575M(1/29)
◆ フェラーリの新型車はイモラ、575Mの後継と言われるこの車のV12エンジンは620馬力を発生する。このイモラの現行版?が575Mマラネロだ。575は今から10年ほど前に発表された車で、そのモディファイ(Modificata)版は2002年から受注が開始された。エンジン出力は515馬力を7250回転で発生させ、トルクは60Kg・mを5250回転で発生させるV12だ。このエンジンはフロントに搭載され、F1ミッションと呼ばれるセミオートマチックのパドルシフト(半自動も可能)と組み合わされるモデルも存在する。
◆ では仮想試乗といってみよう。あくまでも仮想で架空の試乗なので、そのつもりでご覧頂きたい。
◆ エクステリアは好き嫌いが別れるような、フェラーリらしくないデザインだ。ボンネットのエアインテークは一昔前のトヨタ車を思い起こさせるようなのっぺりしたデザインで、リアにこそフェラーリらしさが残ってはいるが個人的には余り好きではない。シート、コクピットはタイトでデブには向かない。旧型フェラーリのような、乗り込むときの儀式は必要ないが、それでもミニスカートの女性が気軽に乗り込める雰囲気ではない。ステアリングは小振りで、その割にシフト用のパドルが大きい。
ストロークも長めのこのスイッチ、確かに大きいから誤操作には至りにくいだろうが、ちょっと雰囲気をスポイルしている。
◆ エンジンスタートはごく普通に行えるが、アイドル振動などは高級サルーンのV12を想像してはいけない。右足に力を込めるとエンジンはグオッと反応するが、ハイチューンの小排気量エンジンのような鋭さではない。ギアを1に入れてアクセルを踏めばごく普通の車のごとく発進する。そのままスロットルペダルを床まで踏み込めば、それこそタコメータの針が追いつかないような速度でレブリミットに向かって跳ね上がる。2に入れるとハイギアードな為もあり、余裕を持って加速を楽しめる。が、この時点で日本の道路の最高速度は超えてしまう。乗り心地は良くも悪くもない。極端に固いわけではないし、むしろ固くない感じがする。しなやかと表現するのは躊躇われるが、タウンスピードでも充分実用的だし路面のギャップを拾っても進路が乱されることはない。
◆ フロントに重いV12を積んでいる訳なので、ミドシップV8フェラーリほどの回頭性はない。むしろ重い印象が強いが、姿勢変化が抑えられているのでステアリングを切ればその方向にさっと向きは変えてくれる。ブレーキで荷重をフロントにかけていればアンダーはごく弱めだが、クリッピング前にアクセルを開けてしまうとアンダーが出た後でパワーオーバへと移行する。こちらもミドシップフェラーリよりはコントローラブルだと言える。低速コーナでは簡単にパワーオーバに持ち込めるが、これは意外にフラットトルクのエンジンも寄与している。
◆ ノーマルマフラーのこの車のエキゾーストノートが快音か否かは好みもあろうが、迫力ある音でもない。もちろん普通の車の音でもない。シフトダウンをセレクトしたときのブリッピングは快感で、いたずらにシフトアップとダウンを繰り返したくなる衝動に駆られる。フルスロットルを与えたままどんどんシフトアップしていくと、やがて300Km/hの目盛りを速度計は超える。270Km/h辺りからは明確に加速が鈍るので、”もっと加速しろっ"とばかりに、床がぶち抜けそうな力でアクセルペダルを踏み込む。300Km/hも直線路であれば別に何と言うことのない感覚だし、速度感が云々でもない。普通に普通の気持ちでこの速度域にまでは達するし、ミドエンジン車のような騒音もない。ただしこの速度から曲がろうとしたり止まろうとするのは並のことではない。
普段はカーブにも見えない高速道路が、もはや3車線をフルに使って曲がらなければいけないコーナへと変わっているからだ。ブレーキは必要充分なキャパシティを持っているが、フルブレーキングで突入した料金所で停車すると、フロント周りから少し煙が立ち上り、パチパチと音がしていた。
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