濾過の話(2)
濾過の話では機材関係とバクテリアの事を書いたが、実際の水槽に於ける濾過システムの構成も考
えてみよう。
もちろん同じ水槽でも飼育する魚の数や水草が違えば一概には言えないが、濾過シス
テムを考える上で参考になれば幸いである。
濾過装置は水槽という限られた容積の中で水を浄化し、魚や水草を育てるために無くてはならない
ものである。
ただしいくら立派な濾過槽があったとしても、水を換えないわけには行かない。
世の中には水換え不要を売り物にした商品もあるが、例えそれが本当に硝酸塩を処理してくれたと
しても、やはり水は換えたい。
人間だって晴れた日には窓を開けて換気したいだろう。
空気清浄機があっても、エアコンで空調さ
れていても新鮮な空気は気持ちがいい。
きっと魚も水を換えて貰ったら気持ちいいに違いない。
フィルタの濾過能力を評価するときには、水槽の容量ではなく水槽の水を汚す要因がどの位入っているかを考えるべきである。
40cm規格水槽をグッピーの稚魚用に使用していたが、これにはテトラのワンタッチフィルタとスポンジフィルタを使用していた。
これで水は良く澄んでいて、稚魚たちは元気に育った。
画像はテトラからのリンク(ワンタッチフィルタ)
画像はテトラからのリンク(スポンジフィルタ)
これと同じ構成を40cm水槽(規格水槽より高さと奥行きがある)で使用し、水草と15匹ほどの魚を入れて使用すると水はなかなか澄まない。
この水槽にエーハイム2222(60cm水槽用の外部フィルタ)を使用すると、短時間で水は驚くほど綺麗になった。
これがフィルタの濾過能力の違いである。
画像はテトラからのリンク(2222)
濾過能力は高ければ高いほど良いと思う。
水草水槽では底砂を使用すると思うが、この砂にも濾過バクテリアは数多く住み着く。
おそらくその量はパワーフィルタより多いかも知れない。
しかし底砂には物理濾過能力はない。
(底面濾過を行えば別)水草水槽や飼育密度の高い水槽には大きな物理濾過能力を得られる濾過槽が必要だ。
60cm水槽では上部フィルタで大きなものを見つけるのは難しいが、120cm水槽になると高さが30cm以上もある大型の上部濾過槽がある。
また容量が60cm水槽と同程度か、それ以上もありそうなオーバフロー濾過槽も購入することが出来る。
ただしこれらは炭酸ガスが逃げやすいので、炭酸ガスを添加している水草水槽にはむかない(使えないわけではなくて、炭酸ガス添加効率が落ちると言うこと)上部フィルタやオーバフローフィルタはドライ濾過(濾過材の一部が空気に触れていると言うこと)が実現でき、これは好気性バクテリアの活動を促してくれる。
海水水槽などでは濾過バクテリアが繁殖しにくく、溶存酸素量も低いためにドライ濾過或いはウエット&ドライ濾過が行われる。
これに加えてオゾン添加やタンパク質除去も執拗になる場合があるが、これに関して今回は触れない。
画像はエーハイムからのリンク(ウエット&ドライフィルタ)一般の淡水魚水槽で手軽に大容量濾過を実現できるのは、外部式のパワーフィルタだろう。
上部濾過などに比較するとちょっと高価ではあるが、完全密閉で炭酸ガスを逃がすこともなく濾過能力の大きいものも選択できる。
私は40cm水槽にエーハイムの2222を、60cm水槽に2426(2226にヒータが付いたもの)を使用してきたが、これで濾過能力には問題ない。
多少飼育密度が上がっても、餌の食べ残しや糞が増えたとしてもフィルタに吸い込まれて水は綺麗に保たれる。
その後の水槽拡張で60cm水槽に2222を移動し、90cm水槽には2426と2228の並列運転で使用している。
60cm水槽には40cm水槽の魚を移動させた形なので、水槽容量に対する魚の密度は下がっている。
が、実のところ2222では水草入り60cm水槽ではちょっと不足かな,とも思うが、魚を増やさなければ大丈夫だろう。
90cm水槽には2426と2228の並列なので濾過容量は十分である。
おそらく2228だけでも維持できるとは思うが、「余裕ある濾過こそ手間のかからない水槽」だと思っているので、2つのフィルタを接続して使っているわけだ。
濾過容量の大きなフィルタは値段も高い。
特にエーハイムは他社に比較して割高感は否めない。
が、信頼性や補修部品の流通量では安心できる。
また、丸型フィルタの中にはメンテナンス性の悪いものもあるので、購入時にはこの辺りも確かめた方が良い。
余談になるが私は2426を6割引近い価格で購入し、2228も3割引以上で購入した。
こういうチャンスは少ないかも知れないが、各ショップの特売情報などに目を光らせていけば出物が見つかるかも知れない。
(地方から通販で購入する場合は送料と代引き手数料が別途かかるので、この分も考慮しないと意外に安くなかったりする)なお関東在住の方が関西方面のショップで機器を購入すると60Hz仕様となる。
このままでは流水量が低下するし、補修パーツの入手も面倒なので「ワーナーランバード」で改造して貰うことをお勧めする。
なお改造費は無料である。
画像はエーハイムからのリンク
さて本題だ。
水槽の大きさとフィルタのサイズはどの程度が適当だろうか。
私はエーハイムしか使ったことがないので、これを基準に考えてみたい。
なお濾過容量とは別にヒータ内蔵型やドライユニット付きもあるが、ここでは標準的なもので考えてみる。
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40cm |
45cm |
60cm |
75cm |
90cm |
120cm |
180cm |
魚のみ |
ワンタッチ
フィルタ |
ワンタッチ
フィルタ |
ワンタッチ
フィルタ2個又は2213
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2222
又は2224
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2224
又は2226
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2226
又は2228
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2228 |
魚と水草 |
2211 |
2211
又は2213
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2222
又は2224
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2224
又は2226
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2226 |
2228 |
2226
2台又は2250
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高密度
飼育+水草 |
2213
又は2222
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2213
又は2222
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2224
又は2226
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2226
又は2228
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2228
又は2226
2台 |
2228
2台又は2260
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2260
以上 |
画像はテトラからのリンク(2213)画像はテトラからのリンク(2260)
濾過槽容積は2213より2222の方が少ない。
が、ポンプ容量は2222のほうが大きいので、実質的にはさほど違わないと思う。
上表の中で2台使用を推奨しているのは、フィルタメンテナンスの時など1台ずつこれを行うことによって濾過状態の急変を避けるためである。
コスト的には割高にはなるが、メンテナンスや故障時のことを考えると1つの水槽に2台の濾過器のメリットは大きい。
水草水槽ではプレフィルタを使うことも多いと思うが、吸水側に抵抗を与えるとトラブルの原因ともなるので、プレフィルタを使用する場合は「詰まり」などに十分注意する必要がある。
画像はジャレコからのリンク(プレフィルタ)丸形フィルタは割安感があるが、濾過材のメンテナンスは四角いものより(内部にコンテナがないので)面倒な場合が多い。
上表の中でも、例えばディスカス水槽などでは「魚と水草」水槽を参考にするなど、その魚の特性や底砂の有無によってもフィルタサイズは考慮する必要がある。
水草水槽で大容量フィルタを推奨するのは、枯れた葉や根がフィルタを物理的にも汚しそれらが腐敗することによって生物的にも水を汚すからだ。
亜硝酸濃度などが上がってくれば茶色のコケが発生するし、濾過バランスの崩れはコケ(藻)の発生を促す。
水草水槽に付いたコケを落とすのは容易ではないので、最初からコケを寄せ付けない濾過システムにしておいた方が後々で楽である。
もう一つは水換え頻度がフィルタ選びの基準にもなる。
フィルタの物理濾過能力が小さくても(生物濾過能力の小さいものは問題がある)頻繁な水換えによって魚の糞や残餌などを取り除けば水質の悪化は防げる。
しかし勤め人が毎日水換えを行うことは不可能に近いだろう。
フィルタを大きくしたところで水換え不要にはなり得ないが、水換え頻度を多少は下げられると言うことも見逃せない。
これと同じようにフィルタの掃除頻度も重要になる。
水槽用量に比較して十分余裕のあるフィルタを使用していれば、濾過材が詰まるなどのトラブルは少なく、フィルタの掃除も1〜3ヶ月に1回で済むだろう。
しかし水草水槽などで容量の小さなフィルタを使用していると、物理濾過部が目詰まりしたり、ウールマットが詰まったりする。
フィルタは給排水ホースで水槽に接続されているが、ホース内部の汚れは思った以上に流水量を低下させる。
ホースのクリーニングは専用のブラシ(5百円くらい)を使っても良いし、丸めたティッシュペーパをホースに詰めて、水圧で押し出してもキレイになる。
ホースの汚れがそれほど水量を低下させるとは、にわかに信じられなかったが2〜3ヶ月使用して汚れのたまったホースを掃除してみていただきたい。
きっと水量が大幅に増えるはずだ。
水の白濁が発生することがある。
とは言っても私の水槽で(立ち上げ時以外)これを見たことは無いのだが、濾過能力が不足していると原生生物の異常発生で白濁が発生する。
これ以外にも水が濁る原因は色々あって、細かな浮遊物質がその主たる原因だ。
これらの浮遊物を凝集させてフィルタの物理濾材に引っかけて取るケミカル用品もあるが、私はこれらを使ったことがない。
つまり「十分な濾過能力があれば水は自然に澄んでくる」のである。
麦飯石溶液は使ったことがあるが、これとて濾過能力が十分でなければ水が澄むには時間がかかる。
逆に十分な濾過能力のある水槽にこれを使用すると、細かな物質がこれに吸着されるらしく水は澄んでくる。
以前はショップで貰った麦飯石溶液サンプルを使用していたこともあったが、どうもザラザラしていてフィルタのモータシャフトに悪そうなので最近は使用していない。
白濁同様、コケなどに悩まされているときもフィルタ能力が不足している可能性もある。
強力な物理/生物濾過はコケの発生をも押さえてくれるのだ。
流水量と水槽内の水流にも考慮する必要がある。
フィルタは大型化するほど流水量が増えるわけだが、これは物理濾過能力アップに貢献する。
一般的なフィルタの流量は無負荷時のものを表している場合が多い。
例えば2228は1050リットル/毎時の性能だが、これはポンプの裸の性能だ。
フィルタ内に濾過材をセットしたときの性能は750リットル/毎時まで低下する。
これに給排水パイプの抵抗と水槽とフィルタの位置の差による水圧が加わるので、実際の水量はかなり低下する。
これを水槽内のシャワーパイプに接続するが、時として過大な水流が一部に発生する状況に陥る。
エーハイムのシャワーパイプ長はモデルに関わらず一定なので、大容量フィルタほど水圧が高くなる。
私はエーハイムのパイプのみを購入してドリルで穴を開け、水槽の横幅いっぱいの長さとして使用しているが、フィルタのポンプに負荷をかけない程度の水圧になるようにシャワーパイプを調整した方が良いと思う。
シャワーパイプなどの取り付け方によっては水槽内に強い水流が起きることになる。
強すぎる水流は魚を疲労させる原因になるが、逆に水が流れない場所が出来るとそこにゴミが蓄積される。
小型水槽では水槽全体まで水流が行き渡るようにするのは比較的容易だが、大型水槽ではなかなかうまく行かない。
魚の種類によっては強めの水流を好むものもあるし、受圧面積の広いボディーの魚は水流が強いと泳げなくなってしまう。
水草にとっても水流は大切なようだ。
水草の葉が若干揺れるくらいの水流は水草の生長を促すとされているから、この辺りも考慮したい。
なお現在使用している90cm水槽は2つのフィルタの吸水パイプを水槽左右奥に設け、排水パイプは1本の長いシャワーパイプの両側から供給している。
シャワーパイプはエンドキャップ側の圧力が高くなるが、シャワーパイプの両側にフィルタの排水パイプを接続することによって、これが緩和される。