合併(5/8) ◆ ベンツとクライスラーの合併がニュースになっているが、合併とまでは言わなくても世界の自動車メーカ同士は全て何らかのつながりがある。 技術交流をはじめとして提携,クロスライセンス,パーツ供給など、関係は多岐に渡る。
◆ それでも合併或いは吸収という形を取るのは、自動車という商品を付加価値で売る時代が去ったことを意味しているのではないだろうか?ここ数年はベンツも低価格化が進んでいるから何とも言えないが、数年前の価格レベルで比較すると、同社或いはBMWは1台の車両あたりトヨタの2倍の利益を上げていたという。
◆ 合理化はトヨタに及ばないものの、同じ車を作るのに2倍の原価になることはないだろう。何せアクセサリなどはトヨタ車の方が沢山付いている。 それでも2倍の価格で売れたという事は、それなりの付加価値があったという事だ。所が最近では「ベンツだから,BMWだから高くても売れる」時代は去ったのかも知れない。
◆ このページでも以前お伝えしたが、トヨタがセルシオを発表したとき「車というものは真面目に作るとこの値段になるのです」と広報は言っていた。じゃあセルシオ以外の,マーク2やカローラは真面目に作ってないんだね,って事にもなるわけだが、トヨタとしては共用部品を少なく専用設計し、販売台数の見積もりが少なければ価格が上がると言いたかったのかも知れないが、実はセルシオの付加価値を評価して貰いたかったのかも。 もっとも今では共用部品も増えて、セルシオの原価もだいぶ下がっている事だろうが。
◆ 日本のメーカは開発力はないが生産性は高い。少なくとも小型車の分野では、性能や信頼性と価格を見れば世界一の車かも知れない。耐久性が低いというのは良く言われることで、仕向地によってはエンジンはもとよりボディーの仕様も耐久性重視に変わったりするが、耐久性が低いのと故障率が高いのとは又別の問題だ。
◆ ボディーに少々ガタが来ても,エンジンのオイル消費量が増大しても、排ガスレベルが悪化しても、走れなくならなければ高信頼性の折り紙を手に入れることが出来る。 しかもこの日本車は安いと来ている。AT互換機出始めの頃,台湾製は安いけど...なんて不安がっていたのと似ているではないか。それが今や、台湾製は日本製より信頼性が高いとまで言われているのだ。
◆ こうなると高付加価値を売り物にしていた自動車の、付加価値そのものの見方が変わってくる。 日本製の車に対してドイツ車に2倍のカネを払う事に疑問が出てくるわけだ。 同じ事は測定器の世界でも言える。その昔、HP(ヒューレットパッカード社)の測定器は高価だが高信頼性と高精度が売り物だった。 HP社のものが高くて買えなくて、当時勤めていた会社でAンリツのスペアナを買った。 で、ノイズ測定の時に測定器の詳細なデータが知りたくなってAンリツの技術に聞いたら「この測定器はHPのコピーですから、HPのデータを参考にして下さい」だと。
◆ そんなAンリツも徐々に技術力を付け、今ではHPとさほど変わらぬ(コピーじゃないと思うけどね)製品をリーズナブルな値段で売っている。 これではHPの測定器が売れなくなる,ってわけでHPもコストパフォーマンスに優れた測定器を売り始めた。これに驚いたのはテクトロニクス,今までは高値安定の測定器市場だったのだが、その最大手たるHPが値下げしはじめたのだから、テクトロニクスも黙ってはいられない。
◆ テクトロニクスの営業曰く,「HPさんが安い測定器出す時代ですからねえ」..結果として測定器全体の価格が下がってきた。自動車業界のように大型合併劇は演じられなかったが、倒産したメーカもあった。 これが自由競争なのだ,と言ってしまえばそれまでだし、ユーザにはメリットが多い。しかし、こうなったのは測定器自体が特殊なものでなく、メーカを問わず生産できるようなレベルになって来たからに他ならない。
◆ 欧州の自動車メーカは、エンジンコントローラなどの電装品をボッシュなど専門メーカから購入する場合が多い。 一つは開発費が安く押さえられること,そして工業所有権や設計ノウハウなどの問題もある。 エンジンを他社に供給するメーカもあれば、設計のみを引き受けるメーカもある。 日本ではいすゞとホンダが互いに得意な分野の製品を供給しあっている。これが一歩進むと合併と言う事になるわけだ。 日産は欧州向けマーチのディーゼルエンジンをプジョーから買っている。日産製高公害ディーゼルを改善して輸出するより、プジョー製の方がお得なのだろう。
◆ トヨタ規模の会社になると、毎年中規模の会社一つ分くらいの売り上げ増が無いと苦しいという。
そのトヨタを抜いて世界第3位の自動車メーカ,世界戦略は思惑通りに行くのだろうか?日産は株価低迷で厳しそうだし..
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