同期整流(9/2)
◆ ダイオードで整流するとVfの分だけロスが出る。AMやFMの検波回路にダイオードを使うと、Vfに達するまでは出力が出ないので、クロスオーバー歪みが生じる。
◆ そこでFETを使ってスイッチする。
FETならばON抵抗が存在するだけなので損失を小さく抑えられる。
同期整流の原理は簡単だ。例えば交流から正の電圧を取り出したいときは、正の半サイクルの時間だけFETをONにすれば良い。
◆ ここにGaNデバイスを使うと、寄生ダイオードがないので逆回復時間が早いとか、スイッチング時間が早いので損失が低減される。
◆ セレン整流器や真空管による整流回路が半導体整流回路になり、Vfによる損失から逃れる事が出来なくなった。しかし同期整流が一般的になると、Vfの問題から逃れられる事になる。これは昨今の低電圧大電流回路に於いて大きな意味を持つ。
◆ ではVfの存在するダイオードやバイポーラトランジスタは過去のものなのか?FETはON抵抗という概念だがバイポーラトランジスタは抵抗という概念は無い。
◆ 例えばMOS FETのゲートドライブを考えたとする。ドライブしようとするFETのゲート・ソース間容量が1nFだったとしよう。これをFETでドライブし、ドライブ用FETのON抵抗が10Ωあったとすると、ゲート容量をチャージするには10μs程の時間がかかる。しかしバイポーラトランジスタを使うと(ON抵抗が無いので)瞬時にゲート容量をチャージできる。
◆ こうした理由から、一部の集積回路ではバイポーラトランジスタを使う。
と言ってもFETよりは相当少ない使用率であり、パワーデバイスなどではIGBTなどが使われる。これはバイポーラトランジスタのベースに相当する部分が、MOS FETのゲート構造になっているものだ。内部構造的にはMOS FETとバイポーラトランジスタがカスケード接続になっていると考えれば良い。
◆ 大電力用スイッチングデバイスを考えると、例えば1000Aの電流のスイッチング用バイポーラトランジスタのhfeが100だとすれば、ベース電流は10A必要になる。これが電圧制御デバイスであるIGBTならば、スイッチは電圧で良いのだから電流は必要ない。(容量をドライブする電流は必要)
◆ パワーデバイスというとサイリスタやトライアックもあるというかあったというか、それらも今はIGBTやFETに置き換えられているのだろう。最近ではハイブリッド車やEV用の制御回路などにパワーデバイスが使われる。
◆ 数百ボルトの電圧と千アンペアを超える電流を制御するわけで、効率が悪ければ電費が悪化する。バッテリー容量は100kWにもなり、そこそこ高密度なエネルギがEVには蓄積されているわけだ。
◆ そうそう、FETはエフ・イー・ティーと呼んでいたのだが、最近ではフェトとかフェットと呼ぶ事を知った。モスフェットみたいな、カタカナで書くとモスバーガーの商品名みたいだ。モスフェットは英語圏での呼び方が日本で使われるようになったようだ。そうするとGaNはガンと呼ぶのが主流になるのかな。
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