添加剤(3/4) ◆ いつだったか?仕事から帰ってきてTVをつけるとアメリカの通販番組?をやっていた。 午前2時か3時かその辺りの時間だと思う。その日はエンジンオイル添加剤のCMだった。 マイナス30℃近い冷凍室?で氷に包まれたエンジンを始動しようとする。 司会者は白い息を吐きながらギャラリーに問う。 司会者「この氷に包まれたエンジン,始動すると思いますか?」男「そりゃあ始動するわけないよ,雪の日だって始動しにくいのに氷に包まれてるんだゼ」女「私の車なんかちょっと寒くてもなかなか始動しないのよ」 ◆ 例によって例のごとくこんな会話が繰り返される。 で、司会者はイグニッションキーをひねってみろと言う。それはプログラム通り、添加剤を注入していないエンジンは始動せず、添加剤を入れた方はセル一発でかかる。 ギャラリーは大げさに驚き、早速自分の車にも入れるという。
◆ 他にも廃車置き場のエンジンが蘇る?風景や、そのエンジンの音が「イカシタ」それに変化する様子などが次々に、そして繰り返し紹介されるのだ。 オイルや水がない状態でエンジンを始動したり、添加剤を入れることによって摩擦が減りエンジン温度が上がらない(本当か?)様子など、これでもか!って感じで画面に広がる。 当然TVを見ている人は半信半疑,いや8割くらいは信じていないと思うのだが、番組が終わりに近づくに従って「買ってみようかな?」と思う人が増えるような,洗脳を受ける。
◆ その添加剤だが、色つやはサラダオイル風。少なくともモリブデンやタングステンが含有されているとは思えない色だ。白濁もしていないからテフロンでもないような気がする。 4〜5リットルのオイルに対して2〜300ccの添加剤でどれほどの効果があるものなのだろうか? ◆ 例えばテフロンだが、これは明らかに摩擦係数を低減する効果がある。しかし万能ではない。 テフロンはオイルに混ざりにくいので沈殿する。もちろんコーティング(定着)もしない。 摩擦係数低減効果も、適度な面圧の状態でのみ有効だ。蒸気機関車が車輪のスリップを押さえるために砂をまくという話し,これは車輪と線路間の圧力が高いから有効なのである。 極端な話し、サーキットに砂をまいたらレーシングカーはスリップしてしまうだろう。
◆ テフロンは柔らかい物質なので、面圧が高いところではそれ自体が掻き取られてしまって効果は低減してしまう。逆にモリブデンやタングステンなどの自己潤滑作用のある金属の場合は逆だ。モリブデンなどの固い金属は、それをオイルに混ぜることによって初期のなじみを良くする効果もある。ミクロのバリを削り取ってしまうわけだ。
◆ モリブデンを主成分とした添加剤や、モリブデンを配合したオイルも市販されていた(いる?)が、これらは灰色〜黒っぽい色となり「何となく汚い」感じで売れ行きが伸びなかった。 もちろん含有量を減らして濃い色で着色することもできるのだが.. ◆ テフロンの方は数種類の添加剤が市販されている。ボトルの下の方に白っぽいものが沈殿しているのはテフロンだ。これらのテフロン系添加剤を使い続けたエンジンをバラすと、オイルパンの隅や流速の遅いオイルラインにテフロンが付着していることがある。 テフロンは熱に弱い,燃焼室内に紛れ込んだテフロンは有害ガスを発生しながら燃えてしまう。 ターボ車ではタービンシャフト付近にスラッジを残す場合もある。
◆ で、件の添加剤の成分は何なんだろう?低温始動性を極度に向上させると言うことは、オイルの低温流動性を改善する効果が大きいはずだ。例えば半田,錫と鉛の合金だが、半田の溶ける温度は錫単体,鉛単体よりも低い。 合金にすることによって特性が変化するわけだ。 これと同じようにベースオイルの粘度を強力に変えてしまう?何かが入っているのだろうか? ◆ 次に騒音低減効果,騒音はエンジン各部のクリアランスが過大になったときに増大する。 このクリアランスを油膜で埋めてしまえば騒音は減るわけだが、一般に粘度の高いオイルの方が油膜保持効果は大きい。これは低温始動性向上効果と逆だ。
◆ 以前ロータリー車に乗っていた頃,STPオイルトリートメントが面白い効果を発揮した。 エンジンオイルが黒く汚れなくなったのだ。もちろん清浄分散作用が阻害されたわけではない(と思う)個人的見解としては、ブローバイの吹き抜けが減ってオイルが汚れにくくなったのではないか?と思っている。 STPオイルトリートメントは水飴状で、オイル粘度向上に寄与したのではないか?
◆ ちなみにターボ付きロータリーやレシプロエンジンではこれと言った差異は認められなかった。 また、テフロン含有添加剤によってボロいエンジンの騒音低減効果があったことは確認している。ただし燃費やパワーなどが体感できるほど変化してと言う経験はない。
|