PHSシステムの疑問と回答
文中の不明な用語はここかここで!
Q.最近のPHSは待ち受け時間が非常に長いのですが..
最近では、500時間待ち受けが普通になっています。
これは、基地局(CS)を捕捉している間はPCH(個別呼び出し信号)のみを受信すれば良くそのインターバルが1.2秒間と長いためです。
PHSの1スロットは625μSですから、時間平均0.5%以下の稼働率でよいわけです。
しかし、受信機は電源投入と同時に立ち上がるわけではないので数mS手前から電源を入れます。
ちなみに待ち受け非受信中はTCXO(基準水晶発振器)まで電源を落としてしまいます。
動いているのは低速クロックモードにされたCPUだけです。
逆に、CSを捕捉できていない場合にはCSをサーチするため度々電源を入れなくてはなりません。
理想的には常時受信してCSをサーチすべきですが、消費電力とのかねあいもあって間欠受信を行うわけです。
ですから、圏外待ち受けの場合は電池消耗が激しくなります。
Q.トランシーバモードでの待ち受け時間が短いのは?
トランシーバモードでは、制御チャネルが決まっていません。
発信側のPHSが空きチャネルをサーチして、空いているチャネルで発呼します。
受信側PSは、全チャネルをサーチしながらIDのマッチする(自分を呼んでいる)スロットを探すわけです。
従って、CSのPCHのみを受信するのとはわけが違って圏外待ち受けに近い状態で動作します。
ですから、電池消耗が激しくなるのです。
Q.通話中の電池消耗も制御しているの?
連続通話時間延長のためには、通話中にもパワーダウン制御を行います。
受信スロットが5mS中の625μS,送信スロットも5mS中の625μSですから、送信も受信も行っていない時間が存在するわけです。
その間に出来る限りの部分の電源を切って、消費電力低減を行うわけです。
タイミングを作っているためTCXOを切るわけには行きませんが、その部分の回路の立ち上がり時間に応じて、こまめに電源を切ります。
例えば、1stローカルのVCOやPLLは数百μSで立ち上がりますから、実際に使用するスロットの数百μS手前で電源を入れるわけです。
Q.家庭用CSと公衆CSの同時待ち受けで連続待ち受け時間が短いのは?
家庭用CSと、公衆CSでは制御チャネルの周波数もPCHインターバルも違います。
ですから、双方を待ち受ける場合には周波数を切り替えながら複数チャネルの受信を行うわけです。
特に家庭用CSは、公衆用の1.2秒間隔に比べてPCHインターバルが短い(最小125mS)ので頻繁に電源が入り、結果として連続待ち受け時間が短くなります。
家庭用CSのPCH間隔が短いのは、呼び出しからPSが着信音をならすまでのタイムラグを短くする目的だと思います。
複数の電話機がつながっていて、PHSの子機だけ鳴るのが遅いのは気になるでしょう?
Q.呼び出し音をならさずにメッセージ伝送できるのは?
これは、ISDNのサブアドレスを使うものです。
DDI系のPSにはこうした機能が実装されています。
サブアドレスとは、簡単に言うと内線番号みたいなものです。
サブアドレス無しで呼び出すと代表番号にかかって呼び出し音が鳴り、内線にかけると呼び出し音が鳴らずに着信するような設定になっていると思って下さい。
決して、電話がかかっていないのではなくて呼び出し音が鳴らない状態で勝手に着信しているだけです。
これなどは、ちょっとしたメッセージなどのやりとりが無音で出来るので、便利な機能だと思います。
高校生も授業中にメッセージを受け取れます!
Q.なぜ、トランシーバとして使うときには親機に登録しないといけないの?
トランシーバモードで呼び出す場合には、PS_IDとCS_IDを交換します。
この時のCS_IDが親機のIDです。
システム上こうなっていますから、同一親機に登録していないとCS_IDが一致せず呼び出しが出来ません。
これは明確な理由があるわけではなくて、規格上決められていることだから...です。
PS_IDとPS番号で呼ぶようにすれば、相手の番号さえ分かっていれば呼べて便利だと思いますがねえ..
Q.PIAFSの誤り担保はどうなってるの?
PIAFSでは、PSと端末(ISDNに接続されたPIAFS/TA)間でARQを行います。
つまり、PS−CS間でエラーコレクションを行っているわけではないのです。
PHSのデータフレームは160ビットです。
PIAFSでは、これを4つ分まとめた640ビットのフレーム長です。
ですから、1/640の誤りがあっても640ビット,すなわち4スロットの再送が起こることになります。
また、PHSのスロットとPIAFSのフレームは非同期ですから、PHSの5スロットにまたがる可能性もあります。
電界強度が弱くて、エラーレートが10E−3程度になってくると急速にスループットが落ちてくるでしょう。
ちなみに、音声通話で「ちょっと厳しいかな」って感じだと10E−2程度です。
Q.PIAFSの将来は?
予知能力がないので、正確なことは言えませんが64Kbpsの伝送に向けて動くことになるでしょう。
これは、PHSの2スロットを連続で使用する方式です。
ISDNが64Kbpsですから、ここまでは簡単に行くはずです。
問題は制御規格上の話になります。
現在のRCR−STD28には2スロットまとめて使うための規格がありません。
もう一つは送信電力です。
PDCの様に、スロット内平均電力で規格化している場合ならハーフレートだろうがフルレートだろうが送信出力の表示は変わりません。
しかし、PHSは時間平均で出力表示しているため2スロット使用して10mWにすると,スロット内平均出力は現在の半分になってしまいます。
これでは到達距離の低減にもつながるので、20mWとしたい所ですが..どうなりますか。
いずれにしても64K接続は98年以降になる見込みです。