ブルーバードシルフィー


ブルーバードシルフィーに乗る機会があった。
1800ccモデルで普通のセダンタイプ。
乗ってまず感じたのはリバティーよりかなりマトモだという事。
ブレーキもアクセルもリニアリティが不足しているのはリバティーと傾向は同じながら、リニアな範囲はリバティーよりも広範囲である。
乗ってすぐに感じる違和感もリバティーよりはずっと少なく、普通と言えば普通に走れる。
ただし相変わらずダイレクト感のないブレーキ、そしてステアリングという感じ。
エンジンは2千回転以下は静かで振動も押さえられているのだが、3千回転を超えて高負荷を与えるとがさつなノイズに包まれ、まるで高回転まで回されるのを拒否するかのような振動もそれに加わる。
回転数自体はシフトアップポイントの6千回転まで昇っていくし、途中からパワーが極端に失われるという感じでもないのだが、あの振動と騒音は何とも耐え難い所がある。
ATは標準的だが、さすがにパワーがないから高速道路などではちょっと踏むと2段くらいキックダウンする。
わずかな坂道、人間がそれと感じないような坂道でもODが解除されてちょっとした変速ショックを感じる。
ブレーキと言うか制動力はかなり不安がある。
C180でもSLに比較すると(以前に書いたように)不安は大きいのだが、シルフィーは余程タイヤがプアなのか、すぐにABSが顔を出して焦る。
サスペンションは最近の日産車らしく過度なフワフワ感は無いのだが、だからといってシッカリしていると言うほどでもない。
そしてハーシュネス吸収はそこそこなのに、微振動というか、突き上げではないのだがザラザラした乗り心地なのである。
正確な原因は分からないが、ショックアブソーバの動き始めが渋いというか、そんな感じで小さな振動を良く拾う。
そしてこれはリバティーにも言えた事なのだが、振動と共にフロアパネルやドアがブルッと振動するのはボディー剛性の不足だろう。
C180より200〜300Kg軽いわけで、それによる燃費の向上やコスト低減などが行われているわけだろうから、ボディー剛性に贅沢を言ってはいけないのか。
しかしながらボディー剛性がもっと高ければ、路面からの微振動などに対しても有利になると思う。
現状だと路面の振動がサスペンションに吸収されず、その余った分がボディーを震わせているという感じ。
ステアリングフィールは相変わらずゴムで連結されたような、決して遊びが大きいわけではないしステアリングギアレシオがダルな訳でもないのだが、ダイレクト感に欠けて路面の状況を掴みにくく、高速道路で少々ラフにステアリングを操作しても何事も起こらないという感じ。
確かにこのステアリングフィールに違和感はあるのだが、これが絶対駄目かというとそうでもないような気もする。
つまり、路面の状態がどうであろうと何であろうとステアリングを切って進路が変更出来れば自動車としては使えるわけだ。
切り角と車両の動きが比例していないとしても、それはたいした問題にはならない。
人間はフィードバック制御によって、切れ角が足りなければ自然にステアリングを切り増すのだから。
このフィールは日本車の一般的なもので、シルフィーからC180に乗り換えると、そのダイレクト感に(大げさに言えば)驚くほどだ。
そしてラフに扱っても普通に走り、ちょっとくらいステアリングホイールを揺すったとしても進路を変える事なく走るシルフィーの方が、ずっと安楽なのではなかろうか。
ブレーキにしてもそうで、姿勢変化の割りに制動力の立ち上がらない感触ではあるが、だったら踏み増せば良いと言ってしまえばそれまでだ。
このセダンの価格は2百万円ほど。
大人4人を運べてトランクスペースもそう狭くはなく、少々パワーは不足するが普通に走れる。
燃費だって高速道路と空いた地方道を走って11Km/
は楽に超える。
おそらくC180を同条件で走らせてもシルフィーの燃費には及ばないかも知れない。
もちろん過給器のありなしの差はあるわけだが。
日産はこの車を団塊の世代をターゲットとしたと言っている。
確かに(悪く言えば)ジジ臭いハンドリングやインテリアデザインは、それを感じさせないでもない。
しかしそれに徹するのなら、もっとトヨタ的なふわふわサスペンションとインテリアがあっても良いのではないだろうか。
一見しっかりしたサスペンションを装いながら、実は剛性不足とコストダウンの犠牲になったハンドリングが好まれるのだろうか。
この価格ではこれ以上は出来ません。
これはトヨタの技術陣が半ば開き直って発言した言葉だ。
そしてセルシオが高価すぎるというメディアに反発して「真面目に車を作ればこういう価格になるんです」とも言った。
コストパフォーマンス最高の車を作るトヨタでさえこう言うのだから、日産にこれ以上を求めるのは酷なのかも知れない。
C180と同じ実用車として、価格は約半分なのだからコストパフォーマンスは対等だとも考えられる。