早春の..(2/10) ◆ 早春の何とか♪って南さおり(歳がばれる)って歌があったような,無いような話は置いといて,その日はほんの少しだけ温かいような、春の霞んだ空気が残っているような山道を走っていたのでありました。もちろんマラソンしていたわけではなく、車で,です。
◆ 日も暮れて街灯も無いような、でも一応舗装だけはされている山道。山中湖(富士五個の一つ)から帰ってくる途中に、その事件?は起こったのです。 カーブが連続して見通しも悪く、道の片側は崖,反対側は谷になっているような典型的な所。 ヘッドライトに照らされるのは、はげかかった路肩を示すペイントとたまに現れる落石注意の標識,昼間ならば景色も美しいに違いない所なのですが、残念ながら今は夜。
◆ しばらく走ると、何件かの家明かりが見え,そこを通り過ぎると闇に吸い込まれるかのごとき山道になり、そして下界の明かりを見渡せる..繰り返し単調に繰り返される景色に少々飽き気味なのでありました。
◆ さほどスピードも出さず,もちろんコーナでタイヤがスキール音を発するような事もせず,家路を急いでいると、ヘッドライトに映し出されるのは人影の様子。 へえ〜,こんな所に住んでいるんじゃ家に帰るのも大変なんだろうな..と、思って近づいていく..筈が、一向に近くに行けないのです。
◆ って話になってくると、その人影は若い女性で白い服を着ている,に決まっている訳なんですが、そんな話じゃなくて,いえいえ、人影はタダの錯覚で、どうやら後ろから走ってくる車のライトがカーブ越しに山を照らしているようなのです。
◆ 後ろから車が近づいてきているならヘッドライトの一つも見えて良さそうなもの,所が、それが見えたのはだいぶ走ってからでした。丁度北海道で対向車のライトが見えてからすれ違うまでに随分時間がかかるように,そんな感じなのでした。 それでも車が追いついてくるわけですから、その車は私の車よりも速く走っているという事。
◆ やがてその車は私に追いつきました。どうやらその車のドライバーは山道愛好協会の会員さんらしく、ボーボー唸るマフラーとやたら硬めのサスペンションを装備しているご様子。 固いサスペンションのためか?取り付けに難アリのフォグランプが、車の姿勢変化とは非同期に照らす方向をランダムに変えているのです。
◆ 私はと言えば山道愛好協会さんと付き合う気には,いえ、その時は..ですが,なれなくて、さっさと広いところを見つけて左に寄ったのでした。 山道愛好協会さんの乗るランサーは、私を追い越していくとライトをハイビームにしてボーボー唸りながらアッという間に姿を..消さない。
◆ どうやら余り速く走っていない様子なのです。せっかく人が左に避けたのだから,それに取り付け具合の宜しくないフォグランプで照射されたのに,ランサーは安全速度で私の前を走っているのです。
◆ 「もしかしたらランサーのドライバーは眠いのかも知れない」,親切な私はそう思いました。 単調な山道の連続で,しかも安全運転に徹していれば眠気がおそってきても無理ない話し。 ランサーのドライバーを眠らせてはいけない,私の中の正義感がそう叫んだような,気がしました。そこで、親切心から..そう、ここを強調せねばいけませんが..ランサーに少し近づいてみました。
◆ するとどうでしょう!ランサーはその時を待ちかまえていたように、おそらく2段ほどシフトダウンを行い,ボーボーマフラーからはちょっとだけ黒い煙を吐きながらも野太い音と共に加速体勢に移行したのです。 これで初期の目標は達せられました。ランサーのドライバーの眠気は吹き飛んだ筈です。でも,もしかしたらまた眠くなっちゃうかも,知れないので、一応後を付いて付き合うことにしました。
◆ ランサーは、明らかにサスペンションが固く,少し砂利が浮いた程度の路面でもリアを振り出しています。その度にブレーキランプがチカチカするのは,テールスライドが恐くて思わずブレーキを踏んでしまう,なんて事は山道愛好協会さんには似合わないので、たぶんブレーキランプかスイッチの配線がどこかでショートしかかっているのでしょう。
◆ 私の方はと言えばトランスミッションはセカンドにホールドしたまま,回転数は3千から6千辺りまで使っています。それでもランサーに追いついてしまうので、面倒だから抜いちゃおうかな?などと考えながら、路幅が広くなるところを探していたわけです。
◆ 所が、道が広くなって直線になるとランサー君もガンバるので,これならいいか,と付いていくとコーナでは非常に安全運転に豹変するわけです。そんなことを繰り返しながら、ランサー追いにも飽き始めたとき,ランサーは別の道へ..いや、道無き道を目指して..あ、でもそこにはガードレールがあるんだよ,と私が叫んだ,のは心の中だけですけど、何故かコーナ内側のガードレールに挟まってしまったのでした。
◆ どうやらコーナでテールを振り出したままトッ散らかって、そのままガードレールを非常ブレーキ代わりに使ったご様子。固いサスペンションとは言え、ブレーキングしながらだとノーズダイブしてガードレースの下にボンネットを突っ込んだんですね。 そう、塀の隙間から飼い犬が鼻先を突き出すような,そんな光景なのでした。
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