トヨタGRオイル(10/15)
◆ トヨタGRオイルは評判が良い。粘度指数が高く、粘度変化が少ない。高温時でも粘度が下がりにくいので低温時の粘度を下げやすく、フリクション低下につながる。このあたりは以前のオイルの話でも書いたのだが、ではどこが犠牲になっているのか。
◆ 良いオイルは何が良いのかで判断が分かれる。全体のバランスが良いのか?潤滑被膜が強いのか?温度安定性が高いのか?清浄分散作用が強いのか?全てを高いレベルでバランスさせる事が出来れば良いが、現実問題としてそうは行かない。
◆ じゃあオイル添加剤はどうなんだという話になるが、オイル添加剤でどこかの性能を上げればどこかが下がる、たぶん。そもそも添加剤はメリットしか書かれていないし、多くの添加剤はその成分も明確ではない。
◆ GRオイルは粘度変化の特性を最大限に引き出しているが、どこが犠牲になっているのか。一つはGRオイルの説明にも書かれているが、推奨オイル交換サイクルが5,000kmである。これは酸化特性や温度による物性変化が大きいとも読み取れる。
◆ もう一つは焦げ付き性だ。GRオイルシリーズの一部はターボ車に使うなとなっているが、これも焦げ付き性の問題だろう。実験では250℃を超える領域でのスラッジ発生が、他のオイルに比較してかなり多い結果になっている。250℃はオイル温度が達する領域ではないが、ターボチャージャの軸受けだとか燃焼室に残ったオイル、或いはそれが燃えて排気系に達する時に、スラッジが多くなる事を意味する。
◆ 清浄分散作用が低いから早めに交換してねと言う事かも知れず、少なくとも5,000kmごとにオイル交換を行っていれば、スラッジの蓄積は問題がないだろう。ただオイル消費の多いエンジンだと、オイルはどこかに消えているわけだ。多くの場合は漏れではなく燃焼なので、そうしたエンジンではより早い交換サイクルが必要になる可能性もある。
◆ こうした事からターボ車などに最適かと言われると、それは違うと思うのだが、逆にエンジンやオイルの温度変化の激しいハイブリッド車には良いのではないだろうか。ハイブリッド車やアイドリングストップ機能搭載車だとエンジンのスタートストップが頻繁に繰り返されるので、油温が安定しないシビアコンディションみたいな状態になる。そうした状況で粘度変化が少なければ燃費も改善されるはずだ。
◆ 二輪車のレース用途など、高回転まで使用するエンジンでは、オイルによる軸出力の変化が明確になり、出力重視でオイルを選ぶ事もある。乗用車ではそこまで極端ではないとは言え、オイル粘度が燃費に影響するので燃費節約分をオイル代にかけても良いと思う人は使ってみる価値があるかも知れない。
◆ マトモ系評価としては空ぶかしで軽さが分かる、セルの回転が軽くなった、高回転域がスムーズになった、燃費が良くなったなどがある。非マトモ系だとエンジン音が明らかに変わった、排気音に迫力が増した、バッテリー上がりがなくなったなどがある。油温が上がりにくくなったというレポートもあるのだが、このあたりはよく分からない。
◆ オールマイティのオイルが一般的ではあるが、こうしたどこかの性能を引き上げたオイルも、使い分けをシッカリ考えれば良いオイルだと言える。普段5W-30のオイルを使っている車にGRオイルの5W-40を入れた時の燃費などが同じ程度だと言う事なので、実質粘度が低いのかなと思う。
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