直噴ディーゼル(11/19) ◆ 三菱,トヨタに続いて日産も気筒内噴射ガソリンエンジン搭載車を発売したが、今日はディーゼルのお話。うるさい,汚い,臭いと3拍子揃っている日本のディーゼルエンジン。 熱効率的にはガソリンエンジンより良いから燃費は良くなる計算だ。ただし高回転運転が苦手だから馬力は低い。
◆ そのディーゼルエンジン,ヨーロッパ規制に合わせて輸出したいのか?ガソリン車並の排ガスレベルに押さえたいのか?直噴ディーゼルが話題になっている。 以前は直噴と言えば、騒音や排ガスレベルより燃費に重点を置いた大型トラック専用の感があった。乗用車にはもっぱら副室型のエンジンが搭載されていたわけだ。
◆ 燃費効率に優れて耐久性(副室式は副室と主燃焼室の連通穴が壊れやすい)も十分な直噴ディーゼル,問題は騒音と排ガスレベルだった。 排ガス中の有害成分である黒煙,NOxは触媒や吸着剤..実は気筒内直噴ガソリンエンジンにも使われていて、希薄燃焼時に大量に発生するNOxを一時的に吸収する。エンジンはたまに層状燃焼モード(いわゆる希薄燃焼)から通常燃焼モードに(勝手に)切り替わって、吸着したNOxを(通常燃焼で排出される)HCやCOと共に還元する...で処理可能だが、黒煙はフィルタを付けても詰まってしまう,自動燃焼にするにはエネルギが必要..と、処理に困るわけだ。
◆ もっとも、現在のディーゼルエンジンは黒煙をそのまま排出して人間に吸わせちゃってる。 ヨーロッパでは日本より黒煙に関する排出基準が厳しく、その為もあってディーゼルエンジン搭載の欧州車は黒煙が少ない。
◆ 黒煙とは燃料の燃えカスだ。完全燃焼に近づければ黒煙は減少する(その代わりNOxは増加する)効率よく完全燃焼させるためには、燃料噴射時に霧化を良くすればいい。そこで登場したのが高圧燃料噴射だ。
◆ ディーゼルは元々圧縮行程時に燃料を噴射するから、その燃圧は高い。数百Kg/cm2の高圧なのだ。その圧力を(大体)1300Kg/cm2以上にした物が高圧燃料噴射と呼ばれている。 高圧噴射を行うことで燃焼状態が改善され、黒煙発生量は従来エンジンの10%程度に減るという。(すごい!) ◆ そんなメリットのある高圧噴射が何故今まで出来なかったのか?一つはコストの問題だろう。 燃料ポンプやディストリビュータ,配管やインジェクタに至るまで耐圧を確保するとなると、コスト上昇は避けられない。規制もないのに金をかけて排ガス改善を行うほど日本の自動車メーカは偉くない。
◆ もう一つは燃費の問題だ。高圧燃料ポンプを駆動する馬力損失はバカにならない。 運輸業界では少しでも燃費の良い車種を選ぼうとするから、無理して低公害ディーゼルを作ってもカタログ燃費が悪ければ売れないわけだ。
◆ 実際、乗用車用ディーゼルに関しては高圧燃料噴射エンジンの研究が(ここのところ)行われているが、我が国の大型ディーゼルに関しては研究発表レベルに留まっている。 トラックと乗用車を製造しているメーカ(トヨタ,日産など)は、低公害ディーゼルをディーゼルエンジン専門メーカ(日野など)から購入することにするらしい。自社で開発する力がないのか?カネが惜しいのかは分からないが.. ◆ 欧州からやってきた高圧燃料噴射ディーゼル,日産は試作エンジンを公表していた。 欧州では小型車のディーゼル比率が高く、欧州市場でシェアを伸ばすには欧州の排ガス規制に適合するディーゼルエンジンが必要なわけだ。
◆ 国産ディーゼルの欠点は排ガスが汚いだけではない。特に乗用車用ディーゼルは耐久性に乏しい。 新車のウチは黒煙も少なくて良いのだが、数万キロも走行するとパワーは低下し黒煙は増える。 安く作るためには仕方ない(それでもガソリンエンジンより高価だ)が、走行距離の出た車で正規の車検を通そうとすると燃料噴射量を絞らなくてはいけなくなる(黒煙が減る)燃料噴射量を絞ると出力も低下するから、ユーザは「車検を取ったらチカラが無くなった」と文句を言う。
◆ だからと言って耐久性を重視すればエンジン重量は嵩み、車両価格は上がる。 一時期の大型SUVブームの時は良かったが「アイドリングしていると近所から、うるさい,臭いとクレームが来る」なんて苦情?が都市部のディーラには舞い込んでくると言う。 そこに来てガソリン価格の低下,ディーゼルのイメージを改善しなければ、ディーゼル乗用車に未来は無いし「ディーゼルなのにガソリン車より高いの?」ってな具合になる。
◆ 大型トラック業界でも(トヨタだったか?)ディーゼルからLNG車に切り替えようとする動きが出てきたくらいだ。 LNG車はガソリンエンジンに構造が近いから、エンジンコストは下がり排ガスレベルも低い。 問題はLNGスタンドが全国レベルで見ても数十件しか無いという事だろう。
◆ 環境保護や炭酸ガス排出抑止が追い風となって、LNGスタンドが増えてくれば大型トラックのエンジンも様変わりするかも知れない。
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