基準値(6/13)
◆ 燃費が良い車にはエコカーステッカーが貼られる。燃費基準は車両重量によって区別されているため、重い車であれば多少燃費が悪くてもエコカーとして認められる。茎を運んでいると言われるワンボックス車がエコカー減税の対象になったりするのはそのためだ。同じようにBENZのEクラスなども車両重量が重いので、極端に燃費性能を上げることなくエコカー認定されている。燃費計測基準も等価慣性質量によって異なるため、こちらは車両重量が軽いほど有利になる。記憶が確かではないのだが、10・15モード燃費テスト時の等価慣性質量基準値とエコカー認定時のそれって違ったかも。
とすると、その双方で有利な条件を満たすような車を作ればいい話になる。そしてこれらは日本の自動車メーカが得意としているところでもあるのだ。
◆ 例えばエコカー認定して欲しいのに燃費が基準値を満たさない車があるとする。しかしその車にサンルーフやナビやパワーシートなどをてんこ盛りに装備すると車重がワンランク上がって同じ燃費でもエコカーに変身出来る。メーカはこの車両がエコカーである事をカタログで謳い、しかしそれない少し軽い車も販売する。
プリウスも同じように燃費スペシャル版が存在する。当然カタログにはこのモデルの燃費を謳うが、全てのモデルが燃費スペシャル版と同一の燃費ではない。同一の燃費ではないが実走行における差も勿論大きくはない。これは慣性質量の設定値が段階的である以上やむを得ない事だとも言えるのだが、もしもそれを現在よりもっと細かく設定すればメーカの企みも意味が無くなる。
◆ 現在の燃費基準値は9ランクに別れている。これを細分化すればインチキは行いにくくなるが、国交省はそれをいやがる。というか自動車メーカが嫌がっているから国交省も嫌だというわけだ。表向きはコストがかさむとしているのだが、無駄遣いこそ美徳だという役人がそんな事を本気で言うはずがない。下手に細分化でもしようものなら天下りの道に影響するとばかりに、自動車メーカ有利な路線で行くしかないのだろう。
◆ 車重が1,265kgの小型車があったとする。燃費は15.8km/lで、これではグリーン税制適用にならない。そこでその車両にカーナビを付けて車重を1,266kg、つまり1kgだけ増やしたとする。すると燃費基準が16km/lから13km/lに緩和されるのでグリーン税制適用になる。トヨタのデータを見ると、きわめて微妙な線でこの燃費基準をクリアしている事が解る。ブレーキ性能は二の次でもカタログを飾る数字にいかに敏感か、それがいかにマーケティングに重要であるかを物語っているようだ。
最近では一部輸入車などでも日本の基準を気にしはじめてはいるが、例え同じ燃費の車でもガイシャが日本車と同じ燃費計測値をたたき出すのは容易ではない。
従って同じカタログ燃費であれば実走行燃費は(小細工の効かない)輸入車の方が良い。それはモードテストチューニングされていない状態の、本来の燃費が計測されるからだ。
◆ では国産車の計測値は本体の燃費ではないのかと言えばまさにその通りで、モードテストの走行条件でもっとも燃費が良くなるようなギア比やシフトスケジュールなどが与えられているのだ。以前にも書いたが速度低下と共に自動的にシフトダウンしながら燃料カットを維持するシフトプログラムも最初にこれをやったのはトヨタだったと思う。これによって数パーセントのカタログ燃費改善になるというのだから意味は大きい。
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