熱効率(1/30)
◆ ガソリンエンジンの熱効率はそう高いものではない。内燃機関で効率が高いのは低速ディーゼルエンジンだ。船舶用のDU-WARTSTILA 12RT-flex96Cエンジンは2ストロークで排気量約27キロリットル、約93キロ馬力を毎分102回転の時に発生する。
◆ 直列12気筒のこの巨大なエンジンの熱効率は52.5%だという。ディーゼルエンジンは熱効率を高めやすいのだが、ガソリンエンジンは様々な損失があり効率が上げにくい。
◆ それでも3代目プリウスの2ZR-FXEエンジンは最高効率38.5%を謳った。ただし最高効率を発生する回転数や負荷のレンジは狭く、そこから外れれば効率は落ちる。4代目プリウスでは冷却損失を減らす努力により熱効率40%を達成した。トヨタは、筒内噴射などを行えばもう少し効率が上げられるとしながらも、コスト的に(プリウスには)厳しいと語った。
◆ 高効率エンジンと言えばプリウスを連想するのだが、カムリ用の2.5リットルエンジンで熱効率41%を達成、ヤリス用の3気筒エンジンでも41%を達成している。
◆ 研究室レベルでは慶応大学や東大などが参加し、47.2%の数字がある。ただし最高効率だけを追い求めても、自動車としての燃費が良くなるわけではない。確かにトヨタのエンジンの熱効率は高いのかも知れないが、トヨタ車の燃費性能が世界一というわけでは無い。
◆ 中国はエンジン開発は遅れていて、EVに力を注ぐ。EVであれば工作設備もノウハウも無しに世界と競争が出来ると考えたからだ。しかし内燃機関の研究もされているようで、2021年の6月には最高効率43%の3気筒エンジンを発表している。
◆ このエンジンが実使用時にどの位の効率を発揮するのかなどは分からないが、日本のエンジン技術が中国に追い越される日は来ないだろうと言われていたのに、少なくとも数字は追い越された。
◆ このエンジンを搭載するのはBYD秦Plusで、レクサスグリルみたいなものを付けている。高効率エンジンとハイブリッドシステムによって良好なエネルギ効率を実現するとある。だがカタログ場の燃費は26km/l程度で、特別良い数字ではない。
◆ 結局の所ピーク性能が良かったとしても、自動車として燃費が良くなるとは限らない。エンジンの出力特性も同様で、ピークパワーを狙うために高回転型のエンジンを作ることは出来るが、パワーバンドが狭くなれば多段のトランスミッションが必要になるなど、実用性から離れて行ってしまう。
◆ 逆にレースなど用途を限定すれば、高回転高出力型のエンジンを活かすことも出来る。各メーカ共に新規のエンジン開発を中止しているか、或いは中止する方向になっている。従ってガソリンエンジンの効率追求や研究も、今後は行われなくなるだろう。
◆ EVに於いてはモータの効率化やモータ制御の最適化が求められる。それこそモータへの通電タイミングや通電時間、電圧や波形などを綿密に制御して効率を上げていく。モータの回転数や負荷、温度などに応じた制御なくして高効率EVはあり得ないと言われ、効率を追求すると駆動回路が複雑(=高コスト)になってしまう。
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