プロテインスキマ


海水魚飼育で(今は)一般的に使われているプロテインスキマに関して考えてみた。
プロテインスキマは海水中に細かな泡を放出し、それに微細なゴミが付着して濾し取られると言う物理濾過装置の一つである。
世の中には様々な方式のプロテインスキマがあるが、違いの大部分は泡を発生させる部分だ。
最も簡単なものはウッドストーン(変な名前)等にエアポンプから空気を圧送し、これによって気泡を発生させる。
気泡はマイナスの電位を持つので海水中のプラスに帯電した微細なゴミを泡の周辺に引きつけながら上昇する。
ちなみに海水中の微量元素はプラスに帯電しているものが多く、細菌等はマイナスに帯電しているため、有害細菌はプロテインスキマでの効率的除去が難しい。
濾過能力は気泡の大きさ、それと気泡と海水の接触方法、気泡と海水の接触時間によって決まる。
気泡の大きさに関して0.6mm〜0.8mmが良いという説もあるが、もっと細かな泡が望ましいとする考え方もあるようだ。
細かな泡の集合体は1つの大きな泡より表面積が広く、細かな物質を濾し取りやすいと思われるが、余り泡が細かいと付着物質の大きさもそれによって制限を受けてしまう。
気泡と水流の関係は、いわゆる対向流のような接触方法が望ましい。
これはウッドストーンタイプでは実現しにくい方法である。
(エアリフトに頼らなければ可能)ウッドストーンタイプは簡単な構造だが、ウッドストーンを定期的に交換しなければ気泡の大きさが維持できない。
この為ホビー用としては余り見かけなくなってきた。
ベンチュリタイプはスキマーに海水を送るポンプの負圧を利用して大気を吸い込んで泡を発生させる方式だ。
ポンプ能力によって気泡の量と大きさが変わることと同時に水量自体も変わってしまうことが欠点と言えば欠点だが、比較的安価に作れて低消費電力であることから小型スキマーを中心に主流となっている。
ETSSに代表されるダウンドラフトタイプと称されるものは、このベンチュリタイプによって作られた気泡を含んだ海水を、ドライボール的形状の障害物に高速でぶつけて、更に泡を均一かつ細かくする方式である。
欠点はドライボール的形状物が抵抗となるために、非常に大きな容量のポンプが必要なことだ。
このため消費電力と騒音は大きくなりがちだ。
H&Sで有名なディスパーセレイター方式は、ポンプのインペラ自体を特殊形状にして空気と海水を攪拌する方式である。
これはダウンドラフトタイプに劣らぬ性能を、低消費電力のポンプで実現できるところがメリットである。
(写真参照)

いずれのスキマーを使用しても、海水中の微量元素やプランクトン類は濾し取られてしまう。
逆に有害細菌などは余り濾し取ることが出来ない。
そこで使用されるのがオゾンである。
オゾンを利用することによって、スキマー中の細菌を酸化すると共に電位を変化させて死骸を取り除くことが出来る。
ただしオゾンは生体に有害なため、スキマーの排水を活性炭処理などする必要があり、実はこの活性炭にも海水中の必須微量元素が取られてしまうジレンマがある。
プロテインスキマーの調整は空気量と水位の二つを決める方法が多い。
H&Sなどは水位が固定なので調整がやりやすいが、この二つともが可変出来るタイプでは調整を決めるまでに数日間を要すると思う。
一般的には水位を上げると薄い色の汚水が沢山取れるようになり、水位を下げるとその逆になる。
空気量を多くすると気泡が大きくなる傾向にあり、薄い汚水が沢山取れる。
この薄い汚水が沢山取れる状態をオーバスキミングと言い、有害物質であるアンモニアやタンパク質が余り取れない代わりに、海水中の微量元素などが沢山濾し取られてしまう。
スキマーがうまく調整できるとかなり濃い、ドロッとした感じの液体がカップに取れるようになる。
この汚水はアンモニア的刺激臭がして、非常に臭い。
取れる量はスキマーや水槽環境にもよると思うが、私の環境(90×45×60の水槽+110×30×40のサンプ槽にDAS BX-2スキマー)で1週間に1cm程の汚水がカップに溜まる。
スキマーに泡が出ている状態で水槽内に手を入れたりすると、急激に泡が下がってしまうことがある。
DASスキマーの場合にはやがて泡位置は戻ってくるが、シークロンやETSSでは泡位置が戻るまでに24 時間以上を要する場合もある。
スキマー内の泡と水流だが、これに乱流や回転流を積極的に付けて泡と海水の接触時間を長くするタイプがあり、代表的なものはシークロンだろう。
スキマー筒の下から吸水して下から排水するタイプは対向流による効果を期待しているものだと考えられ、DASはこの両方が行われている。
これにも賛否両論あり、乱流や回転流が(せっかく)泡に付着した汚れを脱離させてしまうという理屈だ。
しかしシークロンでも(DAS程ではないが)濃い汚水は取れるわけであり、一概に回転流が悪いとは決めつけられないような気もする。
回転流は確かに遠心力を発生させるが、泡の滞留時間が長くなるのも事実である。
DASはポンプ排出口の向きを自由に変えられるので、回転流でも乱流でも好きに設定できるが、オリジナル設計は回転流を発生させる向きに排出口を向けるようである。
泡は回転しながら浮力で上部に上り、それと分離された海水はスキマー筒下部の排水口から排出される。
ここでポンプ排出口の向きを変えて回転流を余り作らないようにすると、排水口から出てくる泡の量が増えるのだ。
ただし回転流を作らない方がカップに泡が上がって来やすい。
DASの場合には余程水位を上げない限りはオーバスキミングにならないので、泡が上がって来やすい=オーバスキミングしやすいとは考えられないが、今のところ定量的なデータは取れていない。