での接続を行っているが、SBMは既存の自社ADSLの線にくっつけようとしている。
こうなると遅延管理など、余程うまくやらないと通話品質が確保できない。
ドコモのプッシュトークはIP接続になっているが、遅延が大きくて(シンプレックス通話とは言っても)使いにくいシロモノだ。
SBMがセキュリティ問題や接続安定性、遅延問題などをどう解決してくるのかは興味あるところである。
圏外が多いと言われるSBMだが、地方都市ではそこそこ使える。
大規模施設には中継器が用意されているので圏外になりにくいし、高層ビルが建ち並ぶような場所でなければ屋外でのエリアにも問題は少ない。
しかし都内のビル内などでは容易に圏外になる。
大規模施設には中継局があるが、雑居ビル的なところだとダメだ。
同じ周波数帯を使う(800MHz帯はまだ都内などでは使いにくい)ドコモが使える(auは当然大丈夫)のに比較するとその差は歴然である。
逆に首都高速の一部などではFOMAよりもSBMの方が使える。
雑居ビルや小さな店舗にまでフェムトセルが設置されれば有り難いが、それはかなり先になるだろう。
知人宅も窓際でないと使えないのでエリア改善フォームから要求を出してはみたものの「早期の改善の予定は御座いません」と丁寧なお返事を頂くのみだった。
地方都市は比較的使えるが、それよりも人の少ないところになると絶望的なのはやむを得まい。
(参考)世界遺産で使えるケータイ
SBMは何かというと800MHz帯がないからと言い訳するが、ドコモに出来ているのだからやる気になれば出来るはず。
基地局数にしても孫さんがドコモを抜くとぶち上げた46,000局には遠く及ばない。
(SBMとしては急遽中継局を混ぜて46,000局達成を宣言して話を終わらせちゃった)
SBMは基地局増加数が非常に少なくなっているが、これは前回の決算発表の際に設備投資を先送りにすると宣言された結果だと思われる。
設備投資無くしても加入者増が見込めているのだから、ある意味設備投資は無駄なカネである。
一方で通信屋であるドコモやKDDIは将来を見据える意味もあってか基地局をどんどん増やしている。
−−参考−−基地局増加数(1ヶ月)
ドコモ:約2400局 au :約700局 EM :約650局 SBM:約160局基地局増加数(昨年度)ドコモ:約1.6万局 au :約6千局 EM :約5千局 SBM:約5千局