非常時にどう使う、PHSと携帯電話
大地震や洪水など、非常時のライフライン(これは和製英語)の確保に有用だとされる携帯電話やPHS、被害の状況によって使える範囲は変わるのだ。
携帯電話の場合は、無線基地局(BS)と交換局(MTSO)に別れている。
キャリアにもよるが、交換局の数は少ない。
TDP(東京ディジタルホン)では東京1カ所であり、NTT系では全国に9カ所前後設置されている。
各BSとMTSOは、スター型に専用線接続された形で運用される。
災害時に、MTSOが破壊された場合はそれに接続されているBSの全てが機能しなくなる。
従ってBSが無事でもいっさい通話が出来ないし、復旧は容易でないと思われるのだ。
もちろん、災害に対してこれらの局が強固に出来ているのは言うまでもない。
また、BSが破壊された場合はそのBSのサービスエリアである半径数Kmのエリアで携帯電話が使用できなくなる。
都市部で、比較的BS設置密度の高い(より小ゾーン)場合はオーバラップして使用可能な様に、BSの出力を調整すればユーザはBSの故障に気がつかない程度かも知れない。
PHSの場合には、ご存じのようにISDNに接続されて電話局単位で収容されている。
従って、電話局が破壊された場合には(主に)その市内局番に相当するエリアで使用できなくなることが想定される。
また、電柱や公衆電話BOXに設置されているCSは商用電源を必要とするから、付近一帯が停電したような場合にも使用できなくなるだろう。
直下型地震の場合には、被害が大きくなるのは狭いエリアに限られる傾向があるから、使える場所まで移動するのが第一だと思う。
規模の大きなビルや地下街,地下鉄などは耐震構造になっているしCSが設置されているところも多いから、地下街に逃げ込むのも手かも知れない。
阪神大震災当時PHSはサービスインしていなかったから、果たして携帯とどちらが使えたのかは定かではないが、少なくとも携帯は非常に使いにくくなったようだ。
それでも、携帯が使えたのは交換局に被害がなかったためだ。
またNTTでは、衛星を使った簡易交換局などの設置を行ったため復旧の速度は速かった。
家屋が破壊されて住民がバラバラに非難した場合、誰がドコにいるのか非常に分かりづらくなる。
特定の人間に対する連絡手段が無くなってしまうわけだ。
その点携帯やPHSは、(ほとんど)個人に電話番号がふられているに等しいから非常災害後の連絡手段としては役立つ。
非常災害時でも、孤立状態がさほど長く続くことはないから簡易基地局などが設置されれば状況は好転するだろう。
携帯電話機値局と違って、PHSのCSは容易に設置できるから避難所などにもCSが置かれる可能性は高い。
仮設電話に列を作るような状況は、PHSによって変わるかも知れない。
(CSの容量にもよる)仮設電話の場合には、電話をかける方向のみだがPHSや携帯では必要なときに着信できる強みがある。
携帯にしろPHSにしろ、圏外待ち受けは消費電力的に不利だから圏外状態が続く場合にはこまめに電源を切ることが必要だ。
最近では乾電池による使用が可能なモデルも有るが、それ以外の場合電池が無くなると充電は困難だから注意を要する。
サードパーティ製品で、乾電池からリチウム電池パックに充電するような製品も有るらしいが、非常事態ではまず入手できそうにない。
電池や基地局が無くなると、携帯やPHSは何の機能もしない荷物になってしまう。
心配な向きは非常持ち出しセットの中に乾電池パック(使える機種は)を用意すれば万全だ。
現在の携帯/PHSの電池電圧は3.6Vのものが多い。
3.6Vと言うのは、リチウム電池の1セル分の起電圧に相当する。
ニカドだと、3本分になる。
乾電池だと..1セルが1.5Vだから2本では低すぎるし、3本だと高すぎる。
ま、乾電池があったところで3本直列に接続するための電線や電池ケースや半田ごてがなければ何の役にも立たないのだが..乾電池が使用できたとして、PHSなら単4サイズのアルカリで実用範囲になるだろう。
携帯は..単4では厳しいかも知れない。
送信時の消費電流が1A近くになるから電圧降下で電池アラームが鳴るかも。
NTTでは衛星を使用した移動電話をサービスしている。
これなら衛星管理地球局が破壊されない限り通話は出来る。
もっと安全なのは98年頃からサービスが始まるイリジウムだ。
加入電話との通話をのぞいて、全て衛星間で交換されるからイリジウム端末同士なら衛星が生きている限り通話可能だ。
いずれにしても人間自体が生きていることが先決、携帯やPHSは食料の代替えにはならないよ。