スターリンクはすごいのか?(6/24)
◆ Starlink、衛星コンスタレーションはSpaceX社が提供するサービスである。550km程度の低軌道に2,400機あまりの衛星を飛ばしてサービスを実現する。
◆ 衛星は超薄型と言って良いほどのサイズで、打ち上げ時の厚さ(太陽電池パネルを折りたたんだ状態)で20cm程度と言われている。運用時には太陽電池板を展開するので、本体の厚みは10cm以下とみられる。
◆ 薄型化やフラット化の理由として、打ち上げ時のロケットへの搭載量の最大化や宇宙空間での空気抵抗の最小化が上げられる。高度550kmでは非常に希薄とは言っても空気が存在するため、衛星は抵抗を受ける。これを最小化することによって軌道修正用エネルギを少なく出来る。
◆ 打ち上げ時の筐体の投影面積は1.5m×3m程度と推測されている。この筐体の中に通信用の機器や衛星の制御用機器、クリプトンを燃料とする電気推進装置などが組み込まれている。
◆ Sterlink衛星の落下率は1割程度ある。様々な理由により軌道投入に失敗して落下する。現在2400機ほどが飛んでいるのだが、打ち上げ数は2600機を超えている。
◆ ダウンリンクは10.7GHzから12.7GHz、アップリンクは14GHzから14.5GHzを使う。Starlinkにアクセスするためには小型の位相アレイアンテナと専用の通信機が必要だ。
◆ 楽天とASTの計画では1.7GHz帯をそのまま使い、既存のスマートフォンで直接通信を行う。そのため衛星は巨大であり、Starlink衛星の100倍(当初計画)もの投影面積となっている。Starlink衛星は同時に数十基の軌道投入が可能だが、ASTの衛星サイズでは複数同時打ち上げが難しくなる。ただ楽天では低コスト衛星だと言っているのだが、何に比較して低コストなのかは明らかにされていない。
◆ ASTの衛星は巨大なアンテナを搭載する。640m2級のフェイズドアレイアンテナを搭載するのは、純民間衛星としては異例だ。軍事用としては直径約21mのプラスチック製の光学レンズを搭載する軍事衛星を開発した(2013年)話があった。レンズはフィルム程度の厚さの集合体だそうで、打ち上げ時には6m程度に折りたたまれているのだとか。
◆ 日本では技術試験衛星きく8号が、最大合計約650m2のアンテナを搭載して静止軌道に打ち上げられた。これは携帯電話への宇宙からのリンクテストに用いられた。大型アンテナ搭載衛星を打ち上げることが物理的に不可能というわけではないが、技術的難易度が高く、コストがかさみ、制御が難しく、寿命が短くなり易い。
◆ ASTはFCCへの資料で衛星数を243基としているが、投資家向けの資料では336基、日本向けの資料では168基、最新のコメントでは150基程度となっている。楽天は当初は2022年にサービス開始としていたが、後に2022年度内と言い直し、現在は2023年としている。スペースセルラータスクグループに提出された資料では、アンテナの直径は約24mで280のビームを作る。アンテナゲインは45dBiで下りのC/Nは7.7dB、上りのC/Nは10.8dBと試算された。
◆ 解決すべき問題はC/Nだけではなく、例えば遅延の問題があり、ドップラーシフトの問題がある。日本は島国なので国境問題が軽微とはいえ、北方領土付近や竹島・対馬付近では干渉防止策を講じる必要がある。
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