電動動力船(4/2)
◆ 船も電気で動く時代になってくるのか。構内用のタンカーではあるが、電気動力船舶が製造される。モーターは300kW×2基ということで、さほど大型のものではない。
◆ テスラSは375kWのモーターと195kWのモーターを搭載している。ただし最高出力は397kWとされているので、電力供給能力が追いつかないわけだ。バッテリー容量は最大で90kWhだそうだ。
◆ 一方で電動動力船は合計600kW+サイドスラスタ136kWのモーターを、3,480kWhのバッテリーでドライブする。自動車とは桁違いのバッテリー容量だが、外洋に出るほどの航続距離はない。
◆ その昔、原子力船むつという船舶があった。来たるべき原子力時代を見据えたと当時は期待された原子力動力船である。
しかしこれは失敗に終わる。原子炉の出力を上げようとしたところ、放射線漏れの警告が発せられて実験は中止された。
◆ 原子力船むつは電気動力船ではなく、蒸気タービンが動力源だ。原子炉の出力は36MWと大きいが、軸出力は1万馬力(約7.4MW)だった。1969年に完成したこの原子力船は、日本で最初で最後のものとなっている。当時世界には4隻の原子力船が存在した。
◆ 1972年の放射線漏れから修理完了までには19年を要している。修理せずにすぐ廃船にすれば、無駄な支出は必要なかった。
1990年には公開試験を再開、1993年には燃料が取り出され、1995年に原子炉が解体された。
◆ 原子力船から得られたものはいったい何だったのか。それらは、その後建設が加速する原発には活かされなかったのか。むつは大型タンカーが側面に衝突しても、原子炉に損傷を受けない構造だとされた。
◆ 電気動力船は原子力船より余程安全である。ただ原子力や化石燃料に比較してエネルギ密度の低いバッテリーを使うわけだから、航続距離が稼げない。
◆ 太陽電池パネルを甲板全部に設置すると、大型タンカーでは1MW程度の電力が得られる。再生可能エネルギ船では太陽電池板だけではなく風力発電設備を備えたものもある。またエネルギ貯蔵をバッテリーだけではなく、水素に変換して蓄えるものもあるそうだ。
◆ 船舶の場合は大型の設備を搭載しやすいこともあり、今後電動化などが行われる可能性はある。ところがその一方で石油消費量が減少すれば、タンカー自体の需要も減る。タンカーでの石油輸送コストは意外に安いらしく、パイプラインより少し高い(その、"少し"はどの位なのか?)と言われるし、又一方では輸送距離が伸びるとパイプラインは船舶輸送よりコスト高になるとも言われる。
◆ 貨物船の場合は甲板にも荷物を積むわけだから、太陽電池板は付けられない。太陽電池板を付ければ積載量が減少して輸送コストが上がってしまう。かといって、何ヶ月もの航海が行えるバッテリーを積もうとすれば、それも荷室が圧迫されそうだ。荷物の更にその上にソーラーパネルを積む手もあるけど。
◆ バッテリーの場合はエネルギ密度が低いので仕方がないのだが、それでも未来の船は電気で動くのだろうか。大型船では多少の振動を感じる程度だが、フェリーくらいの大きさの船に於けるエンジン音はそこそこうるさい。これが電気動力船になれば、静かなんだろうなと思う。
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