H4交換型HIDバーナを調べる
こちらでテストしたHIDバーナは上下スイングタイプと言われるものだ。
バーナ自体が上下にわずかに動く事でハイビームとロービームを切り替える。
動く量は発光点で約3mmである。
この量でビーム位置が変わるのだからセンシティブなものだ。
ところで普通のハロゲンバルブの寸法ってどうだったっけ。
単まずは手元のH4バルブにノギスを当ててみる。
ロービームフィラメントは台座の金具のツバの部分(3方向に爪の出ている位置/基準位置)から約32mmである。
ハイビーム用フィラメントとロービームのそれは約7mm前後にずれていて、約1.2mm上下にずれている。
以下にJISで規定された規格を示す。
フィラメント位置は以下のように規定されている。
ロービームとハイビームのフィラメント位置は最大±1.2mmずれても良いが同一面でも良いと解釈出来る。
ロービーム用フィラメントの中心位置は基準位置から31.25mmのところだ。
ロービームとハイビームの軸方向の中心位置の違いは約6.5mmとなる。
図の指サックみたいなものはロービーム用の遮光板を示した図だ。
これがH4のハロゲンランプとの比較だ。
ん?発光位置がずいぶん違わないか?
解りやすいように黒いチューブを置いてみた。
ハロゲンバルブのロービームフィラメント位置
ハロゲンバルブのハイビーム位置
つまりこのバルブはハイビーム位置の発光点とそろっているのか。
上下スライドなのでスライドさせるとわずかに発光点も前後するが、誤差範囲でしかない。
ハロゲンバルブのロービーム位置とHIDの発光部を揃えた場合
こんなに違っている。
これで良いわけ?
いや、良いわけはないだろうなぁ。
そこでこのバルブをそのままシグナスXに装着してみた。
シグナスXはマルチリフレクタヘッドライトである。
車の方は純正でHID装着であり、実験出来るのはシグナスしかない。
まずは約4m離れた急斜面にロービームを当ててみる。
多少色が変わった所から上が急斜面で、その手前は道路である。
なんかレッツ5のビームと配光は余り変わらないというか何というか。
ロービームで路面を照射するとこんな感じだ。
グレアによって左上のガードレールや右側のガードレールに光が当たっている。
スライド式バーナーをそのまま付けたような酷さはないものの、対向車や前行車はそこそこ眩しいはずだ。
ハイビームだとこうなる。
単にロービームが少し上を向いただけという感じだ。
ロービームを低めにしているのでハイビームが無限遠方向を向いていない。
上下式なのでグレアがそう多いとは思えないが、一応対策して変化があるかどうかを確認してみる。
行うのは遮光板の黒塗装とキャップ(シェード)の製作だ。
キャップはHIDバーナからの直接の光が前方に出ないようにすることが目的で、ハロゲンランプの先っぽが黒く塗ってあるのと似たようなもの。
さてキャップを何で作るか。
と、見回したら単二電池があった。
これがまた、遮光板のRにぴったりなのである。
電池は外装板と内側のケースの二重構造になっている。
内側のケースはかなり柔らかい材質、その上に樹脂が挟まっていて薄い鉄板の外装という構造だ。
この内側のケースのみを使う。
取り付けは小さな穴を開けてステンレスワイヤーで縛った。
小ねじを使う手もあると思うが、その場合はねじロックを忘れずに。
電池ケースにしわが寄っているが、耐熱塗料を乾燥させるためにガスバーナであぶったら溶けた…
(ピンぼけは勘弁を)
ちなみに構造はこんな感じになっている。
この対策を施して一体何が変わったのか。
まずは壁面への照射パターンを見る。
メインビーム上方がカットされている風になった。
ただし配光は狭く中央にのみ明るい部分が出来ている。
これは発光点がハロゲンバルブと違うためで、リフレクタが設計値どおりの動作をしていない。
多少周囲が明るくはなっているが、路面を照らしたメインビームが反射して壁面を照らしている。
(道路の向こう側が壁(正確には急な斜面)になっている。)
路面を照らすとこんな感じ。
(未対策品の光軸のままなので下を向きすぎている) 未対策品の写真と比較していただければ解るが、左上や右側のガードレールを照らす光はほぼ無くなっている。
純正でシェードの付いたヘッドライトならば全く問題はないと思うのだが、そうでないヘッドライトの場合はシェードというかキャップを付けないとダメだ。
光軸が下過ぎるのでハイビームも全然ハイではなくなってしまった。
多少調整の狂ったというか、この程度のセッティングで走っている車などいくらでもいる程度のロービームと変わらない。
ロービームを下に向けすぎているのでハイビームもそれに比例して下を向いている。
正しく調整すれば正しく使えると思うが、ようするにハイビームの照射角が余り広くならないのでセッティング自由度が減っているわけだ。
ちなみにロービームは40m以上先を照らさない(下のレイブリックの説明図によれば3m離れて3cm下がっていればOK)ようにすればほぼ規格どおりになる。
上下スイング式の改造ではこのあたりが限界だが、発光点がずれていて照射角が狭い事を除けばおおむね良好だと思う。
グレアはかなり減っているので前行車や対向車に大きな迷惑をかける事はないだろう。
配光パターンそのものは、発光点がハロゲンランプとは違うため仕方のない部分はある。
台座というか3方向に爪の出た金具の中央の穴を拡大して、この台座をバルブの裏から突っ込めばそこそこ良い位置になる。
が、これは0.5mm厚の鉄板なのでそう簡単に穴が拡大出来ず断念した。
位置のずれに関しては上下スイング式のバルブ自体(様々なメーカのものがある)を選ぶ以外にはない。
なお根性があれば、一度分解してキセノンバルブを付け直す事は構造上可能だ。
ここまでやったらスライド式はどうなのかと興味がわいてくる。
で、スライド式を入手した。
スライド式はハイビーム用のスリットがあり、そこから光が漏れるためにグレアが多い。
最近のものではこの対策用の金具?が付いているものもあるが、何も考えずに使えば対向車にも前行車にも迷惑になる。
非HID車にHIDキットを取り付け、メインビームが適正位置だからと喜んでいるとグレアが迷惑な状態になっていることは少なくない。
特にマルチリフレクタで奥行きの浅い、扁平なヘッドライトではまともな配光パターンにならない。
ノーマル状態のバルブがこれだ。
ハロゲンバルブと発光点の位置は合っている。
遮光板はアルミ製でバーナと同じ基台に取り付けてある。
ロービーム時にはスリットが左右の隙間を残してふさがる。
ハイビーム状態にするとバーナが約7mm移動して遮光板が開くのだが…
開くと言うより隙間が開くという感じだ。
おそらく多く開けると遮光板の意味がなくなるというか、グレアが増えるからなのだろう。
ただシグナスのマルチリフレクタライトの場合はバルブ発光点よりむしろ後ろ側に光が出ないとまずいような気がする。
とするならば、スリットの前方を少し塞いでアルミの遮光板を短くした方が良い。
が、まあ最初はこの状態でテストしてみよう。
発光点が半分しか見えていない。
たぶん、これは以下の図のようなことだからだと思う。
現状の遮光板で光が漏れるとすれば赤い線の位置のものだ。
ここは発光点ではなく電極保持部分ではあるが発光点に照らされて光っている。
一方で発光点だけを隠すとすれば青い線の通り遮光板はもう少し短くても良い。
例え遮光板があろうがグレアが出る事は上下スイング式バルブで解っている。
キャップの部分が短すぎると思われるからだ。
マルチリフレクタの扁平なライト構造では、このキャップでは発光点が見えてしまう。
そこでアルミ板でここを延長して、ついでに内部も黒く塗る。
アルミ板は例によってステンレスワイヤで金属板に縛り付けた。
遮光板を外さずに作業したので、黒色に塗るのに苦労した。
カバーの延長した様子もお解り頂けると思う。
どこまで塗るかは迷ったが適当に。
外側部分のキラキラは余り関係ないと、この時は思っていたので塗らなかった。
もう一つ実験してみる。
遮光板を少し切り取って、その代わりスリットを狭くする改造だ。
遮光板はバルブユニットから外さずに行ったので、結構大変だった。
切り取ると光が漏れるわけで、その分だけスリットを狭くしなければならない。
スリットは0.3mmのアルミ板で塞ぎ、発光点の遮光の方は0.1mm厚のステンレス板を使った。
ステンレス板の方が弾力性があって丸くなりやすいからだ。
一応黒く塗ることにするが、だんだん雑になってくる。
スリットから見た発光点の具合はこんな感じ。
配光特性を見てみる。
右上の方にうっすら余計な光が見えるが、これは1作目の方。
実はこれ、ライト側をのぞき込んでみると左側通行用ライトであれば左上がりになるべき部分ではないかと想像出来る。
シグナスXの場合はグローバルモデル?設計なのか、ヘッドライト配光は左右対称だ。
従って、本来この光が当たる左上がりのロービーム部分にはハイビーム用の反射鏡があるという訳でこの距離だと左右反転しておかしな方向を照らしている。
なお2作目はスリットを狭くした事もあって、このビームはかなり少なくなっていた。
その2作目は写真を撮ろうとしてもちらつきなどで上手く発光しなくなった。
路面が濡れているのと手ぶれの関係で映りは悪いがロービーム。
ハイビーム
このバルブ、色温度が高くて暗い。
相当青い感じがするが、公称6000Kだそうだ。
だが青すぎてチバラギ仕様(死語?)のようなバカっぽさ全開になってしまうのでオッサンには辛い。
ちょっとこう、恥ずかしさを通り越したような…
そしてもう一つ重大な問題が発生した。
上にも書いたがちらつきが多くてマトモに使えないのである。
交流点灯用のバルブを直流バラストで使うとちらつきなどがあるという話は聞くが、現在使っているのは交流型のバラストである。
一体何が悪いのか解らないが、相性みたいなものでもあるのかなぁ。
配光は満足出来るのだが、仕様違いか初期不良のどちらかだろう。
いずれにしても青くて暗くて不安定なのでこのバーナは使えない。
仕方がない、移植するか。
今回の目的はスライド式バーナの特性を知りたいわけで、安定して点灯してくれないと困る。
そこで上下スイング式の発光管を取り外してスライド式の方に移植する。
上下スイング式の方はバラバラにしてしまう。
と、発光管自体の長さがちょっと違うじゃないか。
でも全く長さが不足するわけでもないので移植を続行する。
耐熱プラスチックにはシリコンのようなもので接着されているので、ここをほじりながら解体していく。
組み立ては逆に、シリコンで接着する。
これでチカチカすることもなく、青すぎることもなく発光させることが出来た。
試しにバーナーを少し引き抜いてみると、スライド式バーナのような配光になっていった。
グレアの原因は、元々付いている斜光板(シャッタ的に動く方ではなく周りのもの)のエッジより発光点がわずかに高いため、そこから漏れた光がハイビーム側のリフレクタに当たるのだ。
これは上に書いたように、左上がり用配光のヘッドライトでは問題にならない部分であると思われる。
実車テストが面倒になったのでヘッドライトユニットを外して室内に持ってきた。
この状態ではまだ遮光板などは黒塗りしていない。
レーザポインタを当ててどのグレアがどの部分から出ているのかを突き止める。
これで解った事は、バルブ先端のトップシェードがリフレクタに陰を作り路面手前を照らさなくなっている事だ。
かといってこれを小さくすると発光部が見えてしまって眩しい。
ちなみにハロゲンの場合はフィラメント見えまくりだ。
あらかた調整して部屋の壁に照射してみる。
距離が近いので道路向こうの壁面に移した状態とは多少異なっているのと、斜めになっている。
遮光板その他が仮組み&黒色塗装前の状態である。
右下にネコが写っているのはご愛敬で。
バーナ周りの改造はこんな風になった。
先っぽの筒状の部分の延長、周りのガードのスリットを狭くしている。
実際にシグナスに付けてテストする。
今回も雨の中のテスト、そういえばSLにキセノンを付けた時も雨だったっけ。
何せ暗くなければテストが出来ないので雨の中でもテスト敢行なのだ。
まずはいつもの壁面に照射するが、ヘッドライト前面に雨滴が付いているのでパターンがぼけている。
壁面というか急斜面の色の変わっているあたりにメインビームのエッジがあって見にくいが、そこそこカットされている。
ぼんやり周りが明るいのは路面からの反射で、雨で路面が濡れているので余計に目立つ。
ロービーム(手ぶれ失礼)
上下スイング式に比較するとビームの切れが悪いのと手前の部分の配光パターンが乱れている感じがする。
かなり雨が降っていたので条件が異なるのは事実なのだが、配光パターンのみを見るならば上下スイング式の改造版の方が良いかも知れない。
ハイビーム
上下スイング式に比較すると、ちゃんとハイビームになっている。
照射角も広いので遠方も見やすい。
壁に照射した図に線を書き入れてみる。
緑のラインがメインビームの上端である。
赤の部分がグレアで、写真では殆ど気にならない程度ではあるが暗い道路ではこの程度でも明らかな不要ビームだと感じる。
他のページなどを見ると、これよりもっと激しいグレアというかスポットが出まくりなのに「グレアもなく配光は全く問題がない」なんて書いている所がある。
そんな図太い神経が羨ましい。
この光の漏れは例によって左上がり配光のもので、シグナスXの場合はハイビーム側のリフレクタに光が漏れている。
遮光板の細工は行ったのだがまだ少々足りなかったようである。
調整の基準は3m離れた壁に照射した時に、メインビームの上端が車両のヘッドライトの位置より3cm下がった所に調整しろと書かれている。
また乗車人数が多い場合は6cm下げ、それでもパッシングされるならもっと下げろと。
結局レベライザの付いていない車にスタンダードな調整ではダメだと言う事なのである。
ちなみに上の写真だとメインビームの位置は道路から15cm程度しか上がっていない。
壁面までの距離は約4mなので、本来の位置に調整するならば赤く囲った枠より更に上あたりにメインビームのエッジが来る感じになる。
勿論そこに調整したらレベライザが付いていない&姿勢変化の大きい&コーナでバンクさせる単車なので前行車の迷惑になる。
なので私はより下向きに調整しているというわけだ。
今度は更に他メーカ製だと思われるバーナで試してみる。
より良いものを求めてと言うより、単に興味があっていじくり回しているだけだ。
ここでは配光の話だけにしておいて、バラストを含めたHIDコンバージョンキットそのものの事は別記事にした。
今回のものも例によってフルオリジナルではダメだと思うし、キャップ部分が浅いので余計にグレアは激しいだろう。
これは基本的には前後スライドなのだが、スライドしながら発光点が少し上下に動くようになっている。
国産だとレイブリックが方式は違うが同様のバルブを出していて、88HOUSEはテーパスライドという名称で発売している。
いずれも中国製とは桁の違う精度で組み立てられているが、お値段の方もまさに桁が違う。
なお88HOUSEはシェードなどのパーツ販売もしており、改造派には色々と役に立ってくれる。
H4ハロゲンランプのフィラメント位置を正確に再現しましたなんて謳い文句が出てきそうだが、左右のバルブを見て解るとおり製造誤差が激しい。
誤差が激しいと言うよりガタがある。
写真左のものはかなりスムーズに動いてガタも少ないが、右のものは見ての通りそもそもバルブが斜めだし。
まさに低品質低価格の代表のような作りだ。
正確な動作を求めるとすれば、前後に7mm移動すると共に上下に1.2mm動けばいい。
中国製もその努力は認めるのだが…
ハイビーム用スリットに遮光板がないのでこれを取り付ける。
いくら何でも何も無しだと実用にはならないだろう。
遮光板はアルミ板を切り抜いてシリコンで接着するだけだ。
大抵のバルブのホルダ部分にはスリット状の穴があるので、そこにはめ込めばいい。
スリット部分の幅は前回テストしたものよりも狭い。
この後全体を塗装して斜面に配光を映してみる。
なお今回はテスト時間が早かったので周囲が少し明るい。
ビームを下に向けているのはグレアがあるので余り上に向けられないためだ。
原因としては発光点の上下方向の位置が正しくないためだと思う。
スライド+スイングの機構のガタによるものである。
下向き目に調整しているので照射範囲は狭いのだが、その割に対向車は眩しいと思う。
ハイビームはごく普通だ。
次なるバルブはこれだ。
構造的には上でテストしたものと同様ながら遮光板が付いたものである。
ただしDC用となっていて、ACバラストでは点灯しない場合がある。
一旦点灯してしまえば消えることはないのだが、点灯しない時は何度もイグナイタを起動させなければならない。
遮光板は付いている。
配光特性は3番目のバーナに遮光板を付けたものより良い。
スライドしながらスイングするタイプなのだが、ガタが多い。
グレアが見えているが、これの原因はわかっているので対策は可能だ。
遮光板とスリットの隙間が大きすぎるのである。
これは左上がりビーム用のそれではなく、ハイビーム用スリット幅の問題だ。
色々やっていると、どのあたりに出る不要なビームがどの部分を原因としているのか分かるようになってくる。
メインビームのキレはそこそこ、下向きに調整すれば使えると思う。
ただしグレアというか光の漏れは対策しなければ、下手すると前車のバックミラーを直撃する。
全体にぼんやりした感じは、発光点の位置がハロゲンバルブと異なるためだ。
これでガタが少なければ、そして最低限のグレア対策を行えば上下スイングタイプ同様に使える。
ここでもグレアが少ないバーナは配光が狭い事が分かる。
ロービーム
ハイビーム(手ぶれ失礼)
正しく使えて当たり前と言われる国産、スタンレー電気のブランドであるレイブリックをテストする。
これは7万円台のプライスタグをぶら下げている用品店があるくらい高額なもので特価品を狙ったとしても4万円近い価格になる。
バーナ部分は中国製とは違って比較的シッカリ出来ている。
動き自体は前後スライドに上下動を組み合わせたもので、こう書いてしまうと中国製のそれと同様になってしまうが実際の動きはちょっと違う。
中国製が前後しながら上下するという弧を描くような動きなのに対して、レイブリック製はカムを使って動作させている。
しかし移動量は5mmとなっている。
H4のフィラメント位置の差は7mmではないのか。
この機構のために中国製バーナに比較するとバルブの後ろ側の寸法が20mm程度長い。
寸法に余裕のある車種ならば問題はないが、ワンボックスカーなどエンジンルームの狭い車だと付けられない可能性がある。
以下はスタンレー電気さんのページからの無断借用の画像だ。
左がハロゲンバルブで右がHIDである。
ロービームは左右の照射角が狭くなっている。
グレア対策のためにリフレクタへの照射を制限している事が伺える。
ハイビームは更に上下角が狭い。
上下スイングタイプの、ロービームを上に向けたような照射パターンと同様だ。
これもグレア対策のためにハイビーム側、つまりリフレクタの下半分に光が行かないようにしているのが原因だ。
遮光板の形状こそ前後スライドタイプに見えるが、実はハイビーム用のスリットは開いていない。
これはトップシェードありのものと無しのもの。
両方ともハイビーム用の穴は開いていない。
中国製のシェードがそのまま使えたりする。
トップのシェードは大きく見えるが実際には発光点の近くは隠していない。
隠す割合としては中国製と同じ程度で、単に長さが長いだけである。
今回は借り物なので何も細工をせずに装着してみる。
なお一旦装着すると外すのが結構大変だ。
まずは配光。
上下に狭いというか手前が照らされていない。
ロービームの時にバルブの光が直接漏れている。
トップのシェードが小さすぎるのだ。
ロービーム
ハイビーム
配光的に近いのはスライド+スイングタイプ、この一つ前にテストしたモノだ。
前方への不要光は上手くカットされているが、照射角が余り広くないので暗く感じる。
色温度は今回テストしたもの全て公称6000Kだが、異様に青い1本を除くと中国製はそこそこ揃っている。
レイブリックは中国製より明らかに色温度が低い。
以前はガラス面をブルーに塗ることで色温度調整を行っていたらしいが、現在はクリアガラスである。
これで手前が明るければいいのだが、難しいところなのだろう。
レイブリック製が暗いと言われる所以かも知れない。
何故手前が暗いのか。
バルブ移動量が5mmと少ない為なのか。
そう思って発光点を比較してみた。
解りにくいのでストロボを炊いて写してみた。
フィラメントの位置が合っていない。
上下スイングタイプほど酷くはないがずれている。
スライド量も能書きでは5mmだが実測だと4mmちょっとである。
しかもソレノイドが10W近くも電力を消費する。
バルブを並べてみた。
ほぼ同じ向きにしている。
横方向への光の出方というか遮光板のエッジ部分の高さの違いがわかるだろう。
左右に出る光が少なければグレアは出にくいが、照射角が狭くなる。
バルブの動き自体は前後+上下になっているが、ようするに上下スイングタイプと同じなのである。
おそらくハイビーム側反射鏡に光を出してしまうとグレア対策が難しくなるからなのだろう。
でも、これだったら中国製の上下スイングタイプで良いんじゃないかと思う。
レイブリックやサンヨーテクニカを基準とするならば、中国製上下スイングタイプは最小のコストでそれらと同様な特性を得ている事になる。
ただし前方への漏洩光対策のためのキャップは必要だけど。
なお最近はスライド式用のスリット無しシェードを使った上下スイングタイプもあり、これは良いかもしれない。
繰り返しになるがグレアが少ないバーナは配光が狭い訳だ。
なおここでは配光に関する事だけにして、配線が面倒だというお話は別のページにまとめた。
最後にノーマルのハロゲンランプである。
色温度は低くて暗いがグレアは出ない。
ロービーム
ハイビーム(手ぶれ失礼)
合計5種類のバーナをテストした。
中国製の激安シリーズでは、キャップを付けるのみでそこそこの配光が得られたのが上下スイングタイプだ。
ただし実験に使用したバーナは発光点がずれるためにシグナスXでは配光が悪化した。
なお上下スイング式の全てで発光点がずれているとも思えないので、このタイプを選んで先端にキャップを付けるのが良いかと思う。
発光点のズレという意味では前後スライド型でもH4ハロゲンランプと数ミリも違っているものがある。
上下スイングタイプだと配光角はハイビーム側が狭くはなる(ロービーム側は大丈夫)が、レイブリックやサンヨーテクニカと変わらない。
上下スイングタイプ同様当たり外れはあるが、前後スライド+上下スイングタイプもガタの少ないものを選べばうまく動作する。
この場合はスリットからの光の漏れを車両に合わせて調整というか対策する必要があるが、上下スイングタイプと違ってハイビームの照射角は良好だ。
ハイビームの照射角が狭くても良いのなら、このタイプのハイビーム用スリットを完全に塞いでしまうとレイブリック同様の動作になる。
メインビームのカットライン上方にえくぼのような光が漏れるのは、このスリットが広すぎるためだ。
ハイビームもロービームもそこそこを望むならば個別にいじくり回すしかない。
PIAAのものは、当初はレイブリックなどと同様のものだったらしいが現在売られているものはハイビーム用スリットが開いているとの事だ。
逆に88HOUSEは当初はハイビーム用スリット付きのシェードだったのだが、最近のものはこれが無くなっている製品がある。
グレアを考えるとハイビーム用スロットは難しいと言う事なのだろう。
現状でハイビーム用のスリットがある国内メーカの代表的ものはPIAAとベロフあたりだ。
中国製3種類の実際のバーナの動く様子を撮ってみた。
レイブリックは借り物だったので撮る時間がなかった。
ソレノイドに400mA(レイブリック製は12Vを加えると3Aも流れるが、何らかの制御がされている模様)も流れるのか、と、ちょっとびっくり。
もっと低電力で動作するものだと思った。
ソレノイドが5W以上食うとなるとそこそこ発熱もするだろう。
上下スイングタイプ
スライド+スイングタイプ
前後スライドタイプ
スライド式の4本3種類も、国産を除けばそのままではグレアが激しかった。
レイブリックも前方にはおかしなスポットは出ないが、発光点が見えてしまうことによる周囲へのグレアは出た。
それぞれ最適に調整というか加工すれば同じような配光にすることは可能だ。
今回は実用よりも実験という感じで極限まで追求していないのでちょっと中途半端で申し訳ない。
自分で使うとなればちゃんとした配光になるまでセッティングするのだが、しかしガタが大きいものもあるので経年変化などを考えるとちょっと不安だ。
上下スイングタイプは構造が簡単なためかガタを感じなかったが、スライド+スイングの外れ?品はガタが多いなんてレベルじゃない。
レイブリック製は信頼性を買うという感じだろうか。
一般小売価格で5万円は、中国製の安物の10倍の価格だ。
補修用バルブ(品番はDEP082)も単体購入出来るが定価は27,300円,両側用の2本だと54,600円!と決して安くはない。
ちなみにベロフ製は更に高額で63,000円〜89,250円!これはバーナ2本の価格で、バラストは含まれていない。
これはもう、売りたくない価格なのかと思った。
ら、ベロフの方はバーナーとバラスト別々に買う方式だそうで、つまりこのバルブとバラスト(数万円)の両方を買わなければならない。
10年以上前の、HID出始めの頃の純正品ならいざ知らず、後付け社外品としてはとびきり高額なものだ。
88HOUSEはこれらメーカに比較すると安価だ。
パーツ単体もあるし、上下切替式も前後スライドやテーパスライドなどの種類がある。
実験したい欲に駆られるのだが、全部買ったらいくらになるんだ!みたいな。
しまりす堂扱いのバーナは安い。
中国製だとは思うが、事前に連絡すれば店売りというか手渡しも可能らしい。
場所は東京都の西側、東村山市だ。
何にしても頭を使わずに装着して全てがうまく行く保証はない。
まあハイビーム用スリットのないタイプなら問題は少ないと思うが、その他のものだとリスクはある。
ベロフはロービーム側もハイビーム側もソレノイドでプッシュ/プルする方式らしく、スプリング保持タイプより電力は食うが動作は安定する。
使える頭と手先を持っている方は中国製の上下スイングタイプ(ただし発光点が合っているもの)を使うのがお得だ。
多少の加工を要してもハイビームも重視したい向きにはスライド+スイングタイプか。
何しろ失敗したとしても千円か2千円で済むのだ。
ちなみに中国製安物HIDのインバータやイグナイタの寿命は長くはないとの話も聞く。
(サンヨーテクニカ並みに壊れるとか)
特に熱のこもりやすい、過密状態のエンジンルームに取りつける場合は注意が必要である。
壊れたら買い換える、それでも安い、これが中国クオリティというものだろう。
ハイエースだったかベルファイアだったか忘れたが、HIDを付けたら車検に通らなくなったという記事があった。
整備工場曰く「ハイビームもロービームも余り変わらないから通りません」だそうで、しかしオーナはそこではじめて整備不良に気づくという内容だ。
この車、ようするに年中ハイビームで走っているような状態だったと想像出来る。
記事によればいったんハロゲンに戻して車検を通した後、再度HIDにしたとか。
理由は「前行車の車内がハッキリ見えるくらい明るい」からだというのだが、全く迷惑な話である。
ノア(ワンボックス)に付けた記事でも「眩しいと好評だった」なんて表現があったりする。
眩しい=明るいライトという認識なのだろう。
配光は問題ないと書かれているが、実際に他車を照らした写真を見ると前行車の車内まで明るく照らしちゃってたりする。
当該ページをリンクしたいのは山々だが遠慮しておこう。
この手の訳の分からない人間の逆恨みは常人には理解出来ないものがある。
サンヨーテクニカのものでもハイビームの照射角が狭いと言う事で、遮光板を外したという記事があった。
遮光板を外したら常時ハイビームだろうに…
HIDが使われ出す前の車両、ランクルだとの事でノーマル状態でかなり配光が悪いからそれが普通で単に明るくなっただけだと認識しているのかな。
こんな記事もあった。
『夜間走行すると必ずパッシングされる。俺はロービームで走っているのに酷い連中だ。
パッシングのお返しをするため35Wから55Wに変えた。』
様々なバルブをテストしている写真がある。
参考になると思う。
照度計(可視光&紫外線)でバーナ単体のテストもしようかと思ったが、それは機会と元気があったら又行う事にしよう。
いつになく長いページになってしまったので。
国内外というか、国産、半国産、中国製、韓国や台湾製などのコンバージョンキットが出回っている。
一時期合い言葉のように言われた「フィリップスバルブ使用」やフィリップス製は、同社がコンバージョンキットは出していない事を明言したので、最近では「フィリップスのライセンスで生産している」に変わったようだ。
同様にボッシュ製に関しても、ボッシュ自らがコンバージョンキットは作っていない、世に出回っているものは全て偽物であるとしている。
国産を謳うものでも中身は中国製のOEMやODM(シールを貼っただけ?)が幅を利かせている。
つまり2万円で国産を謳うものと4千円の中国製は同じと言う事なのだ。
普通?の人はメーカオプションを、メーカ製は余りに高額だという人やメーカ設定のない車種の場合は信頼出来る国産を、カネはないけど技と力はあるゼという人は中国製で遊んでみるのが良いかもしれない。
現在はノーマルハロゲンに戻している。
確かにHIDは視認性(自分から見えると言うよりも、他車から見えるという意味でも)が高い。
特に単車の場合は他車からの視認性は安全性に直結する。
でもレベライザ(光軸調整機構)も付いていないし、他社の迷惑にはなりたくない。
まあ、この後又良さそうなバルブでも出てきたら使ってみようか程度に思っている。
それより待てよ、ポジションランプ部分に小径のプロジェクタを仕込むなんてのも面白そうだ。
プロジェクタでしかもロービーム専用ならば配光特性は良くなる。